短編36話 数あるしおり右下とあの子
帝王Tsuyamasama
短編36話 数あるしおり右下とあの子
あれは中学一年生、表紙の紙がオレンジ色になっていて横長タイプの冊子な遠足についてのしおりが配られていたときのことだ。
先生がいつもテストやプリントとかを配るときのように後ろへ回していって~と遠足のしおりがみんなに渡っていった。
俺はいちばん後ろの席だったのでこっちに回ってくるまでぼーっと待っていたんだが、主に女子たちが手にしおりを持ちながらなにかひそひそしていた。ひそひそしてる女子たちは驚いているような楽しんでいるようなそんなの。なんかおもしろいギャグでも書いてあったんだろうか?
うちの学校はイベントのしおりを作るときとかは結構学生が関わることが多く、お調子者が担当に入ればちょいちょい小ネタが挟まれたしおりになることもしばしば。んまぁ? この俺
とにかく俺はぼーっと待っていたら、前に座る
先生がメンゴしながら一冊また前から回ってきて、にやにやしてる義隆から受け取った。まぁ先生一枚足りません状況ってなかなか自分にやってきそうで遭遇しないことだけどさ。
でも義隆のにやにや顔の様子なんてすぐ頭から吹き飛んだ。しおりの表紙を見た瞬間に。
上に修学旅行という文字と日付が載っているが、描かれた絵は実に少女マンガちっく。
俺は少女マンガは少ししか読んだことないけど、右下主役の女の子のめちゃんこ笑顔さ加減に心ズキューンッ。
その女の子を待っていると思われる、奥にいる他の友達五人も明るく楽しげに呼んでいるし、行程に水族館入ってるからって海の生き物たちもそこら中でめっちゃはっちゃけてる。エビの跳躍力やべぇ。
裏に向けると学習机に写真立てがあり、飾ってある写真はさっきの男女三人ずつの六人組で寄ってピース。はい再ズキュゥーンッ。
奥は写真があるとして、手前にはプリントと鉛筆と消しゴムが置かれてある。宿題かな。
写真立ての横のイルカの置き物はおみやげだったのだろうか。六人の間で交換しあっていたらなんていう想像をしてしまいさらに心が満たされていくっ。こんな心が満たされる絵の右下に自分のクラスと班と名前を書くのか!?
そんな感動が突き抜けたわけだが、先生は淡々と遠足についての説明をしおりに沿いながらしていった。もちろん行程などの説明をじゃましない程度にちょいちょい出現する小ネタに笑わせてもらった。
『すいぞくかんってわざわざくを付けて言わないよねー、すいぞっかんって感じで』『スイゾッカーンッ(謎の爆発の絵)』うん、このノリ好き。
先生の説明が終わったけど、俺はしおりの最後のページを眺めていた。
そこにはこのしおり作りに携わった学生たちの名前が載っている。
具体的にだれがどこをどう担当したのかというのは書かれておらず、ただの名前の羅列。五十音順でなくクラス順ですらない。よって俺の心ズキューンした絵はだれが描いたのかはここではわからない。一応書かれてある名前自体はそれぞれの直筆の模様。
小学校のときからの同級生がそのまま中学校でも一緒でーというやつも当然いるんだけど、俺らの中学校はよその地域の小学校出身者もやってくるので、まだ中学一年生になってちょいちょい過ごしただけの俺には知らない名前も多かった。
少女マンガちっくなおめめきらきら絵ってこともあり、女子が描いたんだろうなと予想した。
そうして女子が描いたんだろうっていう想像をしたら、俺は、今までに感じたことのないどきどきがいっぱいやってきて、そして次に思ったことは……
……俺の作った小説の表紙、描いてほしいなぁ……。
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