日本

 その世界には天の神と邪の神がいた。双方は双方に直接手を出すことなく、星の支配権を星の民を使うことで競っていた。人類を用いた神の代理戦争である。

 互いの力が尽きるまで、出せる限りの駒が打ち止めになるまで。

 やがて、本物の英雄がその戦争を終えるまでは。







「おらぁ、新人! シャキシャキ動けええ!!」

「うっす!!」


 戦争が終わっても、その爪痕はいたるところに残されていた。そして、星が神々の手から離れても、脅威はやってくる。


「走れ走れ! お前はE班だ! ゴーゴーゴーゴー!」


 見開かれた瞳に浮かぶ封印の六芒星。世界的に活躍している自警団の一支部にボアの姿はあった。


『あやか、こんなことしてて楽しい?』

「ヒーローってのはこういう下積みが大事なんだ!」


 非正規英雄アルバイトヒーローと呼ばれていた英傑たちがと戦っていたらしいことは先輩親父に聞いていた。彼は組織の中では半年先輩というだけだが、実年齢は45歳。レスキュー隊出身ということもあり、とても頼れて無駄に偉い。


「よぅし頼むぜ相棒!」

『アッセンブル!』

「え? なんて?」

『それは知らないんだ……』


 既に走り出していた車両に飛び乗ったボアは、先輩親父に背中を叩かれて愉快に笑う。チームの皆は気の良い荒れくれものども。


「で、今回はどんなタスクだ? レスキューか? 火事場泥棒退治か? それともベイビーの子守か?」

「――――また、悪魔が出たらしい」


 ひげもじゃなリーダーの言葉に、空気が一瞬で張り詰めた。新入りのボアだけが不思議そうにキョロキョロ首を振った。


「そうかい、新入りちゃんは知らないんだったな……」


 ひょろ長い眼鏡の兄ちゃんが、黒縁をくいくい上げる。ねっとりと舐め回すように死因入少女を見つめると、意味ありげな表情で天を見上げる。


「いや、そこは言えよ。説明しろよ。そういう流れだったろ」

「うふん、知らない方が良いこともあるのよ?」


 身長二メートルは超える巨躯のオカマははにかんだ。全く関係ないが拳法の達人らしい。


「えー俺様だけ仲間はずれかよー」

「……見れば分かるさ。悪魔、あの異形の獣どもは俺たちがなんとかする。新入りはまず生き残ること、そして多くを生き残らすことを考えろ」

「じゃあなんで俺様ここにいるの?」


「「「「ここ、Aチーム。お前、Eチームって今朝言われたろ」」」」


「あーーー、あははー!」

『間違えちゃったね』


 とはいえ、今さら引き返せない。より抜きの選抜チームが出動するほどのミッションだ。時間の余裕なんてあるはずはない。


「お! 悪魔ってあれか!?」


 どこかテンション高めにボアが叫ぶ。不意のキーワードにチーム全員が臨戦態勢を取った。

 だが、そこにいたのは。

 悪魔でも、獣でもなく――――恐竜だった。

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