13話.長い、長い。

 真っ白な雪の中を歩く先輩の姿は今まで見てきた先輩のどの姿よりきれいだった。それはもう目を離せないくらいだった。

 「千花。私ちょっと恥ずかしいんだけど。」

 「あ、ごめん。あまりにもきれいだったもので。」

 あたしは正直にそう言った。すると先輩の頬はさらに赤くなっていった。白い雪と赤い先輩の頬と黒い先輩の髪。あたしが顔だけ見る女とかそういうわけではないのだけれどこれはあまりにも反則めいたきれいさではないのだろうか。

 「それより、映画は何にしようか。」

 先輩は話題を変えるために本来の目的の話をし始めた。

 「私はあまりこういうのに好き嫌いしないほうだからどれを見てもいいのだけれど。」

 「あたしは先輩と一緒なら何でもいいかな。」

 先輩は少し困ったように笑う。結局、あたしたちが見た映画は海外のロマンス映画だった。はじめてのデートはやっぱり定番かなと思ってあたしが進めたら先輩はちょっと嬉しそうだった。

 結果的には映画の内容はあまり覚えてない。その代わりに先輩ともう一度長いキスをした。息苦しくなるくらい長い、長いキスをした。



 映画を見たのか、千花を見たのか、正直よくわからない。映画の内容なんて覚えてない。只々、この幸せが長く続くことだけを願った。

 映画を見た後に私たちは家の近くの行きつけの店に行って晩御飯を食べた後にコンビニにより缶ビールを買って家に帰った。苦手な酒を飲むことにしたのは千花ともっと一緒のことを共有したかったからだろう。千花ともっと一緒にいたい。千花ともっと一緒のことがしたい。千花ともっと一緒のことを楽しみたい。ただ千花と一緒がいい。前よりもっと強くそう願うようになった。たぶんもう私の感情を隠さなくてもいいようになったからだろう。でも酒は少し無理だったみたいだ。

 「先輩、大丈夫?」

 「大丈夫、大丈夫。全然平気。まだ一杯しか飲んでないじゃない。」

 実は本当にお酒が苦手でもう無理かもしれない。でもそれを自覚しているということはまだ大丈夫ということではないだろうか。

 「あまり無理しなくてもいいよ。」

 そう言いながら千花は私に軽くキスをした。

 「でも…。」

 「いいの。あたしのためにちょっと頑張ってくれてたのも知ってる。でもあたしのために何か無理したりはしなくてもいいの。」

 そう言ってから千花は私を強く抱きしめた。そして言った。

 「正直なところ、先輩にもっとわがままを言ってもっといろいろしたいけど、先輩が何かを我慢したり強がる必要はないからね。あたしのわがままが気に入らないのならいつでも言っていいからね。」

 その言葉に千花は私よりも大人だなとふっと感じた。

 「でも先輩と行きたかったことやしたかったことはいっぱいあるから覚悟はしておいて。まずは遊園地にしようかな。」

 そう言った千花はにっこりと世界で一番かわいい笑顔を私に見せてくれた。

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