第35話

 魔力よ。ロッドに移れ~。


 「ミャ~」

 「あ、こら、これにじゃれちゃダメよ」

 「ミャ~」

 「あははは」


 っは! いけない。つい、ミャとロッドで遊んじゃったわ。


 「ミャ~」

 「……ま、いっか。ほ~ら」

 「ミャ~」


 なんか、ミャをロッドで操っているみたいね。


 「くるくるくる~。渦巻ですよ~」

 「ミャ~」

 「ほれ、お星さま」

 「ミャ~」

 「こんな感じで、魔法を使えたらいいのにね~。え……」


 なに? 目の前真っ暗に……。


 「ミャ~ミャ~」


 ミャの声が遠ざかっていく――。



 「あれ? 私いつの間にか寝ちゃったのかしら?」

 「起きたのね!」

 「お姉様……」

 「今、皆を呼んでまいります」

 「え? あの。お姉様?」

 「ミャ~」


 あ、ミャ。そうだ私、ミャと遊んでいたら急に当たりが暗くなって……もしかして気を失ったの私!?


 「ユリーナ!」

 「え! マイステリー様!?」

 「よかった。おめでとう」


 うん? おめでとう?

 倒れたのにおめでとうとは、どういう事。


 「これ、嬉しいのはわかるが、それではユリーナがわかるまい。喜べよ、ユリーナ。ロッドにおぬしの魔力がこもっていた」


 おじい様が驚く事を言った。

 ミャと遊んでいるうちに、魔力を込めちゃっていたって事?

 え? 今まで苦労は何? でも、これで――。


 「では、私に本当に魔力があって、魔法を使えるって事ですか?」

 「そうだよ! これで問題解決だ!」

 「信じられないわ」

 「ロッドと相性がよかったのね」


 とお姉様。

 まさかの展開だわ。嬉しい!


 「で、どのようにやっていたのだ?」

 「え? あ……それがその。ミャとロッドで遊んでいて……」

 「「はぁ?」」


 お父様とおじい様の呼吸がぴったり合わさった。

 まあでも、そうなるわよね。遊んでいたら出来たのだから。


 「なるほどね。君は、気張りすぎなんだよきっと。リラックスしていたから自然とできたんじゃないかな?」

 「うん。そうかも。楽しくやっていたわ」


 私達は、魔力があったと喜んだけど、そう上手くはいかなかった。

 魔力があるとわかっても魔法が使えなければダメだと、マイステリー様のお父様が言うのです。

 何の魔法が使えるかわからないと使える様になるのは大変で、特に目に見えない魔法だと難しい。例えば、お姉様を襲った男の様に力を増幅するような魔法だと、どれかと探すのが大変で、何かのきっかけがあればわかるらしいですが……。

 一番簡単な方法は、感情のまま使う事だそうです。怒りでロッドを振り回したくはありませんけどね。

 また一つとは限らないそうなので、結局は色々試すしかなさそう。


 それを一週間でって、無理よね。

 もうあるってわかったのだから認めてくれたらいいのに。

 でもそんな我儘が言えない状況らしい。


 カーリア様が継ぐ事は決まったらしいけど、マイステリー様は今まで見向きもされなかったのにヒールが扱えるとわかった途端、私の婿になるのに反対の声が上がっているという。

 親戚の者達が、自分の息のかかった貴族と婚約させようとしていると聞かされた。これは、マイステリー様のお父様に認めてもらうのではなく、騒ぐ周りに認めさせなくてはいけないって事よね。

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