第29話 窓際クランのクラン会議

 リュウさんと少し話しをしながら酒を一瓶開け、解散となった。

 ユーリがクランハウスに帰るとフィーとレイラが待っていた。


「・・・どうだった?」

「いちよ、相談には乗ってくれるらしい?ちゃんとした対応は期待するなと言われたけど」


 ユーリとレイラの話を聞いて、フィーは不機嫌そうにそっぽを向いた。

 そして、いかにも不機嫌ですという雰囲気を隠さずに言った。


「どうして『ハイエナ』なんかと手を組まないといけないのよ」


 フィーはまだ納得していないようだ。

 まぁ、無理もない。クランが潰れそうなところまで追い込まれたんだから。

 今日の会話でそのことはほぼ間違いがないことがわかった。


「フィー。納得してくれとは言わない。でも必要な事なんだ」

「別に私たちがいればあいつらの力なんて借りなくても大丈夫よ!」


 フィーはそういったが、ユーリとレイラは、『灰色の狼』の協力は得ておくべきだと思っていた。


「フィー。『灰色の狼』の力を借りる理由は三つある」


 ユーリは三本指を立てながら言った。


「一つ目は『灰色の狼』以外のチンピラクランからのちょっかいを無くせる」


 グレーゾーンの連中は弱者から掠め取る。

 今の『紅の獅子』は窓際クラン。

 ああいう連中は今後もハゲタカのように集ってくる。


 しかし、グレーゾーンの組織は横のつながりが大きい。

 一つの大きなところと手を結んでおけば、ほかのところからの干渉もなくせる。

 うちのクランとしては、この影響は大きい。一つ一つ潰している余裕はないのだから。


「二つ目は他のクランからの情報が得られる」


 クランにはクラン間のネットワークがあり、様々な情報がそこで手に入る。

 有用な情報や危機回避に必要な情報だ。


 正直、今の『紅の獅子』は孤立無援状態だ。

 他のクランがクラン間のネットワークで知っている情報がとても手に入れにくい。

 そこまで信用はできないかもしれないが、何もないよりはマシだろう。


「そして三つ目が『灰色の狼』が思ったよりまともなクランだった」


 これは話してみるまでユーリはレイラから聞いた時は半信半疑だった。

『灰色の狼』は結構まともなクランだった。

 主軸も探索活動においているようだったし、その他の王国内活動もしっかりしているようだった。


 グレークランの取りまとめだけあって色々な自己ルールがあるようだった。

 その上、違法な事はしていないようだった。

 脱法行為は結構していたようだが。


 整然と並べられる理由に、フィーは少しトーンダウンした。


「それはレイラから聞いたけど・・・」

「・・・うちのクランマスター代行はフィーだ。フィーがどうしても嫌だというなら、『灰色の狼』との繋がりは切ってもいい。決定権はフィーにある」


 理解はできるけど納得できない。そんな顔をフィーはしていた。

 どうしても納得してくれないフィーに対してユーリは息を吐きながら言った。


「どうしても嫌なら関係を切ってもいい。でも、その結果、フィーやレイラが傷つくのは見たくない」


 ユーリはフィーの目の前に椅子を持ってきて座り、フィーの目を見つめた。

 フィーはいきなり目の前に来たユーリにびっくりしながらその目を見かえした。


「俺ができるだけは守るつもりだけど、それでも守り切れるかはわからないんだ。だからこれが、最善だと思う。悪いんだけど、少し我慢してくれないか」

「な!守るって」

「当然だろ?俺は二人の盾役なんだから」


 真っ赤な顔をしたフィーは挙動不審にオロオロしだした。

 ユーリはその様子にかるく笑ったあと、おどけるようにユーリはそう告げた。


「もう。わかったわよ。ユーリのわがままを聞いてあげる」

「・・・わがままを言ってるのはフィー」

「ははは」


 今日も『紅の獅子』のクランハウスには笑い声が響いていた。

 ユーリは心からこの情景を守りたいと思った。

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