第24話 新たな能力と暴走

さて、どうやって逃げるか。

騒ぎを起こして混乱に乗じて逃げるのが、テロリストの常套手段だが、

私の場合、先にこの発信機を外さなければ、簡単に足が付く。


あれから考えてみたが、結局発信機を外した時点で信号が消え、

恐らく警備側でアラートが出る仕組みになっていると思う。

多分、他の階に移動してもアラートは出るだろう。


大きく伸びをする。これも生前の癖だ。

ため息や身体を伸ばす行為など、サイボーグ化した美鈴には必要の無い行為だが、

自我を保つためには必要な行為なのだ。


発信機だけここに置いて、私が別の場所にいることが出来ればいいんだけどね。

>ミスズ、念ノタメ、スーツノ機能ヲ再チェックシマシタ

で?

>可能デス

えっ?


>信号ヲ切ラズニ、別電源ニ接続スレバ可能デス


別のバッテリーに付け替えるって事? 誰が?

>コノスーツニハ自己治癒用ノ、サポートロボットガ内臓サレテイマシタ

ロボット?


>ハイ。現状ハ私カラ制御デキマセンノデ、捕獲スル必要ガアリマス

>ドコカ小サナ傷ヲ作ッテクダサイ

>誘キ出シマス


おびき出すって。うーん。傷かー。


傷を作る為、部屋の中を探す。

机の上に、技師が忘れていったボールペンが置いてあった。

分解してプラスチック部分を折ってみると尖がった箇所ができた。


小さな傷で良いんだよね?

>ハイ。小サナ傷デ問題アリマセン


美鈴は、戸惑いながらペンの折れた部分を手の平に当て、強く押してみた。

痛っ。

感覚があるのか。

ん?


血はもちろん出ない、けど小さな穴が開いた。

その途端、後頭部のあたりがモゾっと動いて髪の間から、

パチンコ玉くらいの小さな丸い球が、三つコロコロ出てきて、手のひらに転がりながら移動してきた。


えー! なにこれ!

丸い球は手のひらで止まると、上部の小さな蓋が二つ開き、中から小さなアームが出てきて、

傷の部分を、見る見るうちに直していく。

手で摘まもうとすると、避けるように肩のほうに転がってくる。


>一機捕獲シテクダサイ

こう?

一匹捕まえると、アームが出てきてカシャカシャ動いて逃げようとしている。


可愛すぎる。

>ソノママ指デ、捕獲シタ状態ニシテオイテクダサイ

ん、なんで?


その途端指の先からパチッと青い光が光った。

丸い球はぐったりとしている。


[エル]! ちょっと!

>フリーズサセマシタ。サポートロボ MI0202RAN接続中――

>プログラムインストール中――

>インストール完了。再起動中

>コレデ、ロボヲ制御デキマス


小さなロボットはLEDをチカチカさせながら、蓋を開けたり閉めたりしている。

どうやら起動確認をしているようだ。


美鈴は死んだかと思って、凄く心配していた。

ふぅ、良かった。ごめんね。

これ動かすことできるの?


>ハイ。機能ハ、カメラ、アーム、筐体回転ニヨル移動ガ可能デス

>アームノパワーハ0.5ps、アーム先端温度0~800℃可変

>移動範囲、半径約20メートル


こうかな?

美鈴が目で動かしたい方向をみると、ロボットはコロコロ動き出す。

かなり、気に入ったようだ。美鈴は、口元が緩んでいる。


お前、かわいいなーよしよし。

アームを出したり引っ込ませたり色々やってみる。

おほー!

楽しくて可愛すぎるぞ、お前。

よし、お前の名前は『コロ』だ。

コロ、コロ。


あ、カメラ付いてるって言ってたよね?

>ハイ。映像ヲ送信デキマス

やってみて

>モード変更シマス


その途端、視界がロボットの視点になった。

――!?

巨大すぎてよくわからないが恐らく私の足だなこれは。

自分の体をコロコロよじ登ってみる。おお、いつもの高さだ。

>モードOFFニシマシタ


で、このコロを使ってセンサーを取り外すって事?

>ハイ。コノ機体はバッテリー出力ガ可能デス

>発信機ヲ分解シナガラ電源ヲ確保シ、スーツ内部カラ取リ外シマス


んーってことはコロはこのまま置いてくって事?

>ハイ。ソウナリマス


だめ! コロが可哀そうでしょ!

>ミスズ、ソレハ消耗品デシテ……


ダメったらダメ!

気が付くと髪の間から五体ぐらいのロボットが転がってきてコロの周りをクルクル回ってる。

ほらーみんな一緒がいいんだよ。

>……


なんか機嫌損ねたかな。

>……

>デハ、別ノバッテリーヲ接続サセマショウ


流石[エル]! その線でよろしく!

もうひとつ聞きたいことがあるんだけど

>ハイ、ミスズ。ナンデショウ


さっき、指光ったよね?

あれ何?

>コノスーツニハ、幾ツカ放電デキル端子ガツイテイマス

>仕様デハ、電力供給型ノウエポンノグリップ部分ト、マニピュレート部分ト接続スル事デ、電力ヲ供給シナガラ攻撃スル事ガ可能デス

>非接触供給モ可能デス


ふーん。要は兵器に充電できる便利機能ってことか。

ちょっと、もう一回やってみたいんだけど。

>ハイ、ドウゾ。モード変更シマシタ


指と指を近づけると青い光がバチバチ放電し始めた! おおーなんかヒーローみたい。

更に光が大きくなっていく。

更に更に大きくなっていく。

ん?

光は指と指の間で野球ボールぐらいのサイズになってバリバリいっている。


ちょっ! これどうしたらいいの!

>現在ノパワーハ雷球ト同等。威力ダイナマイト約10キロ分デス


そんなことを聞いているんじゃない! 更に怖いじゃないか!

どうしたらいいのー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る