第2章 騎士(ニャイト)の鎧は呪われている前編~纏わりつく憎悪~

またたび「これは大変だニャー!!」


優唯とまたたびは図書館に来ていた。現世で出版されたあらゆる時代の書物が読める形で保存されており、


その形式は紙、電子、点字、音声、動画と様々な媒体で楽しむことができる。


またたびは発行されたら欠かさずに読んでいる猫猫新聞を読んで驚きの声をあげた。


優唯「あ、また猫猫ねこねこ新聞読んでるの~?」


またたび「違うニャー、優唯ちゃん。これは、猫猫 《にゃんにゃん》って読むんだニャー」


優唯「そうなんだ~、ところで何が大変なの?」


またたび「あっ、そうそう、これだニャ、見てみて」


新聞の見出しには「猫又騎士現る!!」と書かれ、本文は


【妖怪と言われている猫又。それが、騎士のような鎧を纏い、このへんを駆け巡っているという。


ここで、その猫又騎士を家の塀を渡っているところを見かけたという猫五郎(ニャンゴロウ)氏に話を伺うことができた。


猫五郎「あんれは、すっげぇ速さだった。何つうか、鎧は重そうなんのに、なんでぇあんなに身軽に動けるか、ふっすぃぎぁ~。マントのなびいてぇいるとこも様になっていただぁ」とのことです。


また、その他の情報として、猫又騎士が通ったあとは血生臭さく、殺人・殺害を行っているのではないかとされ、


近隣の猫達は見かけたら速やかに自分の身を守るように注意が必要だ。二度と旨い魚が食べられなくなってしまう。】


優唯「この猫五郎さんって方言しゃべっているのかな?口調が変わっているね!」


またたび「ニャニャ~、まず、そっちに反応するの? 優唯ちゃんったら……」


優唯「えっただ気になっただけだよ~。ところで、猫又って何?妖怪と書いてたけど、元は猫さんなの?」


またたび「大別して山の中にいる獣といわれるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるものの2種類がいるらしいにゃ~。でも結局は性格はそれぞれであって、狂暴なのから、温厚なのまで。見た目は普通の猫と違って二本の尻尾を持ってるみたいだニャ。でも、これって人間が考えた空想上の生き物じゃないかニャー」


優唯「ヘぇ~、そうなんだぁ。またたびは尻尾が一つだから猫さんだよね」


またたび「僕はただの猫だよ~。でも、もしからしたら猫又になってたかもしれないね。優唯ちゃんに出会わなかったら……人間のこと恨んで生きていたかもしれない」


優唯「大丈夫、私はまたたびのこといっぱい愛しているからね!」


またたび「優唯ちゃん……」


優唯「さ、昔の話は忘れて、猫又騎士さんの話に戻ろう。この猫又騎士さんって、猫にとっても敵さんなのかな?」


またたび「う~ん、そこまではわかっていないみたいにゃ~。ヘヴンネットニュースも見てみてけど詳しいことは不明。今のところ被害猫はでていないらしいから、猫にとっては悪い騎士ではなさそうと言われているニャー。でも、ニュースの内容ってあくまで記者の独断と偏見でまとめられてるってイメージだから自分の目で確かめたいニャ」


優唯「猫又騎士さん見てみたいね」


またたび「自分で言ってて何だけど、優唯ちゃんを危険な目に合わせたくないから、撤回するニャ」


優唯「大丈夫だよ、私だって強くなりたいもの。どのような人も愛で包み込める天使に。もし、猫又騎士さんのことが精神修行で行われたら私は行くよ」


またたび「でも、僕たち、天使に昇格したばかりだよ?敵う相手かな…」


紗理奈「あら、優唯にまたたびじゃない。あなたたちも読書? 授業中に寝ちゃう優唯が珍しいわね」


優唯「えへへ。私じゃなくて、またたびが新聞を読みたいと言ったので……私は絵本読んでました……」


紗理奈「あら、それでも字には触れているのね。偉いわ。そこから、徐々に文字が多いものに移行していけば今は優唯が難しいって思ってる本もすらすら読めるようになるわ」


優唯「私も紗理奈さんみたいに難しい本も読んで理解できるようになりたいですー」


紗理奈「絵だって、情報を理解するのに役立つ媒体よ。色々な本を手に取って読んでみて」


優唯「はーい!」


ガオル「そういえば、優唯、またたび。この前の初仕事良い仕事っぷりだったな」


優唯「紗理奈さん、ガオル、いらっしゃいましたっけ?」


ガオル「ははは、実は修行には参加していないが、優唯達の後をこっそりつけていたのだ」


紗理奈「ええ、優唯達はどう完遂するのか気になってね。素敵な愛を運んだわね。恋愛を踏み出すのは臆病になりがちなところ、背中を押してくれた存在はでかいわ。きっかけをつくったあなたは、あの2人しか共有できない特別な思い出を作った。2人の愛の器が生まれ、中身を埋めていくのはあの2人だけども優唯のきっかけを元に、愛が作られていくのよ、誇りに思いなさい」


優唯「えへへ、いつまでも仲良くしてくれたら嬉しいな」


紗理奈「まぁ、こればっかりは人の心とは裏腹だからわからないわね…悲しいけど、物を進化させることはできても自分達の心は現代でも昔でもそんなに変わらない……どころか、持続した思いやりの気持ちがなくなり、刹那的なものに変化しているような……」


優唯「そう、なのかな……?」


またたび「優唯ちゃんは、思いやりに溢れている人に恵まれてたんだニャ。でも、世の中良い人ばかりじゃないニャ。違いを受け入れない故に人々は争いを繰り返すニャ」


優唯「人を理解するのって難しいよね……私も人の気持ちに鈍感だから……でも、理解することを諦めてるわけじゃないよ!」


またたび「過去・現在・未来に対して、どのような経験をしてきたか、またどのように過ごしたいかがその人を形成しているからね。常にその人と時間を共にしているわけじゃないから……いや一緒の時間をいても、見ているものが違うことだって……」


優唯「私達も含めて生きとし生けるもの達の心が健やかなものになりますように、頑張らなきゃ!」


ジリリリリリリリリリリリリリリッ!!!!!!!


けたたましいほどに、ホーリーベルの音が鳴り響く。


天使達の所持しているエンジェルコールにもホーリーベルの動画が表示される通知機能が働いている。


ホーリーベル「ジケン! ジケン! ネコマタキシ、ニンゲンオソウ!!」


優唯「ホーリーベルってしゃべるんだ!?」


またたび「だから、優唯ちゃんは驚く観点が違うっ!! って噂してたら猫又騎士だよ!!」


優唯「行かなきゃ、猫又騎士さんはどんな気持ちで殺人・殺害をしているのか……そして、その気持ちを理解して止めなきゃ」


またたび「僕は優唯ちゃんのパートナーニャ。優唯ちゃんが行くなら僕も行く。そして、守るニャ!! 急ごう!!」


紗理奈「今回は、私達も一緒に修行受けるわ! ガオル行くわよ!!」


ガオル「もちろんだ、紗理奈。そして、優唯、またたび、助太刀するぞ」


優唯「紗理奈さん、ガオル、よろしくお願いします! あっ、凛ちゃん呼びにいかないと!」


その時、優唯のエンジェルコールにメールが受信された音が鳴る。


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From:凛ちゃん

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優唯~、見かけなかったからマナーと先に地上に行ったからね~。

あんたもさっさと来なさいよ!!

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優唯「ふぇ~、凛ちゃん私のこと置いていくなんて、ひど~い!」


紗理奈「まぁまぁ、急がないと他の天使達も調査に行っているのだから、ぐずぐずしてたら、成果を得られずに修行が終わってしまうでしょ? それに、今回は私達とも一緒に行きましょ?」


優唯「うぅ、そうですよね……では、紗理奈さん行きましょう。」


またたび「ガオルさん、頑張りましょう!」


ガオル「おう!」


2人の天使と2匹の天使は地上へ降りて行った。



一方、地獄では、


仕事をひと段落させた閻魔がなかなか目を覚まさない零を心配し、介抱を任せた煉に尋ねていた。


閻魔「おお、煉、零の具合はどうだ?」


煉「閻魔王様、零様はまだ眠っておられます。余程、発作がひどいのかと思われます。ただ……その、申し訳ありません。キラーが強引に超音波で眠らせてしまいまして、零様から自発的に眠られたわけではありません……」


キラー「おいおい、俺が超音波放たなきゃお前、零に襲われていたんだぞ? 感謝されこそすれ、文句言われる筋合いはないぜ!」


閻魔「ふむ、そうか……。零が理性を保てないほどになっていたとは……ならば今は零を眠らせておこう。睡眠欲を満たして、食欲をごまかすしかない。あとは、性欲も満たせればよいのだが……それは相手が必要だし……とにかく、煉、お前の仕事に戻って……ってどうした?」


