第112話 襲撃
コンテナハウス内は耳が痛くなるぐらいの大音量で、外からぶっ叩かれたような感じの音が響き渡っていた。あれだけ嫌だ嫌だと騒いでいた女の子のもピタリと声を上げるの辞めてしまっている。
―――バゴン!
まただ。外の警備をしているアイアンゴーレムは何をしているのだろうか?
「【探索】」
これは緊急事態だと判断して、一旦女の子の事を置いといて音の対応に集中する。すぐに【探索】スキルを使い頭の中の地図で周りの状況を確認してみた。すると敵対を表す赤い光点が4つコンテナハウスを取り囲むように散らばっていて、その中の1つの赤い光点がコンテナハウスのすぐ傍にあった。そして、護衛で外に配置してあったはずのアイアンゴーレムの緑の光点は1つも見当たらなくなっている。
【探索】で見えた事から考えると、護衛として出していた10体のアイアンゴーレムを4人の敵が全て倒し、コンテナハウスをこじ開けようとしている。そんな感じだろうか。
冒険者ギルドからゴーレムの件で来た冒険者か、敬太の魔道具を奪いに来た盗賊か、女の奴隷を取り戻しに来た奴隷商の追っ手か。色々と可能性が浮かんでくる。
「ゴーさん。セット!」
素早く【亜空間庫】からアイアンゴーレム5体取り出し、ゴーさんに変形してもらった。左腕はゴーさん、右腕、両足、胴体、上半身はアイアンゴーレムに溶けた様に薄く纏わりつかせプレートアーマーの様に変形してもらい、全身を鉄の鎧で固めた。
相手は警備のアイアンゴーレムが【通信】スキルを使って、ゴーさんに異常を知らせる事も出来なかった程の手練れ。アイアンゴーレムを瞬時に倒す様な強さを持っているのだ。油断は出来ない。
―――バゴン!
「ゴルはその子を守って!」
「ニャー!」
度重なる外からの轟音に先程まで叫んでいた女の子は、すっかりおとなしくなっていたが、万が一、這いつくばって戦いの場に出てこられても守れる自信が無い。だから念の為にゴルを残し護衛をしてもらう事にした。
アイアンゴーレムを倒す程の腕ならば、鋼鉄製のコンテナハウスと言えども安全ではない。
打って出るぞ!
覚悟を決めてコンテナハウスの扉を開き、スッと体を外に出し手早く施錠する。
しかし、外に出た瞬間、突然左肩に衝撃が走ってよろめいてしまった。頭の中の地図の赤い光点から意識を外していなかったのだが、あまりにも突然でまったく反応が出来なかった。
「当たったぞ!」
すっかり暗くなっている岩場の上の方から声がしたので【梟の目】(暗視スキル)を使い、声がした方の赤い光点の辺りを見ると、弓を構えている男が見えた。どうやら左肩の衝撃は矢で打たれたものだったらしい。
「殺ったか?」
「何処だ~!」
仲間の声に反応したのか、赤い光点のあちこちから声がしてきた。コンテナハウスに一番近い奴は大きな剣を持っている筋骨隆々の男。少し離れた所に大きな盾を構えている奴。取り囲む様な位置に陣取る杖を持った奴。後は矢を射った奴の4人、赤い光点となっている人達の姿を全て確認する事が出来た。
「何なんですか!」
「【火槍】」
敬太は声を上げ襲撃の理由を聞こうと思ったのだが、問答無用なのか杖を持った男が魔法を使ってきた。暗闇に轟轟と燃え盛る火が槍の形になり一直線に飛んでくる。反射的にそれを避けようかと思ったが、避けた後ろにはコンテナハウスがあるのを思い出したので、動かず留まる事を選択した。
「【剛力】―【石心】」
身体強化と防御強化のスキルを使い基礎能力を底上げする。
「【強打】」
そして、勢いをつけて鉄の拳を突き出す。打撃系のスキルで火の槍を迎え撃った。
イメージ的にはバチンと火を弾き返せるかと思ったが、実際には少々火の勢いが落ちたぐらいだったようで、残った火がシュボボっと敬太の体に降りかかってきてしまった。
「命中したぞ!」
「見えた!プレートアーマーだ!」
「そこか~!」
暗闇の中で火だるまなのは目立つようで、近くにいた盾の男と大剣の男が走り寄ってくるのが分かった。全身をプレートアーマーで固めているので、今の所火の熱さは伝わって来ていないが、魔法の火だからなのかいつまでも消える事なく体に纏わりついている。
「おらぁああ【連刃】!」
駆け寄って来ていた大剣の男が、突っ込みながらスキルを放って来る。連続攻撃のスキルなので【見切り】で1発躱せても、後の1発が躱しきれないかもしれない。
「【瞬歩】っううううううううええええ!」
なので距離を取ろうと、一瞬で歩みを進める移動系スキルを使ったのだが、何かに足を取られて地面に転がってしまった。それでも何とか大剣の男と距離を取る事が出来ていたので、大剣の【連刃】は躱す事が出来た。
転んで地面に横たわっている状態なのだが、何に躓いたのか気になり足元にチラリと視線を向けた。すると、そこにあったのはアイアンゴーレムで、丸い頭が半分に切られて倒れているのが目に入った。
アイアンゴーレムって鉄の塊なんですけど・・・。
まさか、こんなチカラ技で破壊しているとは思わなかった。せいぜい「ゴーレムの核」を破壊して無力化した程度だろうと考えていたのだが・・・。これは警戒を1段階上げる必要がありそうだなと、地面に転がりながら考える敬太であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます