第131話 コンビ
「ゴル~『コンビ』だよ。分かる?」
「ニャー」
何度となくゴルに話しかけるが、返事はいつも通りで、これといって変わった感じはない。
「ヨシオ!」
「なんだシン?」
埒が明かないと思い、言い出しっぺでテーブルの上に置いてあるトイレットペーパーぐらいの筒「ダンジョン端末機ヨシオ」に話しかけた。すると、男の人が高い声を出しているような独特の声が返って来る。
「どうすればゴルと『コンビ』になれるんだ?」
「どうすればって言うのは無いだシン。契約獣が主と認めれば自然と繋がるものだシン」
敬太はこの「コンビ」と言うものはスキルの様な感じかと思っていたのだが、ヨシオの話を聞くとそうではない様な気がしてきた。何となく絆とか繋がりみたいな、そんな感じな気がする。
「契約獣は契約主が紐づけして契約獣となっているだシン。それと同じ様に契約獣側からも主に紐づけされると、『コンビ』となるだシン」
「なるほど・・・」
ゴルは卵から孵った時から敬太が手塩にかけて育てて来ている。赤ちゃんの時は睡眠時間を削りながら世話をして、何処に行くにも一緒だったし、寝る時も一緒だった。なので十分懐いていると思うし、敬太の言う事は大体聞いてくれる。
「ご飯」とか「眠たい」とか、その程度なら、ゴルが何を欲しているか分かるぐらい親密な関係を築けていると思うのだが、それでも「コンビ」になるには今一歩足らないらしい。
「焦ってもしょうがないだシンよ。ゆっくりと成長して行けばいいだシン」
ヨシオのくせに、なんだか真っ当な事を言っている。
「分かったよ。ヨシオついでに『ちゅーの』買ってくれ」
「ケイタ、ヨシオじゃないだシン。ヨっちゃんだシン」
「よ、ヨっちゃん・・・頼む・・・」
「分かっただシンよ。ススイカ(改)でヨっちゃんにタッチするだシン」
面倒臭いなこいつ・・・。
今ヨシオにネットショップで買うように頼んだのは、ペースト状の猫のおやつで大人気となっている物なのだが、猫があまりにも異常に食いつくので何か良からぬ物が入っているではないかと噂される物でもあった。
敬太は動画とかで、その異常性を見てしまっていたので今まで手を出さずにいたのだが、ゴルともっと仲良くなれるならと思い、とうとう手を出してしまったって訳だ。
「ゴル、おいで!」
「ニャー」
物置に届いた「ちゅーの」を取り出し、早速ゴルに食べさせてみる事にした。
小皿に中身のペースト状の物を絞り出し、ゴルの目の前に置く。だが、与えた事が無かった「ちゅーの」には、思っていたよりも反応を示さなかった。
餌はいつもカリカリの固形がメインだし、たまに缶詰をご褒美として食べさせていたぐらいで、あまりおやつと言う物を与えた事が無かったのだ。
「食べていいよ。どうぞ」
「ニャー」
再度ゴルに勧めると「しょうがないなー」って感じでクンクン匂いを嗅いで、ペロっと一舐めだけするとすぐに顔をあげ「はい、食べたよ」って感じですまし顔をしていた。
だが、次の瞬間、鳴き声とも唸り声とも判別のつかない、今まで聞いた事もない声をあげながら「ちゅーの」がある小皿に顔を突っ込ませ一心不乱に舐め始めた。
「お、美味しい?」
「ウミャウガウギュウウウ」
ちょっとゴルのがっつき具合に引きながらも声を掛けたが、ゴルは一切こっちを見る事なくペロペロペロペロと「ちゅーの」を舐め続けている。
「ハンギュウウミャウウウ」
「・・・」
「す、凄いだシンね・・・」
あのヨシオでさえ引いてしまう勢い。これ変な物入ってないよね?大丈夫だよね?
ゴルは「ちゅーの」が無くなってもペロペロと小皿を舐め続けていた。
時間にすると約1分ぐらい小皿を舐め続けてていたが、「ちゅーの」が無くなった事に気が付いたのか、それとも満足したのか分からないが、ゴルがやっと顔を上げた。満足気な顔をし、口の周りをペロペロして敬太の目を見て来た。
「あっ・・・コンビ組めたみたいだシンね」
「えっ!本当か?」
「自分で見てみれば分かるだシン」
そうヨシオに言われたので自分を【鑑定】してみる事にした。
『鑑定』
森田 敬太 38歳
レベル 26
HP 62/62
MP 52/52
スキル 鑑定LV2 強打LV4 剛打LV3 通牙LV3 転牙LV2
連刃LV2 タールベルクLV1 石心LV2 鉄心LV1
瞬歩LV3 剛力LV3 金剛力LV1
見切りLV3 梟の目⋯
魔法 クイックLV1 土玉LV4 亜空間庫LV2 火玉LV1
契約獣 ゴル(コンビ)
すると、契約獣の項目に「コンビ」の文字が出ていた。
ゴルの方も【鑑定】で見てみると、同じように「コンビ」の文字が増えていた。
何がきっかけだったかは、分かるような分からない様な、分かりたくない様な・・・。
兎に角、これでゴルと「コンビ」が組めたようだ。ヨシオの話だと、これでゲームのPTを組んだ時の様にゴルにも経験値が分配されるようになるらしい。
「本当だ、『コンビ』組めてる」
「ケイタはゴルベをしっかり育てていただシンな。小さなきっかけで主として認められただシン」
「まぁね」
「ニャー」
目が開かない赤ちゃん猫からゴルの事は育てて来ていたんだ。それなりに信頼してくれていたんだろう。
改めて他から言われると照れくさい物があるけど、悪い気はしなかった。
「それじゃ、ちょっと試してみるか?」
「ニャー」
「行ってくるといいだシン」
なんだか微妙な感じで得てしまった「コンビ」だが、これがゴルにどの様な影響を与えるのか、早速検証してみようと思った。
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