煉「ぜ、零様のお相手……いらっしゃらないのでしたら……わ、私が……って私は何を申し上げているのでしょう……」


閻魔「煉は零のことを好いておるからな……気持ちを伝えてみてはどうだ?」


煉「そ、そんな。私は零様に気持ちを伝える資格などありませぬ……ただ、横にいられるだけで……私は幸せです」


キラー「普段から、死神としてあらゆるものを絶っちまう性分だから自分の恋心を想い人に告げようとする努力まで絶っちまうのかねぇ」


煉「わ、私は身の程をわきまえているだけよ!! 零様にはもっと素敵な人が……!! あぁ、やっぱり嫌! 零様に伴侶ができるなど!!」


キラー「零にひどくご執心ですこと~。でも、あいつは頭固いから、こんな近くにいる乙女の恋心に何世紀かけて気づくのやら?」


閻魔「報われるとよいな。とにかく、煉、零のこと感謝する。仕事に戻ってくれ」


煉「はっ、かしこまりました。キラー、引き続き零様の様子見ててちょうだい」


キラー「え~なんで、オレがあんな奴の面倒を……」


煉「キラー、零様を見ててくれたら、あなたの大好物の乙女の血をあげるわ」


キラー「おぉ!! 喜んでやるぜ!! へへへぇ、久しぶりのご馳走だぁ~。んじゃあ、零の部屋行ってくるぜ!!」


煉「頼んだわよ!!」


煉は仕事に戻り、キラーも零の部屋へと向かう。


零の部屋の扉の前で、足をのばしノックをする。


コンコン


返事はないが、鍵はかけられていない。


それに、まだ超音波で気絶、もとい眠っているだろう。


そう思い、遠慮などいらぬと勢いよく扉を蹴破って、入室した。


キラー「零! 看病しにきてやったぜ! おっとすまねぇ、まだ眠ってるよなぁ。つい、病人を看てるだけという楽な仕事で……って、いねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!」


ベッドは蛻の殻であった。


部屋中を飛び回り、姿を隠していないか確認するももちろん、どこにもいなかった。


そもそも、身を潜める必要もない。


キラーは翼をはためかせ、煉のところへ向かう。


キラー「レ~~~~~~~ン!! 大変だぁ!!!」


煉「キラー、今は仕事中よ、私語を慎むこと。大きい声を出さない!」


キラー「品行方正ぶってる場合じゃねえって。零が部屋にいないんだよ!!!」


煉「何ですって!? 閻魔王様に報告しないと!!」


煉とキラーは閻魔の仕事場である審判の部屋へ急いだ。



閻魔はジャッジ・ガベルを叩きつけ、1つの魂の最期を言い渡した。


閻魔「判定、黒! 汝は様々な動物を殺し、さらにその衝動を抑えられず親族や友人までも蝕んだ。その罪の重さは万死に値する。」


罪人「オッオレは死ぬのか……今度こそ……無になるのか……?」


閻魔の死刑宣告が罪人の心に響き渡る。


生前に行った罪の重さが走馬灯のように巡る。


重量を伴った罪の映像はスローモーションで罪人の心に纏わりつく。


引きちぎろうとも、もがけども、さらに絡みつき離れない。


鈍い絶望は逃げられそうだと希望を抱かせるが、


その希望を打ち砕いた上でじわじわと迫り息の根を止める。


のしかかってくる、もう後戻りのできない生前。


言い逃れる機会さえないのか。


地獄の裁判では、被告の弁護者はいない。


死ぬ直前にも見たというのに。なぜ、また……?


いや、同じ状況にあるからだ。


今度は辿りつく場所のない死。


堕ち続けるのか、昇り続けるのか。


どこに向かうのか。


向かう個体も幽体もない。


この恐怖を感じる体はなくなる。


熱を持たない体に走る寒気。


人間味を失っていた体は疾うに凍てついている。


自分の周りの熱を奪っていた気化熱な存在が


今度は熱を求めている。


だが、近づけば周りは蒸発してすり抜ける。


氷の中に埋まってしまった心の飢餓者は


永久に愛にありつけることはできない。


もう、人間に戻れないのか……


閻魔「今頃になって、自らの犯した罪への反省がされたか。お前は、もう一度、新たな命で人間としてやり直しができる。そのためには試練があるが、お前はやり直したいという意欲があるか」


氷に一滴、流れ始めた。


それは、罪人の涙であった。もう、枯れてしまっていたと思われた感情は湧き出るように流れる。


氷は溶け始める。かじかむ唇からは嗚咽まじりの生きたい欲求。


罪人「私は、奪ってしまった人の生まで全うしまた再びを死を迎えたとき、その人達の待つ場所へ行きたい。そして、直接謝罪をしたい。今度は、自分の求めるものを受けたいだけではなく、与えられる存在にもなりたい……です。お願いします、閻魔様。私にやり直しを……ください」


罪人は深く身を閻魔に向けて下げた。


閻魔はそれを見て深く感心をした。


閻魔「よかろう。試練は合格だ。発した言葉を刻み忘れるな」


罪人「ありがとうございます。次の生でもこの記憶を思い出したいです」


閻魔「姿を変えるのは、個体だけだ。幽体は何も変わってはいない。また、死を迎えたら思い出すだろう。次の生を楽しむがよい。その生の記憶もまたお前の幽体に記憶される」


罪人「はい」


閻魔は近くに控えていた鬼達に罪人を転生させる場へ連れていくよう指示した。


罪人の氷は残っているが、地上にいけば溶かしてくれる存在に会えるだろう。


もしかしたら、同じように凍てついている人の氷を自ら発する熱で溶かす手伝いをするかもしれない。


閻魔は仕事がひと段落し、茶をすする。


そこへ、煉とキラーが入室してくる。


煉「閻魔王様、非常事態です!!」


閻魔「何だ、煉。たった今仕事が落ち着いたところなのに。お前も茶を飲むか?」


煉「お茶を嗜んでいる場合ではありません。零様がお部屋にいらっしゃらないのです!」


閻魔「何だと!? むむむ…、私はこの茶を飲んでからまた仕事に戻らねばならない。よし、ならば見習いの子鬼兄弟を遣わせよう」


閻魔は黒電話の受話器をとり、ダイヤルを回し、鬼の教育機関にかける。


閻魔「もしもし、閻魔だ。オーガ、オニガロウをこちらに寄越してくれ」


閻魔が受話器を置いて数分後、鬼の兄弟達が入室する。


オーガ「閻魔王様、ただいま参上致しました」


オニガロウ「閻魔王様! オニガロウも参上しましたー!」


閻魔「これから、お前たちには煉と共に零を探しに行ってもらう。零救出作戦開始だ!」


煉「零様は誰かに捕らわれているのでしょうか?」


閻魔「細かいことは気にするな。……と言いたいところだが、もしかしたらその可能性も無きにしも非ずかな」


煉「えっ、まさか……零様を狙った女が……」


閻魔「女、かはわからないが。いや、恋愛沙汰でもないとは思うが……地上では猫又騎士が暴れているのだ。噂によれば、その鎧は呪われており生物の血を浴び続け常に血を欲する衝動に駆られているとのことだ。血の臭いのする零をさらいに来たかもしれんな」


煉「なっ、地獄の門番達を倒したというですか!?」


閻魔「奴の力は未知数だからなぁ……。まぁ、まず地獄に来たかもわからぬのだし。とにかく気をつけてくれ。零を食らう気かもしれぬし」


煉「ぜ、零様が、どごぞの馬の骨ともわからない奴に……く、食われる……」


閻魔「というわけで、キラー、オーガ、オニガロウ。煉の気が狂わないうちに、零を見つけ出してくれ」


キラー「はぁ、面倒くせぇ相棒だぜ。オーガ、オニガロウ。行くぜ。閻魔王様、行ってきます」


オーガ&オニガロウ「行って参ります」


煉「ゼロサマ……ゼロサマ……」


閻魔「ああ、行ってこい」


キラーはため息をつき、煉に耳元で囁く。


キラー「そんな風にいじけてたって零はお前を見ない。むしろ、こんな奴だからこそ、他に目移りするのかもな。こんな顔で迎えられたからって、他の女の魅力を求めてまたふらふらどっかに行っちまうかもな」


キラーの言葉が煉の反骨精神を炊きつける。


煉「そうね! ありがとう、キラー。閻魔王様、行って参ります」


閻魔「おお、煉がいつもの状態に戻ったな。頼むぞ!」


地獄側でも、煉&&キラー、それにお供するオーガ&オニガロウが地上へ向かう。



さらに一方、地上どこかでは……


零「グォォォォォォッ……アァ、ガァ……血……血ガ欲シイ……乙女ノ血が……」


零の咆哮が辺りに響き渡る。


しかし、幸いなことに周囲には誰もいなかった


零「我ガ空腹ヲ満タス……最高ノ血ヨ……」



戻って、天使達は、宇宙圏を超え、地球の空辺りを降下してきている。


優唯「紗理奈さん、猫又騎士さんのこと知っていますか?」


紗理奈「そうね、昔から猫又の姿をかたどっていたかはわからないけど、呪われた鎧の話は聞いたことあるわ」


優唯「呪い?」


紗理奈「ええ、生物の返り血を浴び続けた鎧が妖怪化し、血を欲しがる鎧になったとね。その鎧を纏ったものは殺戮衝動が起きてしまうの。つまり、鎧に養分を運ぶための操り人形になっちゃうわけね」


優唯「恐ろしい鎧なんですね」


紗理奈「そうね、今回の仕事で死者が増えなきゃいいけども……」


優唯「私達がしっかり、地上のみんなを守らなきゃ!! そうだ、凛ちゃんに連絡しなきゃ!」


優唯はエンジェルコールを取り出し、凛に電話をかける。


優唯「もしもし、凛ちゃん?」


凛「もしもし、地上ついたの? どこにいる?」


優唯「え、どこにいるって言われてもわからないよ~」


凛「私も優唯より地上へでているとはいえ、地球上の地形を把握しているわけではないの、どうすれば……」


紗理奈「優唯、凛にGPS機能を使いなさいと伝えて」


優唯「ほぇ? わかりました。凛ちゃん、紗理奈さんがじーぴーえす機能を使ってだって」


凛「わかったわ。じゃ、いったん切るね。ばいばい」


優唯「ばいばい」


優唯はエンジェルコールを切り、ポケットにしまう。


優唯「紗理奈さん、じーぴーえすって何ですか?」


紗理奈「『Global Poditioning System《グローバル ポジショニング システム》』の略だったかしら。人口衛星にリアルタイムで電波を送ったり、送られたりして特定の人物やものを探すことができるのよ。凛と優唯のエンジェルコールの電波を探って凛の位置を探してくれるわ」


