生後3日目

 生後3日目、俺は一人考えていた。


 人はどうして強くなりたいのだろうか?


 生前の俺は、それを強く疑問に思っていた。


 戦わなければいいじゃないか。


 そう強く思っていた昔の俺を、今は引っ叩いてやりたい。


 強くなりたい、男になりたい、自分の力で生きたい。


「いないいないいない〜〜、……ばぁ!」


 俺はマッキーにあやされていた。


 別にいなくなってなんかいないし、ばぁの意味もわからない。


 しかし、本当に辛いのはそれじゃない。


 そんな愚行をダイレクトにかまされながらもポーカーフェイスで耐えていると、マッキーは泣きそうな顔で言うのだ。


「……どうしたの? どうしてそんなに、……元気がないの?」


 そうされるたびに俺は、嘘100パーの笑顔を顔に張り付かせ、


「きゃっきゃっ!」


 と笑い声をあげるしかない。


 そうやって自尊心を傷つけながら、母親(知り合って2日目の女)の自尊心を守る。


 そんなことしか出来ない自分と向き合うことが、今は酷く辛い。


 俺は、一体何のために生まれてきたのであろう。


 俺は、あと何回自分に嘘をつけばよいのだろう。


 俺がもう一度大人になるまでの期間を考えると気が遠くなる。


 もしも神がいるのならば、たった一つ願うこと。


 力が欲しい。


 この女の世話にならず生きられる力が欲しい。


 この女の鼻っ面に一発かませる力が欲しい。


 ……心から強く願う。



   🍼次回、脆弱な心の壁🍼

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