朝はいつ終わり?

 目が覚める。目が覚めた。心は眠ったまま。本当に起床したと言えるのは何時を指すのか。

 朝というのはとてもとても耐え難い。気持ちよく起きれたことなんてない。どう試してみても、無論早く寝たところで寝覚めの良いかったことなんてない。

「あーう」

 布団のなかでぐっと背伸びをする。眠い。

「ごあー」

 しつこく歯を磨く。眠い。

「うえ」

 お手製のお味噌汁にご飯。ちょっとご飯盛りすぎたかも。

 目が覚めたところで起床とは言い切れない。眠い眠いと言ってるだから「寝た」ことにはならないのではないか。「寝て」いないのだから「起きた」ことにはならないのではないか。そんなおかしな理屈を捏ねながら自転車を漕ぐ。

「眠そうだね」

「いつも眠いの」

 隣の席の友達が笑いかける。朝日が差し込んで教室が眩しい。

「いたっ」

 呆けていたのか足の甲に教科書を落とした。

「なにやってるの?」と快活に彼女は笑う。

 私もつられて笑う。ひとしきり笑うと、心が澄んで晴れ渡るようだった。不思議だ。

「どうかした?」

「いや、なんだか目が覚めたから」

「よほど痛かったの?」

「かも」

「じゃあ、「おはよう」だね」

「うん、おはよう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る