優唯「そうなのですか! だから、こんなに広い地上でも探し出すことができるんだぁ~」


紗理奈「そうそう、さっき人工衛星が……って話をしたけど、それは人間界の話であって私達にはグローという仲介天使が電波を送受信してくれるの」


優唯「さすが、紗理奈さん! 物知り~!!」


優唯は羨望の眼差しで紗理奈を見つめる。


そんな、優唯の目に苦笑いで


紗理奈「あら、優唯。あなたも先生の授業を聞いていればこれくらい知っているはずよ?」


またたび「優唯ちゃん、授業中寝てたから知らないと思うニャー」


優唯「お恥ずかしながら……寝てました」


紗理奈「やっぱりね、そうだと思ったわ」


ガオル「ははは、前日に夜更かしでもしていたか?」


またたび「優唯ちゃん、早く寝てるけど授業中起きてられないんだよね」


優唯「先生の声が子守歌みたいで……」


凛が来る束の間、優唯の睡眠事情で盛り上がっていた。


ところかわって、凛とマナーのいる場所にて、


凛はエンジェルコールのGPS機能を呼び出した


アプリの画面はnow loadingの文字がしばらく続いている。


~♫


起動音が流れ、画面から天使のホログラムが現れる。


目のところはサーチ同様のグラスをかけ、耳のとこは太陽光パネルが生えており


頭からは電波を送受信するアンテナが生えていた。


グロー「Hello! 僕はGPS機能を任されている『グロー』と申します。よろしくお願いします」


凛「ええ、よろしく。グロー、唯と紗理奈さんの現在位置を教えて」


グロー「かしこまりました。しばらくお待ちください……でました。では、これから僕の案内する方向へ飛んでください」


凛「ええ、頼んだわよ!」


凛とマナーはグローの指示通り、唯達のところへ急ぐ。


優唯「紗理奈さん、動かないで待っていた方が良いですか?」


紗理奈「うーん、そうね。もう少しで来そうだし」


優唯「えっ、何でわかるんですか?」


紗理奈は自分のエンジェルコールを優唯に見せて笑う。


紗理奈「まだまだ、アプリを使いこなせてないようね。優唯のエンジェルコールの中にもインストールされているはずだから確認してみなさい」


優唯「本当だ。覚えていかないと……あ、凛ちゃん、もう近くに!」


紗理奈「凛! こっちよ」


紗理奈が凛を手招く。


凛「優唯、紗理奈さん、猫又騎士は?」


紗理奈「いいえ、私達も情報がつかめてないわ」


優唯「凛ちゃん達、無事でよかった!」


凛「私達なら猫又騎士に遅れをとらないわ!」


マナー「またまた。さっきまで不安がってたじゃん?『私達でどうにかできるかしら……いや、そんなことより……優唯、優唯よ! 優唯に何かあったら……』って」


凛「ちょっとぉぉ!! マナーァァァ!!!」


凛は顔を赤くし、マナーの口を塞ごうとする。


マナーはそれをひらりとかわす。


~♫


優唯のエンジェルコールから着信音が鳴り出した。


ミカエルからの電話であった。


優唯「もしもし、優唯です」


ミカエル「あ、優唯。ミカエルです。今、その近辺で猫又騎士がいたとの情報が入ったわ。大至急、そちらに向かってちょうだい。グローに位置情報を渡しておいたから、案内してもらって」


優唯「はい! ただちに向かいます!」


優唯は通話を切り、GPSを立ち上げる。


グロー「皆さん、目標までこのまま真っすぐです!」


グローの案内通りに向かっている天使達の前に黒い影が過ぎる。


優唯「グロー君、今のが猫又騎士さん!?」


グロー「いえ、あれは波長的に地獄の民ですね。死神? 悪魔……?」


紗理奈「誰かわかったわ。あいつも放っておいたら不味い者ね。いったん、あいつを追うわよ!」


天使達は黒い影を逃さないように追う。


なかなか縮まらない距離に痺れを切らし


凛「いいかげん、止まりなさい。ライトニング・アロー!!」


聖なる光を矢に纏わせ相手に向かって射る。


???「グハァ!!」


黒い影に矢は突き刺さり動きが止まった。


影を覆っていたマントは解かれていき姿が現れる。


紗理奈「やはり、死神悪魔の零だったわね」


零は天使達に向き合い、苛立ちを露わにした。


零「邪魔ヲ……スルナ!! 天使共!!! ナイトメア・マスカレード」


邪悪な気を纏った蝙蝠達が天使達を襲う。


天使達は光の防御壁で受け止める。


紗理奈「くっ、あんたがなぜ地上にいるのかしら?」


零「血ノ臭イガスル者を追イカケテイタノダ……地獄ニモ漂ヨッテキタゾ。アノ者カラ発セラレル様々ナ生物ノ血ノ臭イガナ。久シブリノ御馳走ダ、渡サヌゾ!!」


零の左手から鋭利な爪が伸び、近くにいた紗理奈に襲い掛かる。


零「貴様ナド我ガ爪で十分ダ!」


紗理奈「ガオル!!」


ガオル「おう、ホーリークロウ!!」


ガオルが紗理奈の前に躍り出て、聖なる鉤爪で守る。


零「小癪ナ……。ムッ……」


零は鼻をひくつかす。


零「奴ノ臭イガ薄レテイク……。今回ハ見逃ス。ダガアノ猫又騎士ハ譲ラン、失セロ!」


零はガオルの爪を払い退け、目的の方向へ飛んで行った。


紗理奈「猫又騎士ですって!? ……そういえば、グローの案内と同じ方向へ向かっているわ。みんな、再び零を追うわよ!」


天使達「了解!」


天使達は零の後に続く。


紗理奈「あ、ガオル。さっきはありがとう。咄嗟にでてきてくれたおかげで身を裂かれずに済んだわ」


ガオル「パートナーを助けるのは我の役目だ。当然のことをしたまでだ」


紗理奈「ええ、頼りになるパートナーで嬉しいわ」


零「グゥゥゥ……ゴォォォォォォウ!!!!!!!!!」


零は咆哮し、飛ぶ速さが加速する。


凛「くっ、早くなったわ。猫又騎士が近いのかしら。急がなくちゃ!」


天使達も加速する。


……のだが


優唯「みんなー待ってー!」


1天使、波に乗れていなかった。


凛「ああ、もう! 世話が焼ける!!」


凛は減速し、優唯の手を掴む。


凛「しっかり、掴まってなさいよ! 離したら優唯のこと置いていくんだからね!!」


優唯「凛ちゃん……ありがとう!」


凛「~~~~~///// 行くわよ!!」


凛は赤くなった顔を見られないようにして顔を正面に向け、加速する。


優唯も凛に引っ張られ加速していく。


マナー「ふーん。離れるねぇ。あの繋ぎ方ならなかなか離れないだろうて。ツンデレに百合なんて、ああ、最高!! 顔を真っ赤にしてる凛たんにあどけない笑顔の優唯ちゃん……。くはぁ! 乙!!」


いわゆる恋人繋ぎをしている凛と優唯の後を続くマナーは、ニヤニヤしながらをそっとこう呟きを飛んでいたのだった。


零と天使達が通った後の木々は激しく揺れた。


周辺の人々は突風でも吹いたかと思ったが、風が当たる感覚はない。


不思議に思い、木々をしばらく見つめていたのだった。



天使達が零に追いついた頃、


零は目の前の騎士と睨み合っていた。


猫又騎士「ほぉ。我に追いつくとは流石であるな。 悪魔殿。む……。我と同様、様々な生物の血の臭いがするな。吸血鬼でもあるのか。混血か。さしずめ吸血悪魔というところか」


零「ハハハハハ……俺ノ父ハオ前ノ言ウ通リ吸血悪魔ダ。シカシ、母ハ死神ダ。亜種トハイエ吸血トイウ特性ヲ持ツ悪魔ト純粋ナ死神カラ生マレタ俺ハ死神悪魔ダ。貴様ノ首ヲ獲リニ来タ。コノ鎌デナ。切リ裂イタ後ニ、ユックリ血ヲ味ワッテヤル」


猫又騎士「ふむ……、そうであったか。なら訂正しなくてはな。死神悪魔殿。しかしだな。その言葉そっくりそのまま返させていただこう! 死神悪魔の血とはいったいどのような味をしているのだろうな。鎧が血を求めているぞ!!」


零「貴様ニヤル血ハ一滴モナイ! コノ鎌ノ錆ニシテクレルワ!!!」


猫又騎士「我は、ニャルラト・ニャイト。猫又騎士の誇りにかけてお主の血をいただく!! いざ参る!!」


零の鎌とニャイトの剣が交叉する。


金属音の鈍い音が周囲に鳴り響く。


ニャイト「なかなかの手練れであるな」


零「オ前コソ、シブトイ奴ダ」


紗理奈「始まってしまったわね。まさか零が来るとは誤算だわ。猫又騎士を導かなければ地獄に連れていかれるわ。みんな、零を止めるわよ!」


凛「マナー! 行くわよ!!」


マナー「いつでも、全裸待機万全だぜ!!」


凛「ぶっ! あんたが言うと言葉通りね!!」


噴き出した後、凛はエンジェルコールを取り出し、ボタンを打ち始めた。


そして、マナーに向けてエンジェルコールを翳した。


マナーはエンジェルコールの中に吸い込まれていく。


再び、高速タイピングでボタンを打っていく。


マナーを変身させるプログラミングをしているのだ。


そして、空に向けてエンジェルコールを翳す。


光と共にマナーは現れた。


ムキムキなマッチョアスキーアートとして。


(´・ω・`)   n  <(俺に任せろ)

