第28話 田中真由美
部屋の中を見渡すと、更衣室だけに流石にカメラは無いようだ。
ドアのすぐ前に、六人ぐらい座れるオフィス用のテーブルがあり、奥はロッカーが並んでいる。
更にその奥に、仮眠用のベッドが二つ並んでいる。
ロッカーの上は文具とかの備品が置いてあった。
全部のロッカーを開けてみるが、私服や衣類は見当たらない。
私物の持ち込みはNGなんだろう。
しょうがない。
「ホントごめんね」
田中を寝かせたまま、胸のボタンを外すと、ボンと胸が跳ねる。
カクレ巨乳だ。ブラのホックを外すと、やっぱり巨乳だった。
羨ましい。
美鈴は田中から身ぐるみを剥いで、裸にする。
早速、久しぶりの下着を付ける。
――!
当然の事ながら、ブラがガバガバだ。しょうがなくそのまま服を着てみる。
似合うとかじゃなくて、このままじゃ顔バレるし、なんといっても胸がガサガサする。
[エル]この人にモーフィングしたい。
>ミスズ、スキャンシマス
仮眠ベッドに田中を運び、横になってもらった。
ほんと、ごめんなさい。
>スキャン中――データ構築完了。モーフィング開始
美鈴の体が見る見る間に変化する。
う! ブラきつ! つか重っ!
今まで、感じた事がない感覚に戸惑う。
スタイル抜群の爆乳だわこの人。相当肩こりがひどいに違いない。
当時は聞くたびに私には縁のない羨ましい悩みだった。
鏡と見比べながら、結構メイク濃いめだなこの人。
できる?
>ハイ。問題アリマセン
鏡に顔近づけると、アイラインとアイシャドウが魔法の様にスッと差す。
最後に髪を掻き上げ、髪留めでパチパチ留める。
鏡に映し、もう一度確認する。
何処から見ても、田中真由美にしか見えない。
所持品はスマホとIDカードだけか。
カードには氏名と役職が書いてある。チーフかこの人。職員番号の他、レベル3と書いてある。
レベル……。立ち入り可能場所の事だな。
スマホを見るとロックがかかっている。
>顔認証、マタハ網膜認証デス
自分の顔をスマホに近づけても解除できない
んー。
田中の目を指で開いて近づけるとロックが解除された。
離すと直ぐにロックが掛かる。
>網膜撮影シマシタ。テクスチャトシテ使用シマス
ロック解除できるかなー。
おお! 解除解除!
自分の目を鏡に映してじっくり見る。
スマホの画面が切り替わると『警備室』と書いてあった。
そうか連絡しようとしたのか。
そうだ! ちょっと戦力を削いでおこう。
[エル]田中真由美さんの声へ変更。
>波形変更シマシタ
「あーあー」
よし。大丈夫。
美鈴は警備室に連絡した。
「あ、もしもし、はい田中です。ロッカールームに山本美鈴さんを人質に取った不審者が立てこもっています。
直ぐに来てください!」
男の慌てた声が聞こえ、
「こちらでも山本さんの発信位置、確認しました!」
すぐに向かうとの事だった。
やっぱ位置は見られてるな。でもまだバレてはいない。
美鈴は廊下に出ようとしたが開かない。横にカードかざす場所がある。
これか。カードをかざすと短く音が鳴って、鍵が開いた。
廊下に出て待っていると、慌ただしく六人の男が走ってくる。
「田中チーフ! 危ないので中に入らないでください」
警備員というか隊員だな。ヘルメットと警棒を所持し、中々の装備だ。
田中と顔見知りのようだった。
二人が私の胸をチラ見していった。
世の男子諸君、チラ見は絶対にバレてるからな。
いくら田中さんが爆乳とはいえ、君たち非常時に垂るみすぎだぞ。
いいから、サッサと中へ入った入った。
隊員はIDカードをかざしドアを開く。
先頭の隊員が無言で後方へサインを出し、警棒を仕舞い腰から銃を出した。
おいおい。今の警備会社は銃の所持まで認められてるのか?
ドアを静かに開ける。
誰もいない。
リーダーが指示を出し先頭の隊員が仮眠室のカーテンを一気に開く。
そこには田中真由美がガウンを着て横になっていた。
「――!?」
後ろを振り返ると田中がすぐ後ろに立っている。
「???」
その後ろで五人の男達は気絶して倒れていた。
慌てて銃を構えようとした時、美鈴の手が首に触れ、そのまま倒れこんだ。
全員の服を脱がせ、備品箱から見つけたガムテープで全員の目と口をふさぐ。
手足も縛りあげた。
取り上げたIDカードにはレベル5と書いてある。
仮眠室に全員を運び、
美鈴はスマホを手に取り警備室にまた連絡した。
「あ! チーフの田中です! 警備の人が全然来ないんですが!」
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