悪魔憑きの歪な少女 ――イサミ――
こたろうくん
第1話
か細い声と艶かしい吐息が漂い、それに絡み付く形で別の荒々しい吐息が薄暗い室内に響く。
張りの無い拍手のような、くぐもったようなそんな音は荒々しい方の吐息の勢いと共にその律動する間隔を短く速くして行く。
揺られながら、長い黒髪を散らし、滲んだ汗でしっとりと湿り色白の顔を紅潮させた少女が潤んだ瞳で見上げる先には青髭が目立つふくよかな頬をした男性の姿があった。
少女に比べ玉の汗で顔や、だらしない贅肉をぶら下げた体を濡らしたその男性は、高揚して行く気分と快楽に少女の肉体を添えて貪ることに夢中なあまり彼女の視線には気が付かない。少女もすぐに腕で顔を覆うと、迫り来る感覚にきゅっと唇を噛み締めながら顔を逸らし目を閉じた。
――そうして、半ば気が付くと一人と言う状況で少女は、ベッドの上で手足を投げ出しぼんやりと天井を眺めていた。
部屋に満ちる臭いもまだ余韻の残る今なら気にならず、それは周囲に散らばる汚ならしいゴミも同じであった。
生まれたままの姿で、その体に残る他者の感触も慣れたもの。縛るなり縛られるなり、後ろを使うだとか、おかしな事も特に求められず、今回は至って普通に楽しむことが出来たことを簡単だったと思う余裕すら少女にはあった。
やがて、ずっと聴こえていたシャワーの音が止まった事に気がついた少女がゆっくりと小さなその体を起こすと、タオルで濡れた体を拭く先ほどの青髭の男性がちょうどドアを引いて姿を現した。
男性も体を起こした少女の事はすぐに気がついたようで、何処か控え目な照れ笑いを浮かべ小さく頭を下げたりしている。
そんな男性の仕草に少女は思わずきょとんとして、じっと彼のことを見詰めてしまう。
男性も男性で、自分の仕草に気付き分かりやすく顔を赤くさせた。
だが少女は後にくすっと両頬を持ち上げて笑い、「可愛くて良いと思いますよ」そう男性に言う。
「ははは、まさか。良い歳して赤面症なんて酷いもんだよ。お陰でまだ独り身だしね」
茶化してはいるが卑屈なところなど劣等感としては間違いないらしく言葉の通りみるみる顔を赤くして行く男性であったが、少女は相変わらず微笑を浮かべたまま。
そして彼女は徐にベッドから降りて立ち上がると、己が一糸纏わぬ姿だというのも気にも留めず男性の方へと歩み寄り始めた。
少女の小柄な体付きは年相応で、未発達な部分も目立つ。それが好みだという男性は少なくない。少女はそこに付け入るし、男性は看板に偽り無しと喜ぶ。今日のこの男性も同じだ。
ただ他の異性のように舞い上がることも無ければ、卑屈なこの男性は裏腹に素直な体にしかし正直にならず、少女が歩み寄るのは自分では無く汗を流すためシャワー室だと彼は察すると赤くした顔を俯かせてその道をそっと少女に譲った。
しかしこと少女の好みと言うことであれば、この男性は好みであったようである。
「……追加料金で良ければ、一緒に入りません? 背中流してくれるなら、それもお安くしときますよ」
避けようとする男性がぶら下げたままの手を、握るでもなしにそっと触れ。それが引っ込もうとするとようやく人差し指と親指で頼りなく掴まえる少女のその仕草に、男性は内側より胸を突かれたような感覚を得る。
彼が顔を上げると、そこでは上目遣いに男性を見上げ、はにかんだような少女の表情があった。
汗でその体に張り付く艶のある黒髪や、未発達でやや上向きになった桜色の乳首。そしてその表情と少女の全てが男性にとって理想的で、彼は彼女の申し出に相変わらず顔を赤らめ卑屈でたじたじと言った様子ながらも断ることが出来ず頷くしか無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます