第302話 撤退戦(13)
「相沢さんは、探索者達からは孤立しているようで――」
「孤立? 何かあったのか?」
「それが……、彼女のレベルと身体能力に理由があってですね……」
「ふむ」
「彼女が、ピーナッツマンさんの弟子だと話には伺っていましたが、相当御強いですよね?」
「そうだな」
相沢のレベルはすでに3200に近い。
恐らく難易度が跳ね上がる前のダンジョンなら――、ランクが低いダンジョンなら一人で攻略出来るかも知れないレベルだ。
まぁ、本当に攻略できるかどうかはBOSS次第という形になると思うが。
「それでですね。周りから強すぎるという事。そして、ピーナッツマンさんの弟子と言う事で何らかの恩恵を受けてレベリングをしたのでは? と、嫉妬を持たれたみたいで……」
「そんなの仕方ない事だろう?」
「それでも、探索者も人ですから……」
「ふむ」
たしかに水上の言っている事も一理はある。
誰もが他人が得をしていれば羨望の目で見るし嫉妬もする。
特に日本では成功者に対しての嫉妬や妬みというのは酷いものだからな。
「それで相沢は、どういう対応の仕方をしたんだ?」
「はい。一応は、戦ってはくれていますが……、かなり遠慮しているようで――」
「ふむ……。怪我人などは?」
一応、スキル「神眼」でも確認するが誰もが疲労感を持っているのは確認が出来るが怪我はしていないようだ。
まぁ、聞いておかないと変な目で見られるから確認しておくが……。
「特にありません。戦国無双ギルドのメンバーが率先して戦っていました。一応は、ピーナッツマンさんの経験値倍増の魔法がありますし、それによりレベルが上がっていてモンスターの対処が出来ていましたから」
「なるほど……」
つまり大事には至っていないということか。
それにしても地上まで強行して脱出をしないといけないというのに、足を引っ張り合うとか愚かとしか思えない。
まぁ、余裕が出てきたという証かも知れない。
「分かった。今後の事を含めて俺から冒険者たちに話をしてみよう。連携が取れないと大所帯の時に攻められたら困るからな」
「お願いします」
「それじゃ11階層を見てくるから、ここで待機しておいてくれ」
俺は、水上が頷いたのを確認したあと11階層に上がる。
そこは10階層の休憩所。
「ここは無事か……」
一応――、見渡す限りでは、ざわついてはいるが建物が崩れていたり死体が転がっていたり怪我人が居るようには見えない。
スキル「神眼」で確認してもモンスターの存在が確認出来ないことから11階層は安全と見て大丈夫だろう。
すぐに階段を降りる。
階下には、不安そうな瞳を此方に向けてきている水上の姿が。
俺の姿を見た途端――、「ピーナッツマンさん、11階層はどうでしたか?」と、聞いてくるが――。
「特に問題はない。休息と、脱出の為の話を水上! お前に任せた」
「――わ、分かりました。一応、ピーナッツマンさんは着いてきてもらう事は……」
「それはお前の仕事だろう? スマートフォンに記録されている媒体などを見せれば11階層の休憩所を運用している日本ダンジョン探索者協会の連中も分かるはずだ」
「……分かりました。――ですが、私では話が纏まらない時は……」
「その時は手伝おう」
本当は、相沢に11階層の守護を任せて俺単騎で地上まで一気に戻り佐々木の行動の有無の確認を取りたい。
だが……、何かあったらと思うと動くに動けない。
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