⌒`γ´⌒`ヽ( E)

( .人 .人 γ ノ

ミ(こノこノ `ー´

)にノこ(




    /⌒ヽ 

   / ^ω^ヽ  <(ヒドイ目にあうお)

 _ノ ヽ ノ \_

`/ `/ ⌒Y⌒ Y ヽ

(  (三ヽ人  /  |

| ノ⌒\  ̄ ̄ヽ  ノ

ヽ___>、___/

   |( 王 ノ〈

   /ミ`ー―彡ヽ

  / ヽ_/  |

  |  /  ノノ



ボディービルダーのごとくポーズを決め


マナー「俺をこの姿にさせるとはな……。相当骨のある奴のようだな……」


凛「いや、あんた。こうしなきゃ弱いじゃない。この姿でやっとマシな戦力なるかぐらいよ」


マナー「……見掛け倒しでサーセン(´・ω・`)」


凛「あんたのコピー、たくさんペーストするから敵を攪乱しなさい。攻撃力とかあんたは当てにならないし」


マナー「……本当サーセン(´;ω;`)」


凛は高速タイピングを繰り返し、マナーのコピーを現実世界にペーストしていく。


マナー「「「「「わはははは!!! いくぞ、零!!」」」」」


凛「うるさい! だまってやれ!!」


コピー達もオリジナルとまったく同じに動くことができる。


喋るタイミングも手足を動かすタイミングも。


ゆえに、声量がサラウンド並みになるのだ。


凛は、マナーのコピーを99体ペーストした。


100体のマナー達はニャイトと零を囲む。


マナー「「「「「鬼さん達、本物の俺はどれか当ててご覧なさい! それまで~、勝負は、お・あ・ず・け・よ♡」」」」」


バチーン!!


マッチョのウィンクが猫又騎士と死神悪魔に贈られた。


おまけに投げキッスの追加。


気持ち悪さが抜群の組み合わせである。


贈られた2者は血の気が引いた。


マナー「「「「「今よ~、アンタは俺が貰っちゃうんだからね~♡」」」」」


100のマナー達は半分に分かれ、ニャイトと零それぞれに飛びついた。


ニャイト「な、何だと!?」


ニャイトはマナー達に捕らえられた。


凛「みんな、マナーが暴走しているけど、チャンスよ!!クロス……」


零「ナイトメア・マスカレード」


邪悪な気を纏った蝙蝠達が放たれる。


マナー「「「「「「イヤ~~ン」」」」」」


50体のマナーは0と1に還元され、エンジェルコールに吸い込まれていく。


全てコピーであったようだ。


零「小賢シイ真似ヲシヤガル。アレデ俺ヲ拘束シテイタトデモ言ウノカ。ダガ、アノ気持チ悪サハ応エタガナ……」


零は、筋肉の塊が自分に襲い掛かろうとした瞬間を思い出し身震いが起こる。


紗理奈「両方は捕らえられなかったわね。でも仕方ない、このまま全員、総攻撃!!」


優唯&凛「「ライトニング・アロー!!」」


またたび・ガオル「ホーリービーム!!」


天使は聖なる光を纏った矢を、パートナー達は口から聖なる光を放つ。


しかし、


零「ヌンッ!!」


零は鎌を振り下ろし、闇の旋風を巻き起こす。


天使達の攻撃は掻き消された。


紗理奈「躱されるのは計算の内よ。でもこれは避けられるかしら?クロス・シャワー!」


無数の十字架が放たれる。


零「……!?」


零はマントで身を包み防御の体制を取るが…


ドガーン!!


爆発が起こった。




しかし、零を死神が庇っており、その周りに小さな死神と蝙蝠、蝙蝠、鬼2匹が闇の防御壁を展開していた。


煉「零様……。ご無事でしょうか?」


零「レ……ン?」


零に覆い被さっていたのは煉であった。


煉「遅くなってしまい申し訳ございません。吸血鬼状態の零様の身体能力になかなか敵わず。何度も見失ってしまいました……」


零「……ドケ、煉。アノ獲物ハ俺ノダ」


煉「しかし、零様。お体に障ります。早く、お部屋で休んでくださいませ」


零「満タサレレバ、コノ体ハ回復スル……。先ニ帰レ。俺ハアノ猫又騎士ヲ食ラウ。邪魔ヲスルナラ、先ニオ前ヲ食ラウゾ、煉」


煉「えっ……!? 零様になら私……全てを捧げても……」


そこへ、待ったをかける小さな死神。


???「どきな。煉。零は俺に任せろ。うぉらぁっ!!」


小さな死神は零に鎌を振り翳す。


零はその場に倒れた。煉はあわてて零を受け止める。


煉「……!? ちょっとアーク! いくら零様のパートナーだからって、刃を向けるとはどういうこと!!」


アーク「お前は未熟だから見えねぇかもしれないが、俺には零を蝕む糸が見えるんだよ!」


煉「何ですって!?」


そう、先程アークが零を鎌で斬りつけたのは零に結ばれていた糸を断ち切ったためである。


アーク「なんだって、いつも発作の時にこの糸が見えやがるんだ?」


アークは頭を掻く。先程までは、心臓から黒い糸が神経細胞のように全身に巡っており零を操っているように見えた。


もしかしたら、誰かに魔術みたいなものをかけられているかもしれない。


一体誰が、零に悪さをさせているのだ。


アーク「煉。零のこと頼む。介抱してやってくれ。目を覚ましたら元に戻っているだろう」


煉「わかったわ。でも、アーク。何で零様のお傍についていないのよ。あなた、パートナーでしょう?」


アーク「零が発作で死神の仕事できねぇ時は俺がいつも代わってやってるんだ。だけど、閻魔王に零が暴走しているって聞いたから駆けつけた。ったく、探すのに手間取ったわ、天使達からは攻撃されているわで。面倒なことに巻き込まれたな」


煉「零様を見つけたと思い、天使達に狙われてて無我夢中でお守りしていたらあなたがいて。そういうことだったのね。発作の時の糸、初めて知ったわ。確かに私には糸が見えていないわ。まだまだ一人前を名乗れないわね。その、さっきは責めてしまってごめんなさい」


アーク「いいってことよ。主人を守るのは使い魔の使命だ。さて、零を部屋に運んだら、ほったらかしてきた仕事に戻んねえと」


煉「待って。閻魔王様から、あそこにいる猫又騎士を連れてこいと先程連絡があったの。裁判にかけるからだとか。私はこの命令を完遂するまで帰れないし。どうしよう……」


防御壁を展開しながら、オーガが煉に向き合い


オーガ「煉様、俺とオニガロウにお任せを。煉様は零様の介抱に集中してくださいませ。そして、貴女のパートナーのキラーさんを拝借したい」


オニガロウも煉に向き合い


オニガロウ「オイラに任せろ! 煉様!!」


煉「いいわよ。扱き使っちゃって。ええ、頼りにしてるわ。オニガロウ」


オニガロウ「えへへ~煉様に頼りにされた~」


キラー「俺の意思の尊重は!?」


煉「ないわよ。新人見るのは先輩の役目よ。頼んだわよ。キラー先輩?」


煉はキラーと鬼の兄弟、オーガとオニガロウに任務を頼み、零を抱え、アークと共に地獄に戻る闇を展開しその中に溶け込んでいった。



紗理奈「くっ、零を逃してしまったわ。まさか、私のクロス・シャワーを消されるとは……。まぁ、いいわ。地上の人々に危害を加える心配がなくなったものね。凛、マナーに拘束を緩めるように言ってくれる?」


