日本
その世界には天の神と邪の神がいた。双方は双方に直接手を出すことなく、星の支配権を星の民を使うことで競っていた。人類を用いた神の代理戦争である。
互いの力が尽きるまで、出せる限りの駒が打ち止めになるまで。
やがて、本物の英雄がその戦争を終えるまでは。
♪
「おらぁ、新人! シャキシャキ動けええ!!」
「うっす!!」
戦争が終わっても、その爪痕はいたるところに残されていた。そして、星が神々の手から離れても、脅威はやってくる。
「走れ走れ! お前はE班だ! ゴーゴーゴーゴー!」
見開かれた瞳に浮かぶ封印の六芒星。世界的に活躍している自警団の一支部にボアの姿はあった。
『あやか、こんなことしてて楽しい?』
「ヒーローってのはこういう下積みが大事なんだ!」
「よぅし頼むぜ相棒!」
『アッセンブル!』
「え? なんて?」
『それは知らないんだ……』
既に走り出していた車両に飛び乗ったボアは、先輩親父に背中を叩かれて愉快に笑う。チームの皆は気の良い荒れくれものども。
「で、今回はどんなタスクだ? レスキューか? 火事場泥棒退治か? それともベイビーの子守か?」
「――――また、悪魔が出たらしい」
ひげもじゃなリーダーの言葉に、空気が一瞬で張り詰めた。新入りのボアだけが不思議そうにキョロキョロ首を振った。
「そうかい、新入りちゃんは知らないんだったな……」
ひょろ長い眼鏡の兄ちゃんが、黒縁をくいくい上げる。ねっとりと舐め回すように死因入少女を見つめると、意味ありげな表情で天を見上げる。
「いや、そこは言えよ。説明しろよ。そういう流れだったろ」
「うふん、知らない方が良いこともあるのよ?」
身長二メートルは超える巨躯のオカマははにかんだ。全く関係ないが拳法の達人らしい。
「えー俺様だけ仲間はずれかよー」
「……見れば分かるさ。悪魔、あの異形の獣どもは俺たちがなんとかする。新入りはまず生き残ること、そして多くを生き残らすことを考えろ」
「じゃあなんで俺様ここにいるの?」
「「「「ここ、Aチーム。お前、Eチームって今朝言われたろ」」」」
「あーーー、あははー!」
『間違えちゃったね』
とはいえ、今さら引き返せない。より抜きの選抜チームが出動するほどのミッションだ。時間の余裕なんてあるはずはない。
「お! 悪魔ってあれか!?」
どこかテンション高めにボアが叫ぶ。不意のキーワードにチーム全員が臨戦態勢を取った。
だが、そこにいたのは。
悪魔でも、獣でもなく――――恐竜だった。
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