第151話 ゴールドランク2

「ふぉふぉ・・・。おい、サンヨ。もう休ませとくれ、MPがカラッカラじゃ」

「もう少しだ、じいさん。マジックポーションを飲んで歩け!」

「うちのパッキーも、もうすぐだって言ってるっす」

「相変わらず人使いが荒い奴らよのう、ふぉふぉふぉ」


 冗談なのか本気なのか分からない会話をしながらも、破壊したストーンゴーレムで道を作っていき、夕方にはダンジョンの入口の門の近くまで辿り着いていた。


「あれっす、パッキーが見つけた門が見えるっすよ」

「やっと着いたかい」

「・・・遠かった」

「なんだか開けてる場所に出たな」

「丁度いい、あの門の傍で休憩するぞ」


 拳大のストーンゴーレムが雑木林の木の上からビュンビュンと降って来るのを躱し、叩き壊しながら、リーダーの斧使いサンヨが休憩を提案した。


 先に見える門の前は開けており、まるで畑でも作ろうとしている様に一面耕されていた。その為、雑木林の中より見通しが効き、休憩地とするには丁度良いと思ったのだ。


「じじい、ダイカ、マルン、飯の準備してくれ!」

「ふぉふぉふぉ、まったく老人を労わるという事を知らん奴じゃな」

「あいよ~」

「・・・分かった」


 それ以外のメンバーで、時折雑木林の中からから突っ込んで来るストーンゴーレムを相手にしながら、野営地を整えていき、食事をして、夜の帳が降りた頃には、襲ってくるストーンゴーレムはいなくなっていた。


「ふぅ~ようやく弾切れか?」

「ふぉふぉふぉ、流石にしんどかったのう」

「ゴーレム使い半端ないっす」


 いかにゴールドランクPTとは言え、1,000体ものストーンゴーレムを倒し終えると、もはや疲労困憊。野営地の周りにはストーンゴーレムの残骸が積み上がり、戦闘の激しさを物語っていた。


「よし、今日はここで休むとするか」

「そうだね。あたしゃ疲れたよ」

「・・・疲れた」




 翌朝。


「ふぉふぉふぉ、いくぞい・・・ムムム【水陣】!」


 ダンジョンの入口周辺の雑木林、通称「呪いの森」に監視、防衛の為に放っていたストーンゴーレムを壊滅させた一行は、一晩休んで体力を回復させ、魔法で入口の門を破壊するとダンジョンの中に突入していった。


「うわ、またゴーレムがいるっす!」

「分かっちゃいたけど、いやだね~」

「ウラク、マルン前に出ろ!ダイカとサミーは後ろだ。ほら、じじい行くぞ!」

「ふぉふぉふぉ」


 ダンジョンの中には「実働部隊」のアイアンゴーレム100体と「殲滅部隊」の大きなアイアンゴーレム12体が待ち構えていたが、瞬時にフォーメーションをダンジョン仕様に切り替え、しっかりと対応していた。


「・・・【転牙】」

「た、【盾突】」

「【兜割】だ!」


 それぞれの手に少し青みがかった武器を持ち、行く先を阻む様に広がるアイアンゴーレム達を突き刺し、バターの様に切り裂いていく。


「【矢弾】っす!」

「ほれ、【水槍】じゃ」


 それに続く後衛達は「ゴーレムの核」に狙いを付け、確実にアイアンゴーレムを破壊していた。


「まったく、どんだけいるんだか」

「しっかりマジックポーション飲んで、バンバンスキルを使って行け!」

「ふぉふぉふぉ、こりゃ赤字になりそうじゃな」


 アイアンゴーレム達でもゴールドランクPTの進撃は止められず、ダンジョンの通路には、動かなくなったアイアンゴーレムが所狭しと転がっていった。


「しかし、不思議なダンジョンだねぇ~。明かりの魔道具がこんなに並んでるのなんて見た事ないよ」

「ご、ゴーレム使いは、す、凄いんだな」

「こっち!何か通路が板で塞がってるっす」

「なんだ?おい、じじい、頼む」

「ふぉふぉふぉ・・・ムムム【水陣】!」


 1階層の蜂の巣部屋に辿り着いたゴールドランクPTは、中に何かあるのではないかと思い、敬太が作った罠を破壊する。


「あれ?行き止りっすね~」

「ふぉふぉふぉ、ハズレじゃったか」

「ほれ、こっちに下りの道があるよ」



 それから2階層の体育館ぐらいの大きさの部屋に集結していた、全てのアイアンゴーレムを破壊していった。


「行くよ【縮地】・・・からの【剛打】!」

「【斧風斬】!」

「・・・【連刃】―【転牙】」

「【精密射撃】!」

「ふぉふぉふぉ・・・【水獄】じゃ!」

「た、【盾状火山】!」


 残ったアイアンゴーレム達は、先には進ませまいと頑張っていたのだが、ゴールドランクPTはそれぞれの上位のスキル、魔法を乱れ打ち、気が付くと動くゴーレムは1体もいなくなってしまっていた。


 ただ、これには流石のゴールドランクPTと言えども、かなり消費してしまったらしく、3階層の改札部屋の前の小屋を見つけると一時休憩となっていた。


「ここで、しっかり回復させとけよ」

「ゴーレムはもう見たくないっす」

「はぁ~もう疲れるねぇ」

「ふぉふぉふぉ」

「しかし、このダンジョンはおかしな所だな。ゴーレム以外のモンスターが出て来ねえ」

「あら、そう言われればそうだね」

「ご、ゴーレム使いのダンジョンなんだな」

「この明かりの魔道具、持って帰っていいっすか?」


 改札部屋の前にある小屋のドアを叩き壊し、中に入るとゴロゴロと転がって体を休めながら、会話をしていた。

 この先にいるであろう「ゴーレム使い」を捕まえる為にも、体力を消耗したままでは進めない。こうやって適度に気を抜き、しっかりと回復させるのも冒険者ランクが高い、経験豊富な強者達ならではの攻略の仕方だった。


「まだ先にはゴーレムがいるのかねぇ?」

「そうだな、いるだろうな。なんせゴーレム使いの隠れ家ダンジョンだ。油断するんじゃねえぞ」

「了解っす」

「ふぉふぉふぉ、先は長いの~」

「・・・」




(ギャァー)


「サンヨ!まずいっす。すぐそこにゴーレムが湧いてきたみたいっす!」

「何っ!?」


 体を休め、まったりとした時間を過ごしていたゴールドランクPTだが、突然、小屋の屋根の上で体を休めていたサミーの契約獣のパッキーから【通信】でゴーレムが湧いた事を知らされ、小屋の中に緊張が走った。


 すぐに戦える様に、慌てて小屋の外に飛び出すと、そこには先程までのゴーレムとは違うプレートアーマーを着た人の様な奴と、片腕が無い猪の獣人が立っていた。

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