最強賢者は死にたがり―最強ダンジョンを攻略させろ―

MIZAWA

第1話 最強賢者誕生

 アモス・ディス・ロンパという少年がいた。

 彼は盛大な好奇心でもってあらゆる魔法を吸収していった。

 ある時はなぜ空は青いのか、

 ある時はなぜ血は赤いのか、

 ある時はなぜ女性を見ると男性が欲情するのか。


 アモスはいろいろなことを学び続けた。

 伝説級の魔法学校にも向かい、魔法について学び続けた。

 青年になろうとしても、魔法への好奇心はどんどんと膨れ上がり、


 ついには魔法を作り始めた。


 箒に掃除する意識をもたせるソウジジンという魔法は、魔法界を熱狂させた。

 いたるところで箒が自動で掃除しているという光景は当たり前のように見られるようになった。


 青年が大人になったとき、信頼のおけるメンバーを5人集めた。


 アモスを含めると6人のメンバーはマジックキャッスルというダンジョンをつくり上げることに成功した。


 このマジックキャッスルとは魔法教会の許可の元モンスターなどを使い魔として育てるのと同時に生物実験をする場所でもあった。


 6人の最強な魔法使いがあつまり、彼らは沢山の研究の結果、

 世の中に貢献をして、

 1人また1人と死んでいった。


 だが1人だけ生き残るものがいた。


 仲間たちが一人残らず昇天したのに、

 なぜか死ぬことさえ許されない人物。


 それがアモス・ディス・ロンパという老人だ。


 その老人の年齢は1000歳を超えようと、

 死ぬことはなかった。


 なぜ長く生き続けることができるのかが不思議だった。

 心辺りがあるとすれば、色々な実験結果を自分自身の体でためさないと気がすまないということもあり、


 もしかしたらいろいろな副作用の結果、

 すごいことになってしまったのかもしれない、


 老人になったアモスは、それ以上は老化することはなく、

 ひたすらひたすら研究に研究をつづけた。


 そしてアモスがこの世に誕生してから1500年の月日が経とうとしていた。

 アモスは研究につかりっぱなしで、数100年は魔法界とも連絡をとっておらず、


 浦島太郎状態でもあった。


 そしてアモスはようやく気付いたのだ。


「し、しにたい」


 それはまっすぐな気持ちから、

 それは苦痛の末なのか?


 ちなみに1人きりではないのだ。

 ずっと無言でアモス賢者のお世話をしていたメイドがいる。

 そのメイドは鬼族と呼ばれる亜族でありながら、

 差別をしてこないアモスを信頼している。


 そのためか数100年は話すことはしていない、

 だがそのメイドはこちらを見て、

 彼女の年齢も1000歳を超えている。

 鬼族という亜人は長く生きることができるとされている。


「ご主人様、どうか、どうか死ぬなどとは言わないでください」


「リンティン、わしはもう無理だ。ありとあらゆる魔法を極めた。だけどわしの周りには大切なものがないんだ」


「わ、わたしではだめなのですか?」


 顔をぽっと赤くしたリンティンはもじもじしながらこちらに問いかける。

 するとアモスは目をぱちくりとさせ、

 顎に手を当てている。


「ああ、ダメだ」


 アモスは断言して、窓をあけると、そこから飛び降り自殺をした。


 ここはマジックキャッスルの最上階でありながら、

 地面は草むらというわけではなく、頑丈の岩でできている。

 そして真上から悲鳴をあげるリンティンの声を聞きながら、

 全身に痛みが生じない魔法をかける。

 地面にごつーんとヒットするわけではなく、

 空から風のごとくタックルするかのように、

 その石頭は、地面の岩を粉砕し、

 そのまま地面に頭からくし刺しになったのであった。


 リンティンが猛スピードでダンジョンから降りてくると、

 アモスを見てうふふと淑女らしく笑ったのだ。

 アモスはなんだか恥ずかしくて、ぽりぽりと頭をかきながら、

 その頭には土がついている。


 地面に頭から突き刺さったアモスはそこから脱出することに成功していたのだが、

 リンティンの笑顔をみていると、もっと死にたくなった。彼女を唖然と言わせる死に方をアモスは見つけることを誓った。


 第2ラウンドといこうか。


「えーではここでは電気をわしの体に流します。それで死にます」

「アモス様、お願いですから」

「てぃってぃ、ナンセンスだぜ、あばばばばばあ」


 全身に高電圧の電気が流れてくると、

 全身から湯気みたいなものがでてくる、

 痛みは何も感じないのだ。


 あれ? おかしくね? 致死量の電気のはずだぞ?

 間違えたか?


 だがなぜかリンティンは爆笑している。

 それもあの可愛らしい声じゃない、


「あ、アモス様、全身が骨に見えて、うふふ」


「くそおおおおおお」


 全身が骨のように見えただけで、死ぬことはできませんでした。


 第三ラウンドといきましょうか、


 アモスは包丁をもって腹につきさす、なぜか包丁が折れてしまった。

 アモスは冷や汗をかきながら、

 隣では爆笑しているのは、最初の乙女らしい笑い声から一線を引いている気がするし、

 なによりリンティンはとても幸せそうだ。


「ふむ、こういう生き方もいいかもしれないなぁ」


 第四ラウンドといきましょうか、


 アモスはゆっくりとリンティンのところに近づくと、

 そのメイド服のスカートをめくりあげた。

 もちろん訳のわからないリンティンは唖然として、突如真っ赤な顔をして。


「いやん」


 とかいって、アモスの顔面をビンタ。

 アモスは右の壁から左の壁にテレポートするかのように吹き飛んだ。

 顔面から壁に激突する。さすがマジックキャッスルに穴をあけないか、


 それはさておき、顔面からようやく血が流れた。

 

 つまりわしを殺せる可能性があるのは、


「アモスさまああああ」


 わしを殺せるのはこういった人間であり、さすがリンティンに殺してくれとは言えない。


 アモスは壁にはられたあった数百年枚の写真をみる。

 そこには始まりの街に集まってきた冒険者たち、

 彼らはダンジョンを攻略するのに夢中だ。


 そしてこのマジックキャッスルはダンジョンなのだ。

 1階から10階までありとあらゆる化け物がいる。あとでスカウトする必要のある階層もあるが。今は、ふはははははは。



「よくやったぞリンティン」

「わたしはそれを喜んでいいのかしら?」


「わしは冒険者に殺されたいぞい」

「だから、その考え方はおやめください」


「ふはははははは」

「もう魔王みたいなんだから」


 これがワシが殺されるまでの物語だ。



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