第150話 VS夜刀神(4)

「もういい――。貴様が、何者であるかなど!」


 夜刀神が両手に神刀を作り出し突っ込んでくる。

 それを後方に跳躍しながら避けると同時に――、視界内の魔法欄から魔法「須佐之男命(スサノオ)」を選ぶ。


 それと同時に、緑のプレートが開くと同時にシステムログが流れる。




 ――魔法「須佐之男命(スサノオ)」の発動を確認。

 ――特殊戦闘スキル「須佐之男命(スサノオ)」を展開……発動します。

 ――生体リンクの認証を確認。

 ――通常システムから戦闘システムへと移行します。

 ――敵を認証……、確認しました……、敵対するは国津神である夜刀神と確認。

 ――消去者(イレイザー)としての攻撃を開始します。




 見慣れない文字列が流れると同時に――、体が自然と動く。

 視線は夜刀神に向けられているが、「須佐之男命(スサノオ)」が発動してからと言うもの、直感で全方向の様子が頭の中に入ってくる。


 上下から同時に振られてくる神刀。

 その速度は、神速であり人間では決して捉えられないほどの物であったが――。


 俺の両手は、2本の神刀を粉砕する。

 

「――なっ!?」


 驚愕の声を上げる夜刀神。

 ――そして下がり態勢を整えようとする夜刀神に――、俺の体は空いた空間に体を滑りこませるように移動し肉薄する。

 その行動は、夜刀神が神刀を振り下ろした速度よりも遥かに早い。


 移動した際に、右足を踏み込んだ地面は、粉々に砕け散る。

 周囲には、数メートルもの岩石が超高速で飛び散ると同時に――、それら岩石を「大国主神(オオクニヌシノカミ)」の壁が辛うじて受け止める。


 それらの流れは、ほんの刹那の時間であり――、夜刀神ですら認識できないほどの時間。

 体は半身の状態から捻転を加えた状態で、足腰から伝えられた莫大な力は丹田を通し肩から肘――、そして掌底へと伝達される。


 ――そして夜刀神の鳩尾を、掌底で打ち付けた!


 その瞬間! 周囲の大気中には、雷が落ちたと錯覚させるような破裂音が響き渡る。


「ぐはぁ――」


 苦悶の色を内包した声が――、夜刀神の仮面越しに聞こえたと同時に、夜刀神の体は空間を打ち破る音と共に、衝撃波を撒き散らしながら後方へと吹き飛ぶ。


 ――そして、「大国主神(オオクニヌシノカミ)」が作り出した壁すら粉々に粉砕すると遥か後方の崖へと突っ込むと同時に爆砕――、崖が崩れると同時に微震が足元を揺らす。


「……これは――」


 思わず唾を飲み込む。

 以前に、スキルとして発動した「須佐之男命(スサノオ)」とは、まったく別次元の物と言っていいほどの力。

 ……コレが信仰心を得て発動した力としたら――。


 思考したところで、ログが視界内のプレートに流れる。



 

 ――国津神である夜刀神の神性を破壊しました。




「神性を破壊?」


 視線を、夜刀神の方へと向ける。

 立ち込めていた煙が消えていく。


「……い、一撃だ……と……、こ、こんな……、ば……馬鹿な……、こんな馬鹿なことが……、たかが人間ごときが……、人間ごときに我が――、神たる……、一柱たる……、神たる我が……」


 ふらつきながら姿を現した夜刀神の体は所々が、陶器の器のように割れて空洞になっているのが肉眼で見ることが出来た。


 


 ステータス


 神性属性:神性破壊

 名前 夜刀神

 年齢 ??

 身長 ??

 体重 ??


 レベル 1

 HP 1

 MP 1


 体力1

 敏捷1

 腕力1 

 魔力1 

 幸運1 

 魅力1 


 ▽所有ポイント  0 




 スキル「神眼」で確認するが、ステータスどころかレベルやHP、そしてMPまでも1へと変化している。

 



 ――消去者(イレイザー)としての承認を確認しました。

 ――対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」展開……発動シーケンスに入ります。

 ――夜刀神の顕現を消去します。

 ――攻撃存在の解析を開始……、解析終了。

 ――全MPを対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」の展開発動へと――。

 ――入力値を確認しました。

 ――対象者の全MPを対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」に転移――、魔法術式を構築。

 ――発動魔法の威力に耐えられるよう全ステータスを9999まで引き上げ一時的に凍結します。


 視界内の緑色のプレートとは別に、後方に無色不透明なプレートが無数に開くと同時に、膨大な計算式とグラフが表示され――、書き込まれていく。

 

 先ほどは見ることが出来なかったが……、いまは――、特殊戦闘スキル「須佐之男命(スサノオ)」が発動している今なら見ることが出来る。


 


 ――空間座標を確認しました。

 ――対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」の顕界を開始します。




 緑色のプレートを一つ残し――、開いていた無数の無色半透明なログが一斉に閉じる。

 ――それと同時に、大気中に生まれたエネルギーが――、緑色の粒子が右手に集合していく。


「そうか……、そういうことか……、そういうことだったのか! ようやく理解したぞ!」


 俺の右手に集まり作り出された剣を見て夜刀神が声を荒げるが、夜刀神が何を口走ったのか俺には理解できない。

 それに、俺の体は自動的に動き――、作り出した対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」を上段から振り下ろす。

 極大な緑色の極光が夜刀神の体を飲み込む。


「おのれえええええ、神棟木(かみむなぎ)! 貴様は、全ての国津神を敵に回したと知れ!」


 夜刀神の叫びと同時に――、仮面が粉々に砕け散る。

 それと同時に、陶器のような体が粉砕され――、さらに後方に存在していた山の頂上を消し飛ばすと極光は天空を貫き遥か彼方に消えていく。




 ――夜刀神の顕現消失を確認しました。

 ――荒神の浄化を確認しました。

 ――入力MP、全ての消費を確認しました。

 ――草薙剣(くさなぎのつるぎ)の顕界を解除します。

 ――対神格魔法「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」の起動終了により固定していたステータスを解除します。

 ――特殊戦闘スキル「須佐之男命(スサノオ)」の発動を解除します。



 ログが閉じると同時に、周囲に体に力が入らなくなり地面に膝をつく。

 

「はぁはぁはぁ……」


 息を吸うだけで肺が痛む。

 胸を押さえつけながら必死に息を整える。

 すでに周囲には、「大国主神(オオクニヌシノカミ)」が作り出した壁は崩れて消えていた。

 そして――、自分が何故――、仕事を探して情報を集めていたかを……、その記憶が頭の中に流れ込んでくる。

 

「そうだ……、俺は――、夜刀神を浄化するために……、だが――、何のために?」


 思い出そうとするが記憶に霞がかかったかのように、思い出せない。

 それが、もどかしく苛立ちを募らせる。

 歯ぎしりしたところで後ろから、石を踏みしめる音が聞こえてきた。


「――え? ……や、山岸さん?」


 振り返る。

 そこに立っていた女性は……、震える声で、小さく呟いてきたのは――、藤堂であった。

 そして、それと同時に――、その言葉に、ようやく自分が着ていたピーナッツマンの着ぐるみの頭部が破損している事に俺は気が付いた。




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