第139話 魔王と対面

『君は誰だい? ものすごい魔力を持つものが我が国を探っているようだから心配になり偵察に来てみたのだが。君は我が国に仇名す者か?』


『いやいや。魔国に興味があり、渡る方法がないか考えていたところだ。』


『ほう。我が国に興味があると。あいさつが遅れてすまなかった。我は魔国の現魔王のシーザー・エスカルゴだ。』


『こちらこそ。俺はスカイ・ブルームーンです。女神の使徒をやってます。魔国を見学したいのですが可能でしょうか?』


『ほう、女神の使徒か。まあ、昔は敵対していたようだが俺は特に気にしない。歓迎しよう。魔国は魔力の泉があり、魔素濃度が高いが君の魔力であれば大丈夫であろう。通常の人間では魔素に酔い、気絶するか狂ってしまうのだ。』


『なるほど。それに私は自信の周りだけに結界を張ることもできるので大丈夫だと思います。よろしくお願いします。』


『では、我が城へつながるゲートを開くのでこちらに来てくれ。歓迎するぞ。』


『ありがとうございます。』


『一応、魔王ですから警戒はしてくださいね。いくら現魔王は保守派と言っても魔族は魔族ですからね。』


『ティア、心配してくれてありがとう。了解したよ。』


ゲートをくぐると邪悪な魔素が襲ってきた。

すぐに結界を張り防いだ。


「おお、よく来たな。我が現魔王のシーザーだ。よろしく頼む。」


「初めまして、俺はブルームーン王国の国王、スカイ・ブルームーンです。こちらこそ、よろしく。」


「君は国王でもあるのか。友好のために我が娘を嫁にどうだ?」


「ちょっと待ってください。まだ会ったばかりなのですから。」


「大切なことなのでもう一度説明しておくが、ここには魔力の泉がある。気を抜くとやられるぞ。我が魔族には強い魔素が必要だ。だからこの地で暮らしている。魔素は元々邪悪な気を含んでいるからな。気を付けるのだぞ。」


「心配ありがとうございます。気を付けます。ところで魔国の観光地などありましたら教えていただけますか?」


「そうだな。だが、まずは我が娘の紹介からだ。」


なんだろう。この魔王はグイグイ娘を押してくるのだが。

もうたくさん嫁がいるので必要ないのだが。

それに魔族ならすでにヴァンパイアのエルザがいるし。

その後、3人娘を紹介されたが、丁重にお断りをした。


「嫁にいただかなくても大丈夫です。友好関係を築きましょう。友好的に貿易ができれば幸いです。お土産と言ってはなんですが、お口にあえば良いのですが。」


きっとエルザもおいしそうに食べていたので大丈夫だろう。

ケーキとプリンを出してみた。

早速、3人娘が口にし、笑顔が溢れた。

味覚の問題は無いようだ。

そして、こんなおいしいものがあるならブルームーンに行きたいと騒ぎ出した。


「では、我が娘たちにスカイの案内を任せるとするか。娘たちよ、スカイに気に入ってもらえるように頑張るのだぞ。」


「「「はい! お父様!」」」


だから、何度も言っているのだが嫁はいらんと。

娘たちに手を引かれ観光地を巡った。

やはり感覚が違うのだろうか、おどろおどろしい場所ばかりだった。

針の山に串刺しにされた魔物たち?

沸騰し血の色をした沼でゆでられた魔物たち?

ロープに縛り上げられてつるされている魔物がぶら下がる谷?

うーん。来たことを後悔してしまいそうだ。


「あの、できれば町の中を見学したいのだが。できれば市場とか魔道具屋とか。」


「え? そのような場所が良いのですか? 楽しくないですよ?」


いえ、殺された魔物を見物させられた方が楽しくないのですが。

それで魔王城に転移し、城下町に向かった。


「ここは魔王城がありますから魔国の中でも一番大きな町です。物流も一番ですから珍しいものも多数あると思いますよ。」


「そういうのが見たかったんですよ!」


道行く人々は顔色や形の違った者たちがたくさんいた。

魔王家族のように人間に近い形は珍しいくらいだった。

そして、連れて行かれたのが魔法ショップだった。

使い方のわからない魔道具が多数ならんでいた。


「これは何ですか?」


「これは魔石を作る機械です。」


「え? 魔石って作れるのですか?」


「え? はい。もちろん作れますよ?」


何この人、そんなの常識じゃんって顔でみられている。

ヒューマンにとっては魔物を倒して得られるものだが、魔族にとっては電池的な感覚なのかもしれない。


早速購入したいところだが、お金って同じなのだろうか?

肝心なことを聞き忘れていた。


「あの、この貨幣って使えますか?」


金貨を見せてみた。


「はい。大丈夫ですよ。金の価値は変わりませんからヒューマンの世界と通貨は一緒ですよ。」


ホッとした。

ちなみにこの魔石製造機は1金貨と安かった。

魔素の溢れているこの国では魔石の価値は低いそうだ。

ただし、魔素がここより低いヒューマンの国ではできるのに時間がかかるかもと言われた。

しかし、魔道具は魔石に頼っているのでこの装置はヒューマンにとっては便利な道具であるのは確かだ。

他にも見たことのない魔道具を紹介してもらい、全部購入してしまった。

隣の店は武器屋で、魔力伝導率の高い武器が多数揃っていた。

魔剣や杖などデザインも性能も良いので購入した。

こっちはものすごく高かったが。

それに死神が持ていそうな大きな鎌デスサイズも売っていたので買ってしまった。


「次は食材が売っている市場に行ってみましょう。」


市場に向かうとえ?これ食えるの?というものが多数並んでいた。

動き回る野菜や悲鳴を上げる野菜、足の生えた魚、絶対毒がありそうなキノコ、本能で食べてはいけないとわかる。

そして、普通に丸ごとの魔物が転がって売られている。

食材に関してはやめておこう。

魔族には無害だが、人には毒というものがありそうだ。

街を一回りして城へ戻った。

客室に案内され今日はここに泊まることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る