第33話

 私に魔力って本当にあるのでしょうか。集中してロッドに魔力を込める。魔力があればそれが出来るらしいけど。未だに兆しがない。

 お姉様も私に付き合ってくれていて一緒にやっているのですが、今日はまだ来ていない。疲れたし、探しに行こうかしら?


 やっぱり外の風邪は気持ちいわ。校内にいないので外に出て来たけど、お姉様ったらまたお散歩ね。確か、ここら辺がお散歩コースだったはず。


 「きゃ……」


 うん? 今悲鳴のような声が聞こえた?

 こっちかしら?


 「え……お姉様!」


 男の人が、なんと大きな岩持ち上げている! それを気を失ったお姉様に向けて投げつけようとしてる所に出くわしたのです。

 何がどうなっているかはわかりませんが、お姉様を助けないと。

 走っても間に合いそうにもない! どうしよう。


 「お姉様!」


 バーン!


 驚く事に持ち上げられていた岩は、男の後ろに飛んで行きながら粉々になった!

 何が起きたの?


 「そうだ。お姉様!」

 「大丈夫か。二人共!」


 岩を砕いたのは、リゾール様だった。


 「お姉様が……お姉様、お姉様」


 お姉様に声を掛けるもぐったりとしている。どうして、こんな事に。

 男は、来た警備員に取り押さえられ、お姉様は病院へ運ばれた。



 「もう目が真っ赤よ。私はもう大丈夫。突き飛ばされて気を失っただけ」

 「だけじゃないだろう。本当に心臓が止まるかと思ったよ。まさか学園内であんな事があるだなんてな」


 お姉様を襲った男は、普通クラスの者だった。つまり魔法を使えない人。それなのにあの大きな岩を持ち上げていた。

 彼は、潜在能力に力を増幅させる魔法を持っていた様で、その時の事はよく覚えてないと言っている。


 どうやらお姉様に恋心を持っていて、自分にも魔法があったら振り向いてもらえるのではないかとは思っていたそうです。

 そして変な事を言い出した。その気持ちが憎しみに変わって行って、気がついたら岩を持ち上げていたそうなのです。


 リゾール様が駆けつけたのは、何かまがまがしい魔力を感じたからだとか。向かってよかったと言っていました。

 憎しみで潜在能力が開花するとは思いませんでした。けど……潜在能力を開花させたいと思っている私には、ちょっと羨ましいような気もしますが恨みでしか開花できないのなら嫌ですわね。

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