第282話 鳩羽村ダンジョン攻略(20)

「それにしても……」


 転がっているギルド【戦国無双】の人影を見て思わず溜息をつく。


「――あ、あの……、助けてくださりありがとうございます!」


 どうしたものかな? と、考えていると日本ダンジョン探索者協会の女性が話しかけてくる。


「気にすることはない。今回は、ダンジョン内の調査が俺の仕事だからな。何かトラブルがあれば鎮圧するのも含まれている」


 周りのギャラリーから、


「さすがNo1冒険者は違う!」

「奇抜な恰好の変な人じゃなかったんだ!」

「きゃー千葉県の名産!」

「ピーナッツマンは千葉の特産物!」


 などなど、声が聞こえてくるが無視しておくとしよう。

 

「そんな事ありません! たった御一人で倒してしまわれるなんて……、あ――! わ、私、川野春奈と言います! 24歳の独身です!」

「そうか。それで、この転がっている連中はどうする?」

「――え? あ、はい……」

「ピーナッツマンさん!」


 何故か知らないが微妙な雰囲気になったところで、先ほどまで事務所で話をしていた水上さんが大声で俺の名前を叫びながら走ってくる。


「ハァハァハァ」

「どうした? 何かあったのか?」

「何かあったではありませんよ! 喧嘩が起きていると聞いて急い……で……え? こ、これは……」

「水上主任、ギルド【戦国無双】の人たちが私達に危害を加えようとしてきたんです。自分達の治療を先にしろって……、あと私や相沢さん、治療を受けていた杉崎さんを強姦しようとしてきたばかりか殺そうとまでしてきたんです。それを、ピーナッツマンさんが助けてくれたんです」

「……ほ、本当のことですか?」

「ああ、本当のことだ。嘘だと思うなら周りのギャラリーに聞いてみるといい」


 肩を竦めながら俺は答える。

 まぁ、俺達が水上に事情を説明している間、ギャラリーが、


「本当のことだよ!」

「スマホで動画も取ってある!」


 などなど呟いていた。

 もちろん、それを聞いていた水上の顔色が真っ青だ。

 

「な、なんという……」

「――で、こいつらはどうする? 腐っても高レベルの連中だ。そのままにしておく訳にはいかないだろう?」

「は、はい。少し待っていてください」


 そう言い残すと水上は事務所の方角へと走っていき――、すぐに戻ってくる。

 その手には、手錠の代わりとして少し前から使われているインシュロックが握られており――、


「これはダンジョン内から産出された鉱石で作られています。これを両親指にかけてから縛ります。両手は後ろ向きに――」


 そう言いながらテキパキと水上は地面の上に転がされていて苦悶の声を上げてくるギルド【戦国無双】の男たちを縛り上げていく。


「これは、ひどいですね……」

「まあな……」


 半分、呆れた表情で石橋を見る水上。

 ちなみに石橋は地面の上を火花でも散らしながら転がっていた事もあり鎧はボロボロ、体中も傷だらけというありさまだ。

 まるで過去に戻るかのような有様で地面の上を転がっていったからな。


「とりあえず破傷風にかかると命の危険性がありますので砂と土だけは洗い流しておきましょう」

「そうだな」


 水上のその意見には賛同だ。

 とりあえず水に塩を入れまくり、それで石橋の傷口を丹念に塩でも摺り込むようにして洗っていく。


「ぎゃあああああ!」


 痛みのあまり転げまわっているが腹を一発殴ったら意識を失った。


「よし、終わりだ」

「ピーナッツマンさんは容赦がないんですね」

「悪人に人権はないからな」


 俺は話しかけてきた相沢に言葉を返しながら、いまだに地面の上で倒れ失禁をしている男へと視線を向ける。

 そこには織田が倒れていた。


「これは、また酷いですね」


 半分、諦めた様子で呟く水上。

 

「自業自得です! 女を物扱いしたんです! きっと余罪もいっぱいあります!」


 川野が憤慨した様子で言葉を紡ぐ。


「その通りです!」

「ですよね!」


 それに追従するかのように相沢に治療されていた杉崎という女性が同意し――、相沢も何度も頷く。


「――と、いうことだ。コイツの場合はアイテムを回収しておいた方がいい」

「分かりました」


 水上は事情を察すると、アイテムを回収し織田も縛り上げる。

 まぁ、織田は両足が粉砕骨折に右腕が単純骨折だから、縛り上げる必要もないと思うが一応は何かあったら困るからな。




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