第2話
王太子リゾール様は、ゲームで感じた頼りがいがある感じとは違って、王族の証である紫色の瞳は優し気で、同じ紫色の髪がよく似合う顔立ち。うん。素直に言って格好いい。
その横を歩くお姉様は、ある意味注目の令嬢だった。
優雅に歩く姿は高貴の令嬢そのもの。見た目
私と同じ赤茶色の長い髪に慈悲溢れるその微笑は、赤茶色の瞳が似合う。私の様な赤い瞳だと色が強すぎるわ。
お姉様は、私と同じで魔力を持っていない。だから、侯爵の令嬢だから婚約できたのだと噂されていた。
そこに、凄い魔力の持ち主のヒロイン――あれ名前はなんだっけ? デフォルトの名前を思い出せないわ。
見た目は、フワッとしたブロンドの髪に黄色の瞳。平民や男爵とか低い身分ではなく、伯爵令嬢だったはず。家名は覚えてない。自分が設定した名前で呼ばれるからね。
学園に入学した私は、ヒロインが誰か確かめる為に行動を起こす事にした。
「ねえ、お姉様。今日、リゾール殿下とお会いになるのですよね?」
「そうよ」
「私も行っていい?」
「え? ……い、いいけど」
ちなみに、私にはまだ婚約者はおりません……。
□
「ユリーナ。何度かお会いした事があるでしょう? リゾール様よ」
「お久しぶりです。リゾール殿下」
お嬢様らしく、そして可愛く振る舞う。
「やあ、久しぶりだね」
リゾール殿下は、にっこりほほ笑む。
周りには、学園主催のお茶会に参加した方々がいらっしゃいますが、やはりヒロインはいません。
やっぱり昨年は、入学していないみたいね。今年もいませんでした。
この一年間、お姉様からヒロインの事は一度も聞いていなかった。だから変だとは思っていたけど、緊急事態だわ。
ヒロインがもし、私と同じ転生者だとして、ゲームの内容を知っていて二人に接触しないのはあり得ない。ゲームの事を知らなければ、少なくとも学園にはいるはずなのに。どうなっているの?
どうしましょう。このままだと、お姉様は
誰かを焚きつけるしかない? でも相手が皇太子と侯爵令嬢なので難しいですよね。
そうだわ! お姉様が違う人を好きになったら……無理よね。べたぼれでしたもんね。
これはもう、私がヒロイン役をするしかないようね!
□
「ねえユリーナ。この頃どうしたの? 私について回ってない?」
「ごめんなさい、お姉様。学園生活が慣れていなくて……ダメでしょうか?」
「ダメではないですけど……」
言えないわよね。リゾール殿下と二人っきりになりたいなんて。私が、邪魔だなんて。
でも言っていいのですよ、お姉様!
「しかたがありませんわね。行きましょうか。今日は、魔法を使える方のお披露目の日なのです。大丈夫ですわ。先生方が結界を張って下さっているので、危険はありません。リゾール様も出席されるのですよ」
そうでしたわ! それにヒロインが出席され、リゾール殿下の目に留まるのでしたわ。もしかしたらいらっしゃるかも!
そうしたらこんな嫌な役をやらなくてすみます。
「行きましょう。お姉様!」
「嬉しそうね。そうね。私達には使えないものね」
そう言って笑顔を向けるお姉様。なんだか胸が痛みます。
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