第31話

 ――好きな人と添い遂げられますように


 「確かに、息子の字だ」


 ――私も同じ気持ちです


 「まあ、ユリーナの字だわ」


 とお姉様。

 恥かしすぎます!


 「君なら見つけてくれると思ったよ。そして、こっそり誓いを立てる」

 「示し合わせたわけではないと!?」


 マイステリー様が言うと、マイステリー様のお父様が驚いて言った。

私は、恥ずかしくて顔を上げられません。


 「彼女とは、フィーリングが合う様なのです。お願いします。父上。僕をここに嫁がせてください」

 「……たとえ婿に行くとしてもだな、我が家系の仕来りには従ってもらわねば示しがつかない! カーリアまであんな事になって!」


 カーリア様に何かあったのでしょうか?


 「カーリア様に何があったのですか?」

 「子供が出来……」

 「お前は! 恥をさらす事はないだろう!」


 え! 妊娠していたのですか? 気が付かなかったわ。たしかに腰回りを締めるつけるようなドレスではなかったわね。


 「お子さんですか? 別に恥ではないでしょう」


 婚姻はまだのようですが、婚約者の子なのですよね。


 「いや、あと三か月で生まれる」

 「三か月!?」


 マイステリー様の言葉に、私は驚いて声を上げてしまいました。

 え? と、言う事は……。


 「学生の時にすでに妊娠しておったのだ! それを先に知ったビールドリィ家は、ルミージュ嬢とマイステリーが婚約したから安心しろとカーリアに言ったようだ。私に聞くにも聞けず、また嘘も言う訳ないと信じていたようだ。まったくどうなっているのだ……」


 立て続けに色々と聞いた訳ですね。そして、居ても立ってもいられなくなり帰国してすぐに、ここに来たと言う訳なのね。


 「でも孫が出来るのなら宜しいのではないですか? カーリア嬢の婚約者は、学園に通う前から決まっておりましたよね?」


 おじい様が質問をなさると、そうだとアイスグリード伯爵が頷いた。


 「だとしたら、後を継ぐという約束をしていたのでしょう」

 「ヒールが扱えるとなれば、そう簡単にはいかないのです。あなた方と縁を持てるのはとても魅力的だが、他の者を納得させられない。せめて彼女が魔法を使えたらよかったのですが。そういう訳でして今回は……」


 やはりそうなるのですね。殿下の前で私達が婚約などと言ったから、外堀を埋められる前に、手を打ちに来たのね。


 「では、魔法のマの字でもあれば、婚約を許して頂けるわけですよね? 父上」

 「はぁ? ないものはいだろう?」

 「潜在能力ってご存知ですよね?」

 「まさかそれを引き出すと? あれはそう簡単に出来るものではない。それにあるとは限らない」

 「ありますよ。ユリーナには。先生も一度魔力を感知しています」

 「なんだと?」


 そう返したのは、おじい様です。

 家族全員が、私を見た。


 「ユリーナにもあったのか。婚約云々は置いておいて、明日から調べてみよう」


 お父様が張り切りだしたわ。


 「で、父上。宜しいですか?」

 「いいでしょう。ですが、不正だけはしないで頂きたい」

 「誰がそんな事を致しますか」

 「では、失礼します」


 マイステリー様のお父様は、信じていない様子。


 「やるじゃない、あなたも」

 「え?」


 お姉様は、リボンを手にしていました!

 あぁ、もう!! 思い出させないで下さい!

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