第14話 ハッキング
よし、じゃあ最後は③だ。
監視カメラはこの部屋にあるかわかる?
>コノ部屋ニ三台ノカメラヲ確認シマシタ。コノフロアノ警備室デ、モニター中デス
やっぱり。
昨日の夜の事が悔やまれる。
警備員室で、私の裸を見た奴は記憶が無くなるまで殴ってやる。
監視カメラに、ハッキングすることは可能?
>セキュリティ確認中――現在のBLACKSlingデハ通過不可。検索中
>高レベルツール確認中――ツール確認。ダウンロード完了。インストールシマスカ? YES/NO
勿論YES!
>インストール完了。該当ノ監視カメラニ、ハッキング成功シマシタ
美鈴が目を閉じると、監視カメラの映像が見える。
[エル]録画映像ってある?
>ドノ記録ヲ確認シマスカ?
そうだな。昨日の夜がいい。
美鈴の目の前に映像が映し出される。
あー寝てる寝てる。っていうか、スリープモードになってるのか。
映像の中の美鈴がスリープモードの筈なのに、時折動く。
これは?
>恐ラク脳ガ活性化シテイル時ハ、スリープモードガ一時的ニ解除サレテイルト思レマス
なるほどね。人そのものだな。
美鈴は、サイボーグの自分が寝ているのが何か不思議な感じだった。
この映像を、ループ編集とかできる?
>映像編集ツール――確認。インストールシマスカ? YES/NO
するする
>インストール完了――映像ループ編集出来マシタ。再生シマス
おお、寝ているように見える。
ベッドに移動して転がった。
警備室の監視カメラに切り替えてくれ。
>ハイ、映像ヲ表示シマス
警備室をカメラで見るとさっきの映像が映っている。
カメラから見える警備員の人数は今は五人。
皆、私の部屋を見ている。
何を期待してるんだか、此奴ら。
しかし、困ったなこの状態だと、切り替えたときに直ぐにバレてしまう。
こちらも警備員をじっと監視する。
警備員の一人が、画面に見とれてコーヒーを機材の上に溢し、慌てて全員が立ち上がる。
[エル]さっきの映像を警備室のPCに流して。
>データ展開シマシタ
全員で機材の上をティッシュやタオルで念入りに拭き、また席について画面を見るが、モニターの美鈴は横になって寝ている。
何人かはつまらなさそうに、お茶を入れたり別の事をし始めた。
特に気にしていない様だ。よしよし。
人の裸ばっか見てないで、ちゃんと仕事しろよ、お前ら。
あとは、この部屋の前の、廊下にある監視カメラに、誰か映ったら教えてくれる?
>ハイ。警備モード開始
美鈴は少し安心した様に、大きなため息を付く。
実際には呼吸はしていないが、生前の癖だ。
はー。
これで、ちょっと自由度が上がった。
美鈴はハッと何かに気付く。
[エル]この身体に位置を発信する装置はついている?
>ハイ。上半身筐体内部ニ、設置サレテイマス
停止させるとは可能?
>可能デスガ、外部接続機器ナノデ、手動デ取リ外ス必要ガアリマス
>筐体ヲ開ケマスカ? YES/NO
うん、ちょっと見てみたい。
>ミスズ、着衣ヲ脱イデ下サイ
美鈴はガウンを脱ぎ、半裸になる。
>筐体ヲ全開シマス
美鈴の胸の中央から、薄っすら筋の線が真っすぐ腹部にかけ入っていく。
途中から線が枝分かれするように伸び、最後は歪んだ田の字様に四つの線の囲いができた。
上部の中央から筐体が開く。途中から腹部の部分が左右に開いた。
蓋が開くと、中でLEDの照明が付く。
美鈴は、屈みんで見たが無理だった。鏡に映してみる。
複雑な配線、何らかのユニット、胸の奥に自分の脳の箱があり、幾つかのパイプが伸びている。
どれがその発信機なのか解らない。美鈴は絶対無理だと感じた。
[エル]スポっと抜くような、何か良い方法は無いの?
>TS-0008ニ電力ヲ供給シテイル、コネクタUSB8.0-15電源ヲ、一部ショートサセルコトデ、機能ヲ停止サセル事ガ出来マス
>デスガ、全機能ヲ補完スル為、強制的ニスーツヲ再起動シマス
再起動って、あ、動けなくなるのか。
[エル]再起動は、どのくらい時間がかかるの?
>算出中。5分54秒33デ完了シマス
んー結構時間かかるな。覚えておこう。
[エル]これ閉じてもらって良い?
>ハイ、ミスズ
開放部分の中の照明が消え、開いた時と逆の動きで、蓋が閉じていく
ゆっくりと筋が消えて、元通りの肌に戻った。
ガウンを羽織りながら、美鈴はこれで疑問は綺麗にはなったと考える。
しかし、問題は山積みだ。だが、その解決の為、今は備えをしなければと思った。
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