凛「それが……マナー、絡み自重しなさい!」


マナー「ニャイト様~好き好き~♡」


凛は飽きれてため息をつく。


凛「はぁ……、またでた。ガチムチ兄貴男に惚れやすくなるの呪い。このアスキーアート使うといつもこうなるのよね……」


紗理奈「このままでは埒が明かないわね。マナーのコピー消すから消えた後、全員、猫又騎士を確保するのよ。トゥルース・ライト!」


眩い真実を導き出す光をマナーに照らす。


マナー「まぶしーわぁ~ん」


マナーのコピーは消え、オリジナルのマナーは元に戻った。


マナー「はれ? 俺は一体何してたんだ?」


凛「BL 《ボーイズラブ》に目覚めてた」


マナー「なんと! 禁断の領域に!? いやん、どうしましょ?」


凛「まだ、呪い残ってる……? てか、恋愛に禁断も何もないでしょ。愛し合っていればいいのよ。好きにすれば?」


マナー「いや、俺、彼女欲しいし(キッパリ)」


凛「あっそ。ギャルゲーで満足してるのかと思ってたわ」


マナー「技術がいくら進化しようと!! 生身の彼女が欲しいでっす!!」


紗理奈「凛! マナー! 茶番してないでさっさと来なさい!」


マナー「紗理奈ちゃん! 俺は至って俺の恋愛主義を凛たんに誤解されないように証明していただけなんだ!! 真面目だ!!」


紗理奈「いいから来い!!」


凛「紗理奈さんがあんなに荒げた口調で言うってことは……私達、後で説教されるわね……」


マナー「やっちまったぜ。震え《ガクブル》が止まらない」


優唯「大変、凛ちゃん。マナーの愛が強すぎて猫又騎士さん、気絶しちゃっているよ!」


マナー「あちゃー、俺、A 《キス》はしちゃったかも?」


マナーが猫又騎士の生存確認をしようと手を伸ばすと……


ニャイト「……は!? 我は……、くっ来るなー! 猫又達よ!!」


猫又「「「「「ウニャウニャ~!!」」」」」


ニャイトのマントの中に隠れていた猫又達が天使達に飛び掛かる。


紗理奈「みんな、散らばって!」


天使達は散らばり臨機体制となる。


マナーは顔を引っ掻かれていた。


ニャイトとの距離が近すぎて逃げ切れなかったのだ。


ニャイト「先程の2次元殿の気色悪さには応えたぞ。耐えきれず気を失ってしまった。我の忍耐力もまだまだである」


マナー「いちちち。あー、俺はどうせ3次元上現実世界でも2次元ですよーだ。平面ですよーだ」


マナーは顔に張り付いていた猫又をはたき落としニャイトに突っかかる。


凛「何、いじけてんのよ」


マナー「3次元上で3次元になれなければ俺はいつまでも雑魚のままだ。0と1以外のもので構成されたい」


凛「……天使ランクが上がればたぶん可能じゃないかしら? 上のランクの天使様は姿が変化されているから」


マナー「そういや、そうだったな! おい騎士野郎!! その内、3次元になってやるから!!」


ニャイト「フフフ……、面白いことをおっしゃる。お主がそれまで生きている保障はないぞ。やれ、猫又達。我が力を分けた分身達よ」


猫又「「「「「ウニャアアアアアア!!!!!!」」」」」」


紗理奈「凛、マナー、離れて!!」


猫又達が天使達に飛び掛かる。


怒りの爪を剥き出しにして。


マナー「フハハハァ! 残念ながら俺らに生きている概念なんざないぜ! 受けてみろ!! 2次元の本気を!! 君のことをみっくみくにしてやんよ~♪」


マナーから無数の拳が繰り出される。


凛(著作権大丈夫かしら……ジャスラッ……)「ってそんなことより、マナーその調子よ! ライトニング・アロー!!」


凛もマナーに近づく猫又を牽制すべく、聖なる光を纏う矢を放つ。


マナーがどのようなアスキーアート状態かは、初音ミクのみっくみくにしてあげる~してやんよ~を再生して背景を見てみよう!


ミクに夢中になってたら気づかないぞ!


説明口調の間に猫又達はみっくみくにされた(つまりKO)


マナー(凛たんの前では2次元であるふりをしてなきゃダメなんだ……)


マナーは猫又達を追い払い一息をつく。


この体にだいぶ慣れてきたが、元の体に比べたらまだまだ扱いずらい。


凛「痛っ!」


凛は猫又に引っ掻かれていた。


マナー「凛たん!」


天使であるため流血はしないが、傷口は抉られた痕ができている。


ニャイト「我は呪いの力を手に入れたのだ。例え地上にいようとも天使殿達には干渉できる。確かに生きてはいないな。だが、現に精神が形成している体を消すことはできるのだ。我も死神の力を手に入れたのと同然だ」


紗理奈「やはりね、あなたから感じる禍々しい邪悪な気は私達に危害を及ぼすと思っていたわ」


ニャイト「眼鏡の天使殿は察しが良い故、仲間に声かけをしていたのだろう。仲間想いであるな。しかし、わかったところで我を止められるか。そこの天使を切り裂け猫又達!!」


凛「ぐっ……」


凛は立ち上がろうにも力が振り絞れない。膝をつくのが精いっぱいである。


マナー「よくも、凛たんを!!」


マナーはニャイトに立ち向かう。


ニャイト「そこの一本結びの天使殿はお主が強化されるから潰す必要がある」


マナー「だが、俺のしてやんよ攻撃が猫又に効いたんだ。アスキーアートにならずとも凛たんを守るぜ! 凛たん、とりあえず猫又に反撃するんだ!!」


凛「だめよ! さっき優唯が言っていたわ。『あの子達はきっと操られている猫さんだよ、猫さんの匂いがする』と。あの猫又達はこの地上に生きている猫なのよ! あの猫又騎士の力によって姿を変えられているのよ! 生きとし生けるものを傷つける行為など天使の名折れだわ!! 私にはできない!!」


マナーはまわりを見渡すと優唯も凛と同じように猫又達の攻撃に耐えていた。


紗理奈、またたび、ガオルは攻撃を避けていた。


凛「見たでしょ。みんなも同じなのよ。優唯と私は……ぐっ! ……不器用だから避けられないけどっ……! ……みんなだって手を出してないわっ!」


凛は引っ掻かれながらも続ける。


凛「……あんたも自分の身を守る程度の反撃をしなさい。弱いん……だから。私を……守るなんて、言わなくていいから……」


凛たんは嘘をついてる。凛たんの実力なら猫又の攻撃くらい避けられる。


大好きな優唯ちゃんが猫又達の攻撃を受けているからだ。


優唯ちゃんはおそらく、猫又達の攻撃に込められている想いを汲み取るために攻撃を受けているのだ。


凛たんもそれに倣い同じようにしている。


だけど……


マナー「何だよ……何だってんだよ!! 凛たんだって傷ついているじゃないか!! そりゃあ生きてはいないけれども! 精神の体は傷ついているじゃないか!! なら、いい。汚れ役をやってやる! 凛たんがこれ以上傷つくところは見たくないんだよ!」



突然、マナーの体が光りだす。


その光に呼応するように凛のエンジェルコールが宙に浮き光りだす。


凛「私のエンジェルコールが独りでに……浮いた?」


エンジェルコールから眩い光が解き放たれ、マナーはその光を受ける。


マナー「俺の熱意で、世界救ってやんよ!!」


マナー自身から、目を眩ませる輝きが放たれる。


天使も、騎士も、猫又も、堪えられず目を覆う。



やがて、光が弱まり、薄く目を開いていく。


そこには、マッチョのアスキーアートのマナーがいた。


                         _,..、

                     , -‐-<¨¨` . `ヽ、

                   ノ-'  ´ Y´ /  ,} }

              ∧_∧ /ヽ、   ノノヽ、' __|、__ <(翼をください)

              .(・ω・` )! } ≫ーィ''′ ,/__ _ ヽ.

              /リ.`ニニ´〈,リ_,/ヽ ,ノ   ヽゞιソソノ

         /},/,. ''、_ノ,.)゙ヾ-'    !       

          / ,''′  ,‐''Y   ',   i′     

           | {    .iリ,     h_.,ノ        

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          ,. -'}、._ ,ノヘ≦、__彡レ´ ゙ヽ、``ヽ、

       /´/´{ { `ヽ }ー--イ´      } ゙ ヽ

     / ノ '"´〉ヽ.ィ. /、__ ノ.'''´¨`、  ,...ハ、_ノ

   ,/ ,.イ´   ト _,、 'ヽ  ̄ ` ーイ´゙Y,   y.}

  /,/ ,,'    ,.入     リ     {、 ヽ  ノ ノ

 ノ ' i′  / ノ ヽ-、.ノ!         ヽ-|ー‐''"

 ! ,リ ,.. ィ''Y'´   ',  ヽ‐.ァ    ノ  i

 `ー'"´ ./′}     /,} . {       i′ リ

      !__,ノ    /n.、i´',i       | /

              `υ'J `


凛「マ、マナー。マッチョアスキーアートになってるし……。だけど、翼が記号じゃなくて天使の翼が生えている!?」


某掲示板サイトからコピペしてきたアスキーアートに天使の翼が生えたと思ってお楽しみください。


マナー「力が湧き上がる。俺は弱いし、不器用だ。だからこの未知の力を制御できず傷つけてしまうかもしれない。けどよ。自分テメェがやったことに自分テメェで責任を取り始末すると誓う! 痛いだろうな……。許せ……。俺の拳はお前達を目覚めさせるために。そして、譲れないものに懸けて守るために揮うんだぁ!!」


言うが否や、マナーは瞬間移動し凛に攻撃している猫又達に拳を喰らわす。


猫又「「「「「ウニャア!!」」」」」


次々に倒れていく猫又達。


だが、背後から攻める猫又達がいた。


猫又「「「「「ウニャアアアアアア!!!!!!」」」」」


凛「マナー、後ろーーー!!!」


マナーは凛の呼びかけに即座に反応し、後ろから攻めてきた猫又達に拳をめり込ませる。


マナー「凛、大丈夫か?」


凛「え、ええ。……あんた本当にマナーなの?」


マナー「俺は俺さ。凛。安静にしてろよ。みんなも助けてくる!!」


凛(……ちょっと、かっこいいじゃない)


