第301話 撤退戦(12)
通路の壁を破壊して直進するような事はできない。
理由は、壁を破壊すれば前後の通路だけでなく側面が通路に接する可能性があるからだ。
そうなれば側面からモンスターに襲われる事になり壊滅する。
スキル「神眼」で階層内の構造を確認しつつ、階段までの最短ルートを選択し歩き続け襲ってくるモンスターを殲滅していく。
そうしていると、3時間ほどで12階層に到着。
「今は、どのあたりなんでしょうか?」
先頭を歩いていた俺に水上が恐る恐ると言った様子で話しかけてくる。
俺の真後ろでモンスターを倒していたのを見ていたから、あまりの一方的な瞬殺に恐怖しているというのが目から見て取れる。
「いまは12階層あたりだな」
「もうすぐですね」
「そうだな」
もうすぐ休憩階層の11階層に到着する。
そこが、どうなっているのかは分からない。
被害が出ていない事を祈るしかないな。
正直、今までのダンジョンとは勝手が違っているということ――、そして一時期はレベルが上昇することでテンションが上がっていたが現実が見えてきた冒険者である彼らは、なるべく戦わない位置に陣取っていた。
それでも疲労は蓄積する。
3時間もダンジョン内で行動をすれば、それは――疲労はピークに達する事は明らかだろう。
――さて、どうしたものか……。
「水上、10階層の休憩所に到着した時に何も問題が起きてなければ、しばらく休息をする旨を同行者たちに伝えてきてもらえるか?」
「いいのですか?」
「仕方ないだろう? それに目的地が定まっていた方がいいからな」
10階層の休憩所に着いた後も、そのあとは10階以上の階層を上がる事になる。
そうなれば数時間の強行軍を強いられる事になるだろう。
それなら、これからの予定をシッカリと伝えておいた方が、一行の考えも備えが出来るというものだ。
「分かりました。すぐにでも――」
水上も、一応は22階層の――、日本ダンジョン探索者協会が休憩所と定めている場所の担当責任者という重責もあり前線に居たが――、心境としてはレベルはそこまで高くない事から重圧はあったのだろう。
すぐに、俺から離れていく。
「――さて……」
俺は、毎回のごとくスキル「神眼」で12階層を確認する。
「思ったよりも11階層に上がる階段は遠くないな」
一人呟きながら、周囲を確認するが――、
「佐々木は居ないか……」
アイツのレベルは8000を超えている事から、とっくの昔に俺と合流してもいいようなモノなのだが……。
どこで何をしているのか。
いくら実戦経験に乏しいと言っても合流出来ないどころか、スキル「神眼」が感知できないのはおかしい。
事実、モンスターの居る場所は確認出来ているのだから、佐々木の反応があれば確認できるはずだ。
「まったく……」
思わず無意識の内に、愚痴が出てしまう。
それにハッ! と、したあと俺は頭を左右に振り自分の考えを――、佐々木の身を案じた考えを否定する。
「どちらにしても11階の休憩所に行くのが最優先だな」
最優先事項を見失ってはいけない。
まずは無事に生存者を地上まで送り届けること。
――それから30分ほどが経過。
「次の階層が休憩所だな。とりあえず俺が先に階段を上がって見てくるから水上は、此処で待っていてくれ」
「分かりました」
男は、どこか落ち着かない様子で頷き返してくる。
「どうかしたのか?」
休憩所で休憩をすると言う事を冒険者や職人に伝えてきてくれと頼んだあとに、同意し離れてから戻ってきてからという物、水上の様子が何処かおかしい。
「ピーナッツマンさん。ちょっと……」
「――ん?」
水上は口を開く。
「相沢さんの事ですが……」
「相沢がどうかしたのか?」
「はい、じつは……」
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