夜明けの続唱歌

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序章

導入

 澄んだ空に抱かれた宵闇よいやみは次第に深まっていく。

 緩やかに流れる雲間からは時折、まばゆい琥珀こはく色の月が覗いていた。

 すべての終わりとはじまりの夜。


 燭台しょくだいあかりが揺曳ようえいする、薄暗い部屋。


 壁面にはつたがはびこり、おぼろげに照らされた卓には、積みあげられた古書のほか、埃で覆われた頭蓋骨、炎の揺らめきを受けて妖しく輝くたまなど、用途の不明なものがあれこれと散乱している。


 音もなく歩み寄ったの者は、雑多な卓上の隙間を無造作に押し広げ、脇に抱えていた箱と、鈍色にびいろをした環状かんじょうの器具を置いた。

 軽く咳払いをし、箱の側面にある鍵を、確かめるような仕草で開錠する。

 きしむ音を響かせ開かれた箱には、黒い塊が納められていた。


 薄い手袋を着けて慎重に取り出し、それを器具にかざして反応を見つめる。

 彼の者の口もとには、かすかに喜色きしょくの笑みが浮かんでいた。


 すべての終わりとはじまりの夜。

 夜は、ただ静かにけていった。

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