落涙

月見兎

落涙

溢れ出した 人のヘドロは案外透明で

鏡面の中の僕はいつも通りだった

降り出した 君の心は寒寒冷冷で

愛読書を手繰る指は静かに震えていた


ざぁざぁと余韻だけがその場に残った


一から十までの差分

二と五はよく使っている

ヒントは九番の行方

居なくても平気なあの子

自分じゃ気付けない過失

今日までを振り返ってみる

道はもう無くなっていて


曖昧

失い 無い だらけの表情

間違えた感性だって

刺されれば痛い

貴方にも見えない くるしみ


亡い 哀 絡繰り人形

感情の欠落だって

わかって貰えない

誰にも気付けない くるしみ


嗚呼

泣きたい 泣きたい

嗚咽を漏らして

叫びたい 叫びたい

涙を流して

啼けない 鳴けない

喉はもう潰れて

明けない 終わらない

月夜に華よ開け

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

落涙 月見兎 @scorpi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る