口にするのが恥ずかしい言葉を心の中でそっと呟いた。


マナー「優唯ちゃん、今いくぞ!」


優唯に纏わりついている猫又達を拳を揮い一掃する。


優唯「はぁ……はぁ……。ありがとうマナー。私、ヘトヘトになっちゃったよ」


マナー「そりゃ、すべてを受け入れていたからなぁ。よく耐えたな。優唯ちゃんも安静にしてろよ。すぐ、終わらせるから」


またたび、紗理奈ちゃん、ガオルさんはそれぞれ距離がある。


それぞれのところに行って対応していたら、誰かしらが攻撃を受けているかもしれない。


みんなの疲労は溜まってきている。耐えてくれなんて頼めない。


もう一気にやるしかない。


マナー「みんなぁ! 思い切り空へ飛べぇ!!」


天使達は反応し翼を広げ空へ飛ぶ。


マナーは拳を振り翳し、地面に勢いよく突き刺す。


突き刺した場所から波動が生まれ、荒波のように流れていく。


ニャイトも異変に気付き高く飛び立つ。


しかし、猫又達はなす術もなく、波動を喰らう。


立っている猫又は一匹もいなかった。


マナー「最後の仕上げぇ~!」


両腕に力瘤をつくるポーズを取り気合を入れる。


マナーの体は金色 《こんじき》に染まっていく。


マナー「いっけえぇぇぇぇ!!!!!」


拳を空に突き上げる。


溜めていた力が放出され、金色の光の波紋が広がる。


この光に包まれた猫又達は傷が癒えてすーすーと寝息をたて眠っていた。


マナー「……今はゆっくり眠っていろよ。姿を元に戻してやれなかったが、必ず俺達の力で元に戻してやるからな」


ニャイト「猫又達を眠らせたか。ご丁寧に傷を癒してくれたとは。眠りから覚めた時、また傀儡として使える。ご苦労であったぞ! 2次元殿!」


マナー「お前のためにしてやったわけじゃねぇ。第一、あいつらが目覚める前にお前を更生させる。あいつらを元に戻しやがれ!!」


ニャイト「我には果たすべきことがある。ここで我が野望を邪魔されてなるものか!!」


刹那、ニャイトはマナーの後ろに回り込む。


そして、思い切り右手の剣で切りつけた。


マナー「がはぁ!?」


ニャイトの姿を認識した時には、すでに切りつけられた後であった。


マナーは地面に倒れた。


凛「マナァー!!」


凛はマナーに近づこうとする。


ニャイト「隙だらけであるぞ!」


ニャイトは凛を斬りつける。


凛はなんとか鋩をかわし、体勢を崩すも距離を置く。


凛「くっ、うかつに近づけない」


ニャイト「2次元殿はしばらく目覚めぬ。我が闇の力に耐えきれず力尽きたぞ。お主も二の舞を演じたいか!」


凛「お断りよ! 近づけないなら射るのみよ。ライトニング・アロー!!」


聖なる光を纏う矢がニャイトに向かい放たれる。


ニャイトは矢を左手に持つ盾で防ぐ。


ニャイト「我が漆黒の闇は弱い光など飲み込む。闇を際立てるのに光の存在は必要だ。光と闇……対になるものがあってこそ闇の存在概念が生まれる。お主の力、利用させてもらうぞ!」


ニャイトは盾から黒十字の波動を放った。


凛「は、速い……!?」


か、かわせない。


咄嗟に受け身の体勢は取れたが。


ドォガァーン!!


爆風が起こる。


凛「……あれ? 意識がある……!? マ、マナー!? マナー!!」


マナー「へへへ、間に合った……。あ、でもこれはマジでヤヴァイ……かも……」


凛はマナーに抱きしめられ守られた。しかし、力尽き凛に倒れこむマナー。


凛「……許さない」


凛の体から黒いオーラが立ち昇る。


凛「はっ、いけない……。天使がこんな感情に流されてはいけないわ! マナーの分まで必ずあんたを更生させてやるんだから! ライトニング・アロー!!」


光纏う矢が放たれる。だが、先程の黒いオーラが矢に乗り移っている。


ニャイト「……同じ手を繰り出すとは捻りがないな。しかし、得られる力が違うようだ。闇を感じる」


ニャイトは手で受け止める。


矢は手に吸い込まれるように消えていく。


ニャイト「ふふふ、仲間をやられるとなると天使でも闇を生むのだな。さて、お主もそろそろ黙らせるか」


獲物を追い詰め、一気に食らいつく猛獣のように迫りくる闇の波動。


凛「やっぱり、速い……」


凛は身構えるしかない。


しかし、凛の遥か前で波動は消える。



紗理奈「今度は間に合った……。凛遅くなって申し訳ないわ。さっき、零といた鬼達を見かけて追いかけていたのだけど見逃してしてしまって。やっと凛のところに来れたわ」


凛「紗理奈さん、ガオル!」


ガオル「マナーの導いたこの状況を無駄にしてはいけない! 今はゆっくり休んでてもらい私達で反撃だ!」


凛「はい!」


ニャイト「ちっ、猫又達は全匹、力尽きたか。やはり地上の生物は脆い。役立たつ共が」


紗理奈「あの子達は、あんたに力を貸してくれてる仲間じゃない。都合悪くなったら捨てるなど物扱いするの!?」


ニャイト「ふん、そうだ。取り換えの利く物にいちいち容赦などかけてられるか。」


紗理奈「その鎧を纏っていると命というものを軽んじるようね。なら、その柵から解き放ってあげなきゃね。凛、ライトニング・アローでは塞がれるからホーリー・アローよ! ガオルはホーリービームを!」


凛・紗理奈「「ホーリーアロー!」」


ガオル「ホーリービーム!」


ニャイト「何度同じ手でこようと結果は変わらぬ。悪足掻きしかできぬか」


天使達の攻撃とニャイトの黒十字の波動が交叉し相打ちとなった。


紗理奈「一体、どのような想いが猫又騎士を突き動かしているというの。私達の力を合わせたものを1人で……」


バタッ。バタッ。バタッ。


天使達は次々と力尽きる。


しかし、ニャイトは辛うじて立ち上がる。


だが、その足はふるふると震え、おぼつかない。



ニャイト「不覚……。深手を負ってしまった。致し方ない。ここは、いったん退く。幸い天使達は力尽きたようだ。後は追ってくる者はいまい。我が野望は必ず成就させる。悲願なのだ……」


ニャイトは狼狽つきながらこの場を去ろうとする。


そこへ、紗理奈とガオルから逃げ切り、しばらく息を潜めていたオーガとオニガロウが袋をニャイトへ被せる。



ニャイト「何者! 卑劣な真似を!!」


オニガロウ「兄ちゃん、やったよ! 弱っているところを狙えば捕まえられた!! 煉様や閻魔王様に褒められる!!」


オーガ「そうだろ。ついでにそこらに転がっている天使共も連れて行って奴隷にしてやろう。堕天使がたくさん生まれるぞ!」


ニャイトは意識を研ぎ澄まし


ニャイト「この気配、そして臭い。鬼だな。先程の死神悪魔殿の眷属か! おのれ! 私は何者にも縛られん! 我が剣は立ちはだかる壁を切り裂く。ましてや、この薄い袋などたわいない。広がれ、我が鉤爪。居合斬り!」


ニャイトの右手は、猫の手をした鎧から爪の部分に当たる箇所が剣となっている。


普段はその剣が繋がっており1本の剣となっているが、ニャイトの意志により、


これが広がり、猫が爪を出して威嚇しているような状態になる。


この状態の剣は爪同様、広範囲であらゆるものを抉る。


鬼達が用意した袋を容易く引き裂いた。


オーガ&オニガロウ「なっ!?」


ニャイト「我も舐められたものだな。ただの猫ならまだしも、誇り高き騎士に何も細工されていない袋など子供騙しにも程があるぞ」


オニガロウ「ちくしょー! もう少しだったのにー!」


オーガ「袋に入れらし混乱している状況を狙えば良かったものの。視界良好、体の自由が利く我に敵う勝算があるとでも言うか! 鬼の童(わっぱ)達よ」


オーガ「オニガロウ、棍棒を取れ、叩きのめすぞ!!」


鬼達は棍棒は手にニャイトに襲いかかる。


ニャイトは俊敏な身のこなしでかわし、鬼達を斬りつける。


オーガ「俺達がもっと速く動けたら……」


オニガロウ「棍棒重たいよ……あいつは何で何で重そうな鎧を身につけて速く動け……るんだよぉ……」


鬼達は為す術もなく倒れた。


[newpage]


ニャイト「雑魚が……身の程をわきまえる」


その時、木陰から飛び出す一匹の影。


キラー「~~~~~~~♪」


ニャイト「何だ! この耳を劈かんばかりの音は!?」


キラー「けっ、やっぱ鬼の子達じゃあ軽くあしらわれて終わるわな。今度は俺が相手だ。手合わせ願うぜ?例え弱っていようとな」


ニャイト「お主には正々堂々戦う誇りはないようだな……」


キラー「俺は蝙蝠だ。優勢な時を狙う質だからな」


ニャイト「そのような諺があったな……」


キラー「ああ、こんな奴だから鳥と獣に嫌われ、昼の世界で居場所がなくなったんだ」


ニャイト「御託はいい。お主も血の臭いがするな。吸血蝙蝠なのだな。お主の血をいただき体の糧にするとしようか!」


キラー「それは俺の言い分だ! 零が釣られる気持ちがわかるな! 野郎の血が混ざっているがまあいい。腹が減っているからな。全部吸い尽くしてやらあ。もう1度喰らいやがれ! ~~~~~~~♪」


キラーは超音波を放つ。


ニャイト「我が盾に収められし数多の魂よ。呪詛を唱えよ。あの者の甲高き声を掻き消す程に低く、唸れ!! そして呑み込め、新たな生贄でありお主らの昵懇の仲となろう!」


ニャイトの盾から地獄の淵から這い上がってきたような声が立ち込める。


その声はキラーの超音波を無に帰した。


キラー「何!? 俺の超音波を無効果しやがった」


ニャイト「消すのは声だけではない。お前の命の灯も消してやる。ゆけ!!」


呪詛だけではなく、魂自体も現れ、キラーに食らいつこうとする。


キラー「[[rb:天国 > うえ]]にも[[rb:地獄 > した]]にも逝けないで彷徨っていた魂か。いや、あいつによって束縛されていたから彷徨うことすらできなかった。そりゃ、恨みが募るような。箍が外れりゃあとは思う存分発散するだけ。ったく、損な役回りがきたもんだぜ。けどよ、俺がお前らを連れていってやるぜ。地獄によ」


キラーは牙を剥き出し、1つの魂に吸いつく。


ニャイト「愚かな。魂にどう牙をたてるというのだ……なっ!?」


そう、確かにキラーの牙は魂に喰らいついていた。魂は透けているため牙が入っている様が丸見えである。


喰らいつかれている魂は痛みを感じているかのように呻き、まわりの景色に溶け込むように、魂の存在が跡形も無く、消えてしまった。


ニャイト「魂を喰らう蝙蝠でもあるのか!?」


キラー「いや、違うね。俺が吸収するのは生ける者の血だ。あいつも吸ってやったが存在概念だけだ。俺は死神みたく魂を完全に消すことはできないが地獄に連れていくことはできるんだ。あの魂は今頃、地獄の門の前に現れていることだろう。この世での役目を終わらせてやったのさ。死人は吸いついても何も得られねえから損な吸血だぜ。血ねえけど」


