解けない呪い

「アナお嬢様、確かにアイナさんがなさった、う◯こち◯ちん等と体に刻む呪いは、同じ女性として到底許せるものではありません」


(こいつ……)


 ナターシャは軽蔑の眼差しをシャリィに向けるが、本人は気付いていないようだ。


「しかしこの呪いには、苦痛を一切与えない特別な工夫が施されていました。これは並大抵の独学では習得する事が出来ない高等技術です。その努力を、よければ汲んであげませんか?」


 シャリィのウインク付きの提案に、二人は至近距離で目を合わせる。そしてそれに答える様に、アナは親友の前髪をかき上げ、おもむろに顔を寄せた。


「こんな事をして、あなたは本当にいけない子。私に呪いをかけるなんて、本当に許せないわ。――だからこれは、そのお返しよ」


 そう言ってアイナの額に口づけた。アナが唇を離したその瞬間、口づけの形に光が盛り上がる。やがて腹部の痣と共に浮かび上がって光の粒子となり、舞い上がって二人に降りかかった。アナとアイナはは不思議そうな顔をして、シャリィを見つめる。


「呪いの解除のついでに、お二人の絆が切っても切れない呪いをかけておきました。初回サービスですよ♪」


 親友同士は見つめ合い、二人してクスリと笑いあう。アナは立ち上がり、真摯な眼差しでロビンに向かい合った。


「ロビン、私からの最初で最後の我儘です。私の嫁入りの際、アイナがイオリナ家で働けるようにあなたから口添えしてください。お願い」


「……困ったものですな。私もお嬢様がお生まれになった時から、片時も離れずお仕えしたのですよ。最初で最後、しかも呪い付き等と言われたら、断れる筈が無いではありませんか」


「それじゃあ……」


「少々骨が折れる仕事ですな。この後はお暇を頂こうかと」


「アイナ……よかった」


「アナ……」


 二人は再び涙を浮かべその手を取り合う。それを見たシャリィは、目を細め再び二人の間に入る。

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