第七章 幕間
第186話 佐々木望(1)
微睡の中――、私は瞼を何度か瞬かせながら意識をしっかりとさせる。
「今は……」
私は、どうして寝ていたのだろう? と、ハッキリとしない意識の中、部屋の中を見渡す。
そこは、いつもの私の部屋ではない。
そして……、思い至る。
――自分は旅館に泊まっていることを。
横へと視線を向けると、そこには山岸直人さんが寝息を立てている。
そこで私は、天井を見上げながら何となくだけど理解してしまう。
山岸さんに迫った結果、実力行使で寝かされたという事実に。
彼が起きてしまうから声に出すことはできない。
だから寝顔だけ見て――、そして……、私は心の中で溜息をついた。
――佐々木家は元々、平家の血筋で壇ノ浦の戦いの後に鳩羽村に流れ着いたと言われていた。
だから、血筋を何よりも佐々木家の人間は尊ぶ。
その為に近親での結婚が普通に行われていて、その副作用もあり代々の佐々木家の血筋は、男の場合には短命が多い。
私の父親も、私が生まれてくる前に他界したとお母さんから聞いた。
だけど、どうしても納得できない部分があったらしい。
それは、亡くなる前日まで何の前触れもなかったと言う事。
普通は、何かしらの予兆があってもおかしくないらしい。
お母さんは、失意の中で私を宿したまま生活をした。
そして、生まれてきたのは女の子であった私。
お母さんは、短命は男だけと聞いていたこともあって、私が女だったこともあり喜んだけど、本家からの反応は良くなく本家から嫌がらせを受け始めたと言っていた。
ただでさえ広い旅館を切り盛りしていて心労があったお母さんは体を壊した。
鳩羽村も過疎化の一途を辿っていた
先の見えない暗い暗闇のトンネルの中――。
そんな鬱葱とした日々に転機が訪れたのは、6年前。
ダンジョンが世界中で出来た時からであった。
鳩羽村にダンジョンが出来てすぐに行政が攻略難易度を測りにきて、その調査の結果――、鳩羽村に出現したダンジョンの攻略難易度は、そんなに高くないと判断された。
そして、偶然にも鳩羽村ダンジョンの稼ぎは大きく――、その結果……、鳩羽村には大勢の人間がやってくると共に攻略法も佐々木家本家が主導で進めたことで少なくない富を作りだすことに成功する。
鳩羽村は潤い本家もダンジョン経営に忙しいのか、気が付けば旅館には殆ど口を出さなくなっていた。
だから油断をしていた。
本家から私だけ呼び出しを受けた時に、私は不用心にも本家に行き――、そこで男になる薬を飲まされた。
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