最後のお話


「仮に北条みなみさんが高橋優子さんに窓を空けておいてと言ったのが、窓から侵入したいという事だとして、それを知り得た人物がいるのかどうか考えてみましょう」


「.......仮にだね」


「はい、そうすると、彼女は何らかの目的で教授の部屋に窓から侵入したと考えるのが妥当です.......しかし、もちろんそれをベラベラと人に話すとは思われません」


「共犯者には話すんじゃないかな?」


「共犯者と言うと?」


「高橋優子さんや.......」


その後ちらりと風祭大悟の方を見たがそれ以上は言わなかった。


「高橋優子さんは理由を聞かされてませんでしたし、風祭大悟さんは嘘を付かれて待ちぼうけをくらっています。おそらく教授を引きつける役をやってもらったという事でしょうね」


「私にはネットフォーラムの時間があるからそんな事をする必要がないようにおもうが?」


「そのネットフォーラムに教授が確実に参加するという確証がなかったか、計画がそれより早く組まれたか.......とにかく、彼女にとっては自分が教授の部屋に忍び込む時間に教授が他の事で手がいっぱいになれば良いわけですからその理由は多いに越したことはありません」


「.......かもしれんが、単なる憶測だね」


「確かに証拠はありませんが.......そう考える方が自然です」


「.......それで?」


「もしも、北条みなみさんが誰にもこの計画を打ち明けなかったと仮定した場合それを知りうる可能性があるのは誰か?」


「.......」


「それは、6時以降に電車に乗った人の中で教授の自宅を知っている人物」


「6時?.......風祭くん?」


堪らず池照刑事がそういうも如鏡しきょうは首を振った。


「6時に乗っては見ることができません」


「何を?」


「教授の窓に立てかけてある梯子です」


「.......そうか、北条みなみは夜6時に平和町から西湖町まで車で移動してる所をNシステムで確認されてるわけだから、教授の部屋に侵入したのはそれよりも後か」



池照刑事はこのゼミ室にいるもう一人に視線を移した。

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サイコパス ハイブリッジ万生 @daiki763

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