開かずの魔導書 VS 鍵開け魔道士

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第一章 絶対魔導書を解読する魔法使いVS鉄板

第1話

「こんにちは」


 アシャー・ロックウェルは、依頼人である富豪の元を訪ねた。



 出てきたのは、四〇代後半の夫婦である。


「こんにちは!」と廊下を飛び出してたのは、姉弟の子どもたちだ。


 


「ようこそ、おいでくださいました。随分とお若いんですね?」



 夫婦の雰囲気はよさそうだ。いかにも幸せそうな家庭である。


 


「二五です」


「アシャーは、若くして天才鍵本屋なの。これまで開けてきた魔導書は五〇〇冊にも及ぶんだから」


 そう付け加えるのは、アシャーの肩に乗っている妖精「ピック」だ。



「それは頼もしい。ではこちらへ」



 ただ廊下を歩いているだけでも、美術品・芸術品の類いを目にした。


 どれも貴重な品である。



 リビングに到着し、依頼人が件の品を持ってきた。


「父は結構なコレクターでして、各所を回っては、変わった品を集めてきたものです」



 そう言って、アシャーに魔導書を手渡す。


 


 


「これが、依頼の品ですか?」




 


 アシャー・ロックウェルは、今まで様々な「封印された本」を見てきた。


 しかし、こんな形の品は見たことがない。





「板っきれじゃないですか」



 手渡されたのは、なんと、鉄板だったのである。



「別に不思議でもなんでもないの、アシャー。魔導書は本の形をしているとは限らないの」



 これまでも、アシャーを苦しめた魔導書は数知れない。


 本に限らず、石膏像、ティーカップ、時計台なんて形の魔導書まであった。


 


「でもこれ、鍵穴もないよ」


「鍵穴を探すところからスタートなの」



 


 アシャーは額を撫でる。


「これ、うまくいくかなぁ」


 


 


「そこをなんとか。これまで三人の魔道士様に依頼をしたのですが、どなたも開けられず。アシャー様なら、開けられるかと」


 



 依頼者は、頭を下げて願い出る。


「お願いします。この中には、キッと貴重な財宝の在処があるかも知れません。あるいは、その魔導書自体が宝なのかも」


 


 アシャーは、ため息をつく。


 この依頼人も、欲の皮が熱い類いか、と。




「わかりました。やってみますよ」

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