第114話 襲撃3
その頃敬太は、ようやく気絶から目を覚まそうとしていた。
「・・・ぁ・・・っ・・・」
杖を持った男から追い打ちの魔法を打ち込まれ時間が経ったからか、プレートアーマー越しにも熱が伝わり始め、切られた腕の部分からも熱気が鎧の中に侵入してきていた。
「があああっ熱い!!!!」
あまりの熱さに目を覚ます事が出来たが・・・熱すぎるわ!
うなされて目を覚ましたら火の中にいるって、どういう状況よ。
敬太は慌てて飛び起きて目の前でメラメラと燃え上がっている炎越しに辺りを見回すと、ちょっと離れた位置にコンテナハウスが見え、そこでやっと状況を把握する事が出来た。
色々と思う所はあるが、まずはこの熱くなってしまったプレートアーマーをどうにかしないと焼け死んでしまう。
敬太は岩場を駆け出し、大きく息を吸って川へと飛び込んだ。
ジョワワーっと辺りに水蒸気を吹き上がらせながら、川底に沈んでいく。息を止めて飛び込んだのだが、完全防水仕様の鎧の中がいきなり水に満たされる事は無かった。
じっと膝を抱え川底で鎧が冷えるのを待つ。
魔法の火は水に弱いのか、いつの間にやら視界から消え去っていた。
切られた腕の部分から水が入って来ているのか、ゴボゴボと水の音が聞こえてくる。
どれぐらい気を失っていたのか。ゴルと奴隷の女の子は無事なのか。あの襲ってきた男達は何者なのか。気絶する前の事を思い出し、対処がぬるかった事を反省する。
異世界の知り合いであるモーブ。彼は追いかけて来た追っ手を絶対に殺していた。そこまでする必要があるのかと、モーブが追っ手を殺してるところを見て毎回思っていたが、今回の襲撃を通じて考えが改められた。
襲ってきた男達は、敬太の言葉に聞く耳を持たず、ただひたすらに攻撃をしてきたのだ。初めから殺すつもりだったのだろう。相手の言い分は聞かずに、暴力というチカラで全てを正当化するのだろう。勝てば官軍負ければ賊軍、生き残った者が正しくて、死んでしまえば悪になる。戦争と同じだ。
ならば、抗わねばならないだろう。
「ゴーさん。解除!」
密封状態が長すぎたのか、鎧の熱が完全に収まる前に息苦しくなってきてしまい、プレートアーマーとして変形していてくれていたゴーさん達に元に戻ってもらった。
敬太は急いで水面から顔を出し息をつき、アイアンゴーレム達は川底に沈んでいく。
ジャバジャバと水の音がしてしまうが、なるべく音を立てないようにゆっくりとした動きで、水深が胸元ぐらいまでしかない川を上がって行った。
辺りは真っ暗なのだが、このまま川から上がってしまうと目立ってしまいそうなので、目に付いた川辺の大きな岩の陰に一旦身を潜める事にした。後ろを見ると、続くアイアンゴーレム達も体から湯気を立てながら隠れてくれている。
息をひそめ様子を伺うと、小さくて聞き取れないが話し声が聞こえてくた。
どうやら襲ってきた男達はまだ近くにいるようだ。
ゴルや奴隷の女の子の安否は気になるが、ここで慌てて飛び込むような真似はしない。まずは回復からだ。大剣で鎧ごと切られた腕を見ると、前腕部にパックリと大きな切れ目が出来ていた。熱さとアドレナリンが痛みを忘れさせていたようで、傷口を見たら何だか痛くなってきてしまった。
「いつつ・・・」
【亜空間庫】からポーションを取り出し一口で飲み込むと、五臓六腑に染みわたり肉が見えていた傷口が塞がって行った。巻き戻しの映像を見ているようで不思議な感じがしたが、痛みが引いていくのは何とも言えない爽快さで気持ちが良かった。
血まみれになり、腕の部分に穴が開いてしまった有印良品で買った綿のシャツは脱ぎ捨て【亜空間庫】にしまっておく。異世界に合わせ不自然じゃない格好として買って来ていた、有印良品の天然素材の衣服。替えとして数着持って来ているので1枚ダメになってしまったところで問題はない。
「大丈夫?」
小声で後ろに控えるアイアンゴーレム達に声をかけると、シュタっと敬礼ポーズをしてくれた。立ち上がっていた湯気も収まっているので、魔法の火による影響はなくなったと見ていいだろう。
「じゃあ、行くぞ。ゴーさん、セット」
解除したばかりで大変だろうが、もう一度ゴーさん達に体に纏わりついてもらいプレートアーマー状態に変形してもらった。中は水ですっかり冷やされていて、真夏の海の砂のように熱くはなっていなかった。それから大剣で切れ込みを入れられた前腕部を見ると、空いていた穴は塞がり新品の様に直っていた。なんとも便利で役に立つ機能だと感心してしまう。
「【探索】」
気を失ったせいなのか、切れてしまっていた頭の中の地図の光点を、スキルを使って再び反応させる。すると赤い光点が4つ纏まっていて、そこから少し離れた場所に青い光点が2つあった。コンテナハウスの中にいたはずのアイアンゴーレムの緑の光点が見当たらないのが気になるが、とりあえずゴルも奴隷の女の子も生きてはいるようだった。
死んでいないのであれば、まだ取返しはつく。
敬太の話も聞かず、ただ一方的に攻撃してきた代償は高くつくぞ。
さあ、反撃の開始といこうか。
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