第5-1頁 木漏れ日零れる兵器運搬
森で私を助けてくれたのは、悪キノコタンの女王、ファールクイーンことファールルイスだった。ファールルイスは、見た目とは違い、とても明るい人だった。
助けてもらった借りを返すため、私は兵器の運搬に手を貸す。
「お、ついに5頁か!今までありがとうな!これからもよろしくだぜ!」
「ほら蜜柑ちゃん。まだ収録あるんやから!」
「ええぇ……」
今ではもうすっかり太陽が上がり、空には真っ白な雲がちょこっと浮かんでいる。
夕暮れとは違い、昼は木漏れ日が溢れる綺麗な森を歩く私は、大がかりな兵器をいくつも浮かす。
これがただの散歩なら最高なのだが、既に戦争までのカウントダウンが始まっていて、森内は少しずつ緊張したムードが漂っている。また今度ゆっくりとこの森を散歩しよ、絶対気持ちいいよこんな景色。
「よいしょっと…ここでいい?」
現在、私は悪キノコタンの女王ファールクイーンことファールルイスと森の中にいる。
私は今朝、森で魔物と遭遇し、無事に撃退できた。
その時出会ったファールルイスに家を案内され、戦争準備を手伝うために兵器の運搬をしている。
「本当なら一台につき五体のキノコタンを担当させないと行けないんだが、シズクのおかげでお前一人で済んだよ、ありがとうな!」
「どういたしまして!困った時はお互い様だしね!」
悪キノコタンの兵器を森の木影に隠すように置いた。
この出来事のおかげで能力の扱いも慣れた気がしたので一石二鳥だ。
「…っと、そろそろ私行かなきゃ」
「あ、そっか…分かった。この恩は忘れない…ほんとありがとう!」
こうして、私はファールルイスと別れた。
振り向きざまに手を振り、微笑みあって森の生い茂る草を踏み歩く。
わずか数分後に出会うことも知らないで。
・・・・・
「あ、帰ってきましたよ!」
ファールルイスと別れてから、わずか数十秒走って行くと、開けた場所に出て、数メートル先に蜜柑達の姿が見えた。初めに手を振ってくれたのは六花。
「ほんまや!どこいってたんよ〜心配したで!」
それから迎えてくれたのは、結芽子。最後に蜜柑も心配してくれた。
「静紅、大丈夫だったか?朝起きて居なかったから…心配したんだぞ!」
ほぼ半泣きの蜜柑はあまり見れないレアな姿なので、後で笑い話にしてやろう。などと考えながら、私は元気にみんなの肩を叩いた。
「うん、大丈夫だよ!心配させてごめんね」
「ほんと、俺を心配させんじゃねーぞ!」
男子 (ただしイケメンに限る) が言えば落ちること間違いないセリフを蜜柑が言ったところで、今度はルイスに話しかけられた。
「シズクさん、大丈夫なんですか?」
「もー、ルイスまで…大丈夫だって!」
六花が心配そうに私に近づき、囁いた。
「何があったんですか…?」
「みんなにも言ってた方がいいかもね」
私は、今朝の出来事をみんなに伝えた。悪キノコタンとその領地に行った事を除いて、できるだけ分かりやすく鮮明な記憶を引き出して。
「なるほど…突然魔物が…」
「なんそれ、めっちゃ怖いやん!」
「キノコタン達にも呼び掛けをしておかなければ行けませんね」
やはりこの森にあの魔物が出没したことは無く、事件を未然に防ぐことが出来たと考えれば、襲われたのが私で良かった。キノコタンが襲われたら無事じゃ済まなかっただろうし。
それから数分後、戦争に向けての最終チェックを行っていた私達の元に良くない知らせが届く。
カンカンカンカンッ!!
領地の高台から敵の様子を観察していたキノコタンが吊鐘を鳴らした。
「ルイス!この音は…!?」
「これは警鐘です。敵の襲撃を知らせるこの鐘が鳴ったと言うことは…もうすぐ来ます!」
ルイスが汗を流しながら言ったその言葉のすぐあと、ぐんとこの場の空気が張り詰める。それと同時に私も息を呑んだ。
よく分からんけど、そろそろ始まりそう…
「悪キノコタン達ですか、やりますよ!」
六花が鼻から白い煙を出すような、そんな気がしたけど…まぁやる気があるのはいい事だ。
「どんな敵やろうと、かまへん!私らにあるのは殲滅やで!」
殲滅て…結芽子さん、あなた怖いよ!
「さてさて…久しぶりの運動じゃーい!」
それ雑魚キャラが言いそうなセリフ!!死亡フラグだけは立てないでよ…
それぞれにツッコミを入れたが、私1人だけ戦争をする気にはなれなかった。
「う、うん…頑張ろ、」
私は麻袋から、昨晩拾った小石を取り出し、能力で浮かせた。小石達をゆっくり上に上げていき、高度2mのところで止める。無意識に小石を見ると、昨晩の私は何を思っていたのか、尖った石ばかりが集められていた。
それも、殺傷能力の高いものばかりが。そのことを考えるだけで胸がずきんと痛くなる。 本当に昨晩の私は悪キノコタンと殺しあうつもりだったんだ…。
「おぉ、それが静紅さんの能力なんですね!」
「物浮かすことできるとか凄っ!」
「……」
「ほら静紅、早く敵に…」
「出来ないよ…」
蜜柑の言葉が終わるよりも先に私は震えたような声を出した。
鼓動が速くなり、冷や汗が出始める。唇は痺れたように痛くなり、手も自然に震えていた。
「私は…私は、この石を悪キノコタンに投げるつもりは無いよ。もしもそれが、幼馴染の…社長の命令でもね」
振り返り、私はきっぱりと断るように戦争加担拒否の意を上げた。
みなさんこんにちは。今回も読んでいただきありがとうございます。
今回のあとがきを担当するのは、各務原 六花です。
はいはい、進行を進めます。
実はこの回は一度、全て消えてしまって作者がほぼ半泣きになった回です。いつもは、その時の思いつきのまま物語を書くのですが、今回の章は、記憶を辿って書いたので、
作者曰く、「納得いきません。」との事。
ふん、ざまぁみろです。しっかりバックアップを取っていればもう一度打ち直しをする必要もなかったのに。
「次回からは、バックアップを取りたいと思います」!?もっと前から取っておいてください!
はぁ…時間もそろそろ無いので締めます。
次回もお楽しみに!
もしよかったらブックマークをしてくだされば作者は踊って喜びます。無理にでもおどらせます。
それでは!
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