魂達は目の前で起こっていたことに驚愕し、襲い掛かろうとしていた勢い猛はなくなり怯え出した。


地獄に連れていかれるという言葉は比喩ではなく本当であった。たまったもんじゃない。


自分はただ、久しぶりのこの世で儚く散った無念を晴らす絶好の機会に乗じて盾から出てきたのだ。


本当はこんなところいたくない。何度も脱出しようと試みた。


だが、この呪い盾は魂を縛りつけ操る。魂はこの鎧にとって傷を癒す存在となる。


時に傀儡として召喚するが、最終的には生物を全て喰らいつくすのだ。


肉体だけではなく、魂までも。


この世で真っ当に生きていたのに突然、終止符を打たれ安らかに眠ることも罰を受けることもできず、


ただ闇の中で同じ運命を歩んだ魂達と寄り添い悲しんでいた。


自分が寿命尽きた時どちらに逝けたのだろう。この疑問を解決をする術はない。


だが、今、選択肢ができた。あの蝙蝠に吸われ、地獄に送られようか。


このまま、いずれ消えてしまう運命を受け入れてしまおうか。


はたまた、いつか誰かが助けてくれる可能性に賭けようか。どうせなら、心安らかになれる場所へ行きたい。


散々、この盾の中で踠き苦しんだんだ。手を差し伸べて欲しい。


今までの苦しみを忘れるくらいの温かい場所に包まれたい。


もう辛い思いはしなくていいんだと解放して欲しい。だが、魂になって道連れをつくった。


”どうして、自分だけ?嫌だ、恐い。そうだ、仲間をつくろう。引き摺り込めば逃げられないね”


繰り返す内に仲間は増えた。でも、恐怖の溝は埋まらない。


最初は、罪悪感があった。自分のやっていることは鎧の奴と同じだ。


無理矢理容れられた者は自分と同じ末路を辿る。同じに想いになる。


負の連鎖だ。でも誰も止められなかった。かつての自分と重ねてしまい、一時凌ぎにしかならぬ行為も


意味はあるものではないかと苦し紛れの納得をした。結局、誰も終わらせることはできず現在に至る。


時々、引き摺り込むのに失敗し、逃した魂もあった。そんな魂を見て怒りが生まれ、憎しみに変わる。


現在はかつての悲しみを忘れ、憎しみの行為となっていたのだ。この行いは罰を受けるのに値するだろう。


しかし、やはり罰から逃れたい。なら、存在概念を消されてしまえば終われるのに変わりない。


ただ、希望が残されているかもしれない続きがなくなるだけ。


どの選択肢が自分を救ってくれるのかがわからず怯えと葛藤で魂は苦しみ始めた。


[newpage]

ニャイトはキラーと魂達のやり取りを見て鎧の下でニヤリと笑った。


ニャイト「魂をも吸い尽くす……か。やはりお主は面白い蝙蝠だ。我の呪いの力をその体に宿してみないか?より血に対し貪欲になり血を得るために体が異変を起こし、強力な力を得られよう。我やあの死にぞこないの猫又達、そしてこの魂達のように。何者もお主に敵う奴はいなくなるだろう。同じ血を求めるよしみだ。牙を立てることを受け入れよう」


ニャイトは手を広げ、キラーを受け入れる体勢となる。


キラー「断る。俺にそんな力はいらねえ。今までだって血に飢えたことはねえ。十分足りてらぁ。あんまり吸いすぎると吸える奴がいなくなってちまう。時には我慢も必要だ。んで、耐えきってからの吸血はまた格別だ。いつまでも満たされないお前にはわからない心地だろうなぁ。餓鬼が。大人の駆け引きを知らないとはねぇ。それに、俺の大好物は乙女の血だ。見境なく吸血したら野郎の血まで飲んじまう。よっぽど腹が減ってるなら仕方ねえ。一時凌ぎだと腹を括るが、不味いものはなるべくなら口にしたかないね」


キラーは息を吸い込み、超音波を吐き出す。


ニャイト「それが答えか。致し方ない。残念だ。これ程までの逸材をこの手で葬らなければならない運命に。唸れ! 魂達!!」


だが、魂達は葛藤の呪縛に絡みついたまま動かない。


ニャイト「此奴等も役立たずだな……」


剣に闇の力を溜め、超音波を薙ぎ払う。


キラー「げっ!? こいつ自身でも消せるのか!?」


ニャイト「埒が明かないな。我は完全体となろう。ぐずぐずしていてから邪魔が入ってしまったのだ。さぁ、新しい世界が築かれる時がきた。この手で変える。もう猫にとって悲しみが生まれない世界を。苦しめてきた人間を含めた天敵のいない世界を。猫又達に分けた闇よ! 我の元へ。そして魂達よ。喜べ、最期に役立つ時が来たのだ。奏でろ! 終焉の旋律。演目は[[rb:鎮魂曲 > レクイエム]]。お主らの最期は我に看取られ、我と共に歩みだす始まりを告げる[[rb:前奏曲 > プレリュード]]に続く。何も恐れることはない。今はただ、この宴を楽しみ、思いの丈をぶつければいい! 夢中が消失の恐怖を掻き消す程に!」


”ヴォォォォォォォォォオオオオォォォアアアアアアアアァアアアァアアアガァァァァァァァ”


魂達の悍ましい歌声が辺りに一面に響きわたる。


キラー「こんな奴、手に負えねぇ!! 煉、許してくれ!! 俺1匹じゃ無理だ!! 小鬼達は軽くあしらわれたし、俺は優勢を持ってかれちまった!!」


キラーは闇の塊を吐き出し、地獄に繋がる狭間に逃げ込んでいった。


狭間は何事もなく閉じられた。閉じる闇に手で遮るこもなく。


こじ開けられることもなく。


ニャイトは追わなかった。蝙蝠を1匹逃したぐらいで状況は変わらない。


もう誰も止めることはできないと思うと笑いが込み上げる。


ニャイトの哄笑と魂達の喜怒哀楽どれに属すか見当がつかない叫びの二重奏は続く。


魂達は、自己の姿を失い白い塊となる。その白い塊は、黒の鎧と同調する。


宴はまだ終わらない。



優唯「うぅ……、はっ! またたび!! 凛ちゃん!! みんな!! ……! うぐっ……」


マナーに助けられてから痛みに耐えきれず気絶してしまっていた。


何が起こっていたのだろう。辺りを見渡せば倒れている仲間達。


とりあえず、翼は無事のようだ。痛む体を奮い立たたせまたたびの元へ飛んで向かう。


優唯「またたび! 大丈夫!? 私のことわかる!? 優唯だよ! お願い。目を覚まして!」


揺すって起こそうともしたが怪我をしている体を揺すっていいものかと手引っ込め、呼びかける。


またたび「ゆ……いちゃん?」


またたびは、目を微かに開きパートナーの存在を確認する。


優唯「またたび! みんなはどうしちゃったの!?」


またたび「優唯ちゃんが気絶しちゃってからマナーが奮闘してくれ……たんだ。おかげで猫又達は……眠らせ、たけど……ニャイトは敵わなかった。マナーが倒れてしまったあたりで僕は優唯ちゃんのところに、向かったんだ。け、ど。凛ちゃん。紗理奈さん。ガオルさんがニャイトに立ち向かってるくらいで、僕も気を失ってしまったんだ。僕も猫又に引っ掻かれていたから体が蝕まれていたのかも。ニャイトは強いんね。3天使の力を撥ね返したみたいだね。みんな倒れてしまっている。それだけではなく、今は闇の力をさらに高めているみたい。この辺りの生気が失われている」


優唯「私が気絶している間にまたたびやみんなが……。ごめんね。私がみんなの足を引っ張ってる」


またたび「僕だって、優唯ちゃんのこと守れなかった。パートナー失格だよ……」


優唯「そんなこと言わないで! だって、またたびも気づいてるでしょ! あの猫又達はこの世に生きる猫さんだってこと。私達は一切手を出せなかった」


またたび「そうだね。優唯ちゃんはこんな僕を大事にしてくれているようにみんなも優しい。攻撃するだけが救う方法じゃないって僕も思っているよ。」


優唯「みんなには休んでてもらわなきゃ。こんなにボロボロになるまで私達を守ってくれたのだから。天使になったばかりの私がどこまでやれるかはわからないけど。行ってくるね、またたび」


