第25話 奴隷商人討伐

 まず最初に奴隷たちがこちらに向かってきた。 

 それぞれの手には鋭いナイフが握られており、

 どうやら麻痺属性を帯びているらしく、あれで攻撃されたらしばらくは動けなくなるだろう、


 それを利用して鎖をつけるのが見え見えだったりする。


 ロンパはにやりとほくそ笑むと。


「ネネーネよ見せてみよ、シンガーとダンサーの職業のすごさを」

「はい、師匠」


 ロンパはぐふふとまるで大事な弟子をショーに出すかの如く喜んで見せた。



 ネネーネの悲しい音色、

 そしてリズミカルなダンス。


 すると奴隷商人にとって恐ろしいことが巻き起こる。


 それは10人の奴隷が全員奴隷商人の方向へと方向転換したのである。


「ふ、ふざけるな、これは命令だぞ、奴隷商人として鎖をかけられたものは」


「無駄。もう彼らにはそれは聞こえていないし、見えてもいない、幻覚を見せている。あなたたちが敵だという」


 ダンスは止めることなく、

 そして歌は紡ぎ出しながら、話している。

 まるで口が二つあるかのような、

 あれは魔法で補っている。

 

 魔法ダブルミュージックというもので、シンガーの魔法だ。

 二種類の言葉を発することができたり、二種類のシンガー系魔法を使うことができる。



「ふ、ふざけるなぁ、タベルス、リナリーナいけえええ」


「まったくなぁあ、旦那には振り回されるし、なぁ、ようは歌は聞こえど、ダンスが見えなければいいんだろう、リナリーナよ、あとよろしく」


「任せて兄さん」


 あたりを霧が包み込む、

 ロンパたちは何も見えなくなるが、

 すぐさまに動いたものが2名いた。

 フィーズとメイルンであった。


 フィーズはリナリーナを止めようと、

 メイルンはタベルスの暴食を止めに向かった。


 その背後でひっそりと消えたものがいる。

 それはドースンだった。

 ドースンは森の中を歩き、遠回りにチキンポッパーの後ろに回っているはず。


 ネネーネは周囲の敵を仲間たちに託し、ひたすら奴隷たちの操作に徹している。


 ロンパはと言えば、辺りを見渡して、

 本当にまずいなら手を下そうと思っている。


 ロンパが手を下せば、チキンホッパーは瞬殺だし、あの双子も瞬殺だ。


 だけどここで師匠として手を下すということは、弟子を信頼していないということにもなりかねない、

 なのでここは見守ることに徹する。


 メイルンは相変わらず霧の中で暴飲暴食をしているタベルスを見つけることに成功したようだ。


 メイルンは剣を引き抜き、

 剣を強化魔法にて強化する。

 いつもの炎は使えないので、

 剣でテーブルをたたき割ることに成功するも、


 ある程度に食べつくしたタベルスは、剣を片手でつかむ。


 それはまさに岩に掴まれたといっても過言でないだろうというふうに、ロンパには見えた。


「おいらの食事を邪魔するうなぁああああああ」


 タベルスは剣を思いっきり振り上げて、天井に振り飛ばす。


 メイルンは天井に叩きつけられて、ぐはっと息を吐き出しながら、地面に落下するも、

 地面ではなく木々がクッションとなって体を助けてくれる。


 一方でフィーズは霧使いのリナリーナの元に到達して、

 剣をふりまわす。


「剣術が弱くたって、何度だってあきらめねー」


 剣を振り上げて、リナリーナを倒すはずだった。

 それはまさしく霧そのもので、まるで雲に斬撃を降らしているかのようだ。


 いたるところに霧のリナリーナが出演する。


 フィーズがにやりと笑うと、

 四方八方に剣を投げまくる。


 それも投げ捨てたらアイテムボックスでまた取り出してまた投げるという、

 お金の無駄遣いというか、金持ちしかできない戦い方をしていた。


「う、うそおおおお」


 リナリーナは思わぬ攻撃により、

 お腹に剣が突き刺さる。

 血反吐を吐いて、死亡したので、復活ポイントに移動したようだ。


「はなせええ、くそじじいい」


 ドースンは背後かチキンホッパーをホールドして身動きが取れないようにしていた。


 ロンパはにやりとほくそ笑むこととなるのだが、

 タベルスだけが暴走していた。


 まるでバーサーカーのように、


「聞いたことがあるのじゃ、フードファイターは食べるのを邪魔されるとバーサーカーになると」


「なるほど、ここはわしが出よう」


「「「「し、師匠?」」」」


 メイルン、ネネーネ、ドースン、フィーズが唖然としている。

 顔を真っ赤にさせて地面をたたき、

 あげくのはてには、木々を抜いている。


「わしはここが気に入っていたのじゃ、ま、アモスが案内してくれたからのう」


 本当はたまに1人でここにきては木々を観察していたものだ。


「それを破壊するものは何奴でも許さぬ」


 その殺気にチキンポッパーは失禁してしまったようで、股間が濡れている。


 その威圧に気づいたタベルスはどんどんと体が膨れてきて、巨人かと思われるほど。



「うおおおおおおお」


 叫び声をあげて突撃してくるなか、


 ロンパは人差し指だけでガードしてみせる。


「ぐおおおおおおお」


 唖然としたタベルス、それを見て縮みあがっているチキンホッパー。


「おぬし、ここにある木々はとても大切なものだ。あの木は当時育てていたやつの墓でな、あの木もな、いろいろ大変じゃったのだよ、死ぬ覚悟できてるのかああああ」


 ロンパの鬼のような形相。


 それに対して、まるで子犬のように縮み上がったタベルスは悲鳴をあげて逃げようとするも。


「にがすかあああああ」


 右手から煉獄の炎の塊が出現、

 それがタベルスを蒸発させて、入り口の扉を粉砕、

 もはや扉など関係なく、崩壊してしまうと。


「「「「って、師匠が炎つかっちゃだめでしょ」」」」


「気にするな、木々に当てなければ問題ない」


「は、はは、そういう問題じゃねー」


 そう呟くとチキンホッパーはその場で気絶した。


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