第18話 稼ぐ方法

「なぜ、あなたたちはこの街に来たの?」


 いくらか平静さを取り戻したバレッタが訊いてくる。


「店で言っただろう、旅に必要な物を揃えに来たと。それがこの街だったのは、転移術式によって落とされた場所が近かったからだ。他にも理由があるが、先ほど一つ増えた」


「他の理由を訊いてもいいかしら?」


 もちろんだ、と一つうなずくと、重斗はバレッタに説明した。


「まず、勇者に関する情報が欲しいんだ。その足取り、または痕跡が」

「どうして勇者の足取りか痕跡が、――って、あなたには確かに必要な情報なのかしら」

 訊こうとして、だが重斗の正体を知るバレッタは、途中で気付いたようで止めた。


「そして先ほど増えた理由がこれだ」


 ポケットから、先ほどギルドでもらったばかりの報奨金を出して見せる。


「お金なら重斗はたくさん持ってるじゃない。一度に使えないほどの量のお金を」

「そう、使えないのが問題だ。いくら多量の額を持っていようと、使いたいときに使えなければ無価値の金属だ」


 報奨金をしまい直してから、すぐにオラクル金貨を取り出す。指で挟んで、表に描かれた国王の顔をバレッタに見せる。


「その金貨を無価値だなんて。聞く人が聞けば卒倒するでしょうね」

 クツクツと可笑しそうに笑うバレッタ。


「そこでだ。使える金をこれから稼いでいくために、バレッタにはギルドまで案内してもらったわけだ」

「稼ぐのはいいけど、どうして賞金稼ぎのギルドなのかしら。額を稼ぐなら魔物を倒す冒険者ギルドの方が割がいいのだわ」

「……この俺が、魔物を倒すと思っているのか?」

「――そうだったわね。あなたはそちら側だったのだわ。ごめんなさい」


 重斗が訊くと、自分がおかしなことを言っているのに気付いたバレッタが謝ってきた。


「それと賞金首も、生死問わずの相手でも殺さない。デルニに反対されたからな」

「うん。ジュウ、人を殺しちゃだめだよ」


 重斗がデルニに視線を向けると、きっぱりと返された。彼女は堕天使だが、その心根は天使に近い。人間を殺すのを極端に嫌がる。


 賞金稼ぎギルドに案内されている最中、うっかり「人間ならいくらでも殺せる」と重斗が口を滑らすと、彼女は猛烈に反対し、宥めるのに時間を要したほどだ。

 人間は殺さないと固く約束してようやく納得してくれた。


「賞金首を殺さずに捕らえるなんて、加減さえ気を付ければ簡単でしょう?」

「そうだな、加減はしないとだ。人間とはあまりに脆すぎる」


 瓦の山から引っ張り出した男は血だらけの状態で、重斗が修復の魔法で止血しなければならないほどだった。――これから賞金稼ぎを続けるなら、加減を覚えなくては……!

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