特別編2 鬼は外!福はどこ?
「せんぱい先輩せ〜んぱい! 恒例の、今日は何の日でしょうクイズの時間ですよ!」
「君はそこからしか話を始められないのか?」
「誰かさんが率先して話題を提供さえしてくれれば、こうはならないんですけどね〜。どう思います? 誰かさん♪」
「……チッ」
「冗談なのか判断つかない表情で舌打ちしないで下さいよっ!」
本気じゃないって分かっててもドキッとするんですから! 悪い意味で!
「と、とにかく、回答をどうぞ!」
「まったく馬鹿にしてくれる。ツインテールの日は分からなくても、流石に今日が何の日かくらい知っているよ」
まあ、サブカル的な側面の強かった昨日と違って、今日は国民的にメジャーな日だ。何かと興味の薄い先輩でも、流石に知っていて当然である。
その証拠にほら、自信満々に口を開いて正解を――
「にじさんじの日、だろう?」
「何ですかそれ⁉︎ 逆に初耳ですよ!」
「……なんだと?」
「驚いてるのは私の方ですっ! それに貴重な表情変化をこんなことに使わないで下さい!」
「ま、僕も詳しくは知らないんだけどな」
「何がしたいんですか、先輩は⁉︎」
「そりゃ、君のそういう顔が見たかったに決まってる」
「ふぇあっ⁉︎ き、急にぶっこまないでくださいよ! 恥ずかしいじゃないですか!」
「だから、それが目的だって――」
「シャラーーーーップ!」
もうもうもうもう! 本当にいい性格してるんだから! 悪い意味で!
「はぁっ、はあっ……、どうして節分って言葉を聞こうとしただけでこんな事に……」
「そうか、今日は節分だったか」
「清々しいほどに白々しいですね。悪魔みたいな所業をしておいて」
「それを言うなら鬼みたい、だろ?」
「ええい! 鬼は外っ! 鬼は外っ!」
「……豆を袋ごと投げつけるなよ」
「だって、勿体無いじゃないですか。あ、今投げたのが先輩の分なので、数えて食べてくださいね?」
「……扱いが雑だな」
「ガサツじゃありませんからっ!」
「言葉は間違っているが、意図は伝わっているあたり対応に困るんだけれど」
「ふ、ふ~んだ、そういう作戦だったんです~」
「あ~すごいすごい」
「ここ! 今こそ感情の使い時ですっ!」
「……なんだと?」
「だから違いますってば!」
ほんと、人を弄る能力に全振りしている先輩はどうかしている。
……それが全然嫌じゃない私もどうかしている。
「そういえば、鬼を追い出すのに必死で福を呼んでませんでしたね」
「今からでも遅くないだろ?」
「う~ん、まあいいです」
「どうして?」
「だって……」
――いつも隣にいてくれるから。
なんて面と向かって言えるはずもなく。
「……ま、言うだけ言っておきますか」
訝しげに首を傾げる隙をついて、先輩の耳に顔を近づける。
そこら辺の福には聞こえないように。
彼にだけ聞こえるように。
「福は内……ですからね?」
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