またたび「待ってにゃ。僕は優唯ちゃんのパートナーだよ。今度は1人にさせないよ。優唯ちゃんの背中、僕に預けて欲しいにゃ。守りたいんだにゃ!」


またたびは優唯を守りたい一心で活を入れ、体を起こす。


優唯「挫けそうになっても、またたびと一緒ならどんなことにも立ち向かっていけるよ」


またたび「優唯ちゃんとなら百人力だよ。それに、ニャイトや猫又達は昔の僕を見ている様だった。僕達が何とかしなきゃ!」


優唯「私も懐かしいなって思ってたよ。昔のまたたびみたいって。行こう! みんなの悲しみを笑顔にするため!!」


優唯とまたたびはニャイトのところへ向かう。


優唯の胸に微光だが、光が灯り始めていた。



騎士はボウ・アンド・スクレイプをして優唯とまたたびを迎える。


ニャイト「ようこそ、我が宴へ。途中参加も大歓迎である。歌は終わってしまったが、次は踊りといこうか。我も装いを新たにして粧したぞ。」


ニャイトの鎧は闇と魂を取り込み、変化していた。


優唯「すご~い!! さっきより格好よくなってる!!」


またたび「優唯ちゃん、暢気に褒めている場合じゃないにゃ!」


優唯「そうだった! 猫又騎士のニャイトさん。あなたのことを救ってみせます。これ以上、誰にも手を出させません!!」


優唯は左手を胸に当て、右手で手のひらを見せる。


それに対しニャイトは再び一礼する。


ニャイト「お褒めに与り光栄だ。しかし、我を止めることはできん。完全体となった今、敵なしである」


またたび「優唯ちゃん、気をつけるにゃ。見掛け倒しじゃなく本当に強くなってるにゃ。本能が警告を鳴らしているにゃ!!」


ニャイト「口を動かしていてステップを踏み出し忘れているぞ。これでは、揚げ足を取られるぞ。死の円舞曲ワルツはもう始まっている!!」


ニャイトはまたたびの後ろに現れ切りつける。


またたび「ウニ”ャア!?」


優唯「またたび!」


ニャイト「お主もテンポが遅れているぞ。2本結びの天使殿」


優唯「痛!! ……うぅ、速い」


ニャイト「我がリズムを乱さねばお主らの出番はない」


またたび「優唯ちゃん、ニャイトに最低限の攻撃しないと僕達がやられてしまうにゃ! ホーリークロウ!」


聖なる鉤爪でニャイトの剣を受け止める。


ニャイト「ほぅ、見切って受け止めたか。先程の天使達のように簡単に終わらせられては面白くない。我と共に楽しもうではないか!」


またたび「こっちはギリギリの状態だというのに! 優唯ちゃん、加勢してにゃ!」


優唯「うん! トゥルース・ライト!」


またたび「優唯ちゃん、それじゃあ怯ますこともできないにゃ!」


優唯「いや、これでいいんだよ! またたび、耐えててね!」


眩い真実を導き出す光でニャイトを照らす。


鎧の中から猫の輪郭が浮かび上がる。


優唯「やっぱり。鎧の中に猫さんがいた!」


またたび「にゃにゃ!? 操られているのかにゃ!?」


またたびは対峙しているニャイトに問いかける。


ニャイトは体を震わせ、下を向いた。


ニャイト「くくく、我は望んでこの姿になったのだ。鎧の操り人形になどなってはいない。」


そして、剣に力を込め、またたびをはじき飛ばし距離を取る。


またたび「そんにゃ。鎧に取り込まれたら心は憑かれた状態になるんじゃ……」


ニャイト「我が野望と鎧の利害が一致したまでよ。血を常に供給する代わりに強力な力を与えて自由に行動して良いと。願っても無いこともである。これで果たせるのだ。天敵共を根絶やしにできる力が手に入る。かつて、我を暴力にさらした屑な人間への……いや、全てを!その他、害となる動物への復讐がな!!」


またたび「……本当にかつての僕とそっくりにゃ」


ニャイトの話を聞き、目つきが変わるまたたび。


ニャイト「ほぉ、お主もかつて我と同じ境遇だったのだな。先程まで見えなかった目の濁りが見える。絶望し何も信じられなくなった時の色だ」


優唯「……」


優唯はまたたびとニャイトのやりとりを見守る。


ニャイトは剣で優唯を差し


ニャイト「そこにいる天使殿にやられたのか?」


またたびは威嚇したように毛を逆立て


またたび「バカ言うニャ! 優唯ちゃんはそんなこと絶対しないにゃ!」


ニャイト「そうか、では生前の時にか。詫びよう。今はマシな主人に出会えたのだな」


またたびはより一層怒り、手からは爪を伸ばす。


またたび「マシとはなんにゃ! 優唯ちゃんは最高のパートナーにゃ!」


ニャイト「ふん、果たしてそうなのだろうかな。最初は奴らも偽りの笑顔とやさしさで疑うことを知らない心につけこんでくるのだからな」


またたび「それは、ニャイトの過去のことを言っているのかにゃ?」


ニャイト「そうでもあり、お主にも忠告しているのだ。裏切られる前に牙を向けろ。奴らは弱った心を見透かし、憂さ晴らしの道具にしてくる。ことごとく出会った人間は我にそうしてきた。お前の主人もやがて裏の顔を表に出してくるに違いない」


またたび「牙も爪も向けたことあるにゃ」


ニャイト「!?」


またたびは俯き、懺悔をする。


またたび「優唯ちゃんと最初に出会った頃は優唯ちゃんを傷つけてばかりだったにゃ。僕も生前は悪い人間に出会って人間を信頼できなくなってたから」


ニャイト「お主を脅したりして、無理矢理服従させるなど下劣なことをしたのだろう?」


またたび「優唯ちゃんは一切、僕に手を挙げていないにゃ。僕のことをただ、ただ見守ってたにゃ」


ニャイトは信じられないと言葉を荒げる。


ニャイト「お主は! 主人をかつて拒絶していたのに何故、共におるのだ!?」


またたび「優唯ちゃんは、愛情で包み込んでくれたから。今の僕があるにゃ。僕が鋭い爪を突き付けても、柔らかい笑顔と言葉で抱きしめてくれて。僕はいつのまにか、憎しみを消すことができていた。だから、これからは優唯ちゃんを愛する心を持ってかけがえのない人と慕いついていくことにしたにゃ!」


優唯「またたび……」


優唯の胸の光がまた輝きを増す。優唯は胸に手を当て、目をつぶる。


ニャイト「だが、かつての人間に暴力を受けたことがフラッシュバックすることがあるだろう。その時はお主は憎しみを抱えるだろう。もう、思い起こされるきっかけがのうのうと生きている世界に嫌気がささないか?我と共に復讐しようではないか」


またたび「断るにゃ! 暴力を暴力で仕返ししたところで事は終わらないし、苛酷になるだけ。負の連鎖にゃ!」


ニャイト「ああ、だから続かないように奴らを散々に嬲った後に殺戮してやるのだ。2度と動けないように。種を絶やしてやるのだ。ただ反撃するだけではない」


またたび「殺したところでニャイトの気持ちはは満たされないにゃ」


ニャイト「……ああ、もはやその通りかもしれない」


またたび「それじゃあ……」


またたびはニャイトに歩み寄ろうとする。


ニャイト「最初は虚無感を埋めるために始めたことを今でも続けている。今ではもはや、感覚が麻痺して当初のように動いているのかすら、わからない。まぁ、お主が言って聞かせたところで我を説得できまい。もう、その言葉を聞き入れる器は疾うの昔、鎧に売り渡したのだから。……回想談は終わりだ! 止めたくば、我の力を超えてみせよ!」


ニャイトの盾から黒十字の波動を放った。


またたび「このわからずや! それなら受けて立つにゃ!  ホーリー……」


優唯「またたび、撃たないで!!」


またたび「にゃ!?」


優唯はまたたびの攻撃を静止し、またたびの前に立ち塞がる。



ニャイトと対峙した状態で手を前に翳す。


その手には胸から溢れる微光が伝ってきている。


ニャイト「その弱い光で何ができるという。2天使諸共、闇の葬ってくれる!!」


しかし、黒十字の波動が優唯の手に触れた瞬間、眩い光を放ち闇の力を打ち消した。


ニャイト「何が起きたというのだ!? のわっ!?」


光度の高い光がニャイトの視界を眩ませ奪う。


優唯は後ろにいるまたたびに顔だけ向けて微笑む。


優唯「またたびの言葉、嬉しかったよ。私もまたたびに出会えてたくさん変われたと思う。次はニャイトさんの番だね。でもね、力で説得しようとしないで。私の中でこの答えはどうしても覆せなかったんだ。ニャイトさんは崩壊寸前だと思うの。あんなに傷つき、罅だらけ。だから、少しでも罅がひどくなれば壊れてしまう。またたびは同じ傷を持っていたのだからその想いがニャイトさんに届いた時、共鳴してその想いが棘に変わり、貫いてしまいそう。またたび、ニャイトさんを救うかはわからないけど。私の胸から留所なく湧いてくるこの光で導いてみたい……私のこと信じてくれる?」


またたびは頷く。


またたび「さっき攻撃するだけが救う方法じゃないって自分で言ったばかりなのに……僕ではできないから。僕の想いも優唯ちゃんに託すよ! 僕は優唯ちゃんについていくよ!!」


優唯「ありがとう。必ず私達で救ってみせよう!!」


ニャイト「……やっと、視界が戻ったか。互いに言い残したことはないな。命請いは聞かぬ。闇の波動がかわされた以上、直接この手で引導を渡してやる。覚悟!!」


ニャイトは右手を前に翳し、優唯とまたたびに向かってくる。


しかし、優唯は避けるわけでもなく、防御壁を展開したりもしない。


両手を広げて


優唯「あなたを受け入れます! いらしてください!!」


またたび「優唯ちゃん、何をするつもりにゃ!!」


またたびは優唯を見つめた。ニャイトが接近してくる。


止めの矛先が優唯に向けられている。またたびは目を瞑りそうになった。


”優唯ちゃんが刺される”


だが、信じたパートナーの行動を見るべく目を凝らす。


優唯は鋩をかわし、ニャイトに手を伸ばす。


そして、全身でニャイトを包む込む。


優唯「ニャイトさんも愛されるべき存在です! 私もあなたを愛します!! そして、思い出してください。かつて、あなたが愛した存在を! 愛されたことを!!」


言い放った想いは光に増幅させる。優唯の胸の輝きが金色に光りだす。


ニャイト「また、この光か……!! 先程よりも強く……ぐわあぁぁあぁ!!!!!!」


辺りは優唯の光に包まれる。


またたび「温かくて心地いいにゃ。かつて僕を包み込んでくれた優しさの温度を共に感じるにゃ」


やはり自分の信じたパートナーは他の天使とは違う強さを持っている。


皆の意識は夢心地に浸るようにゆっくり意識が奪われていった。

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