第202話 信頼の軌跡(4)

 鳩羽村から、松阪市まで――、最短距離を進むことを10分ほど。

 伊勢自動車道を超えたあと、山の中を走り続けると唐突に開けた場所へと踊りでる。


「太陽光パネル――」


 佐々木が眼下を見ながら呆然と呟く。

 木々の合間――、枝の撓(しな)りを利用し反動で高速移動していた俺達の目の前には、佐々木が呟いた通り山の中を切り開いたかのように忽然と姿を現したソーラーパネルが立ち並んでいるのが見える。


「これは、不味いな……」


 思わずスキル「神眼」で見てしまった。




【アイテム名】  

 

 太陽光発電施設(メガソーラー)

  

【効果】   

 

 最大出力12万kw(最大で原発の10%の程度の発電量)

 施工不良により地盤沈下が進行中

 地盤崩壊まで61日。




「先輩、どうかしたんですか?」

「――いや」


 周囲を見渡すが人影などは見当たらない。

 おそらく管理も杜撰なのだろう。

 2020年に太陽光パネルで発電した電力は購入しないという法案が通ってからと言う物、他国の業者は管理を放置しているからな。

 まったく――、困ったものだ。


 松阪市の太陽光パネルが設置されている場所を抜けたあとは、再度――、山の中を走り続けゴルフ場を北上する。


「このへんだな」


 市街地が近くに見えてきたところで、抱き上げていた佐々木を降ろす。


「――あっ……」

「どうかしたのか?」

「ううん。それより先輩――」

「どうしたんだ?」

「どうして、私を一緒に連れてきたんですか?」

「これだ」


 夏目総理から渡された冒険者カード――、それを佐々木に見せる。


「これって……、Sランクの冒険者カードですよね? どうして、先輩が――」

「総理に貰った。とにかく、それを使うにはある程度の実績が必要だからな。俺だと、ピーナッツマンの着ぐるみってところか」

「――なら着ぐるみを着ればいいのでは?」

「バカを言うな。面倒なことこの上ないだろ」

「そういえば、そうですよね……、ピーナッツマンって正義の味方だってすごい人気ですし……、4月からは日本ダンジョン探索者協会が全面的協力の元、落花生戦隊ピーナッツマンっていう特撮テレビが始まるみたいですよ?」

「落花生……、戦隊!?」


 意味が分からない。

 だいたい、俺の所にそんな話は一切きていないぞ?

 まぁ、何か企んでいると思ったが特撮テレビをするとは思っても見なかったな。


「――だが、そうなると余計、ピーナッツマンだとSランクの冒険者カードを使ってでの引き落としは大変になるな」

「そうですね……」


 その事に関しては佐々木も同意見のようだ。


「とりあえず、銀行にでもいくか」

「はい!」


 近くのバス停でバスに乗り松阪市駅前に向かうことにする。




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