第14話

「キャー」と突然女性の悲鳴が聞こえた。小川さんの声だ。そしてなにかを叩くような音が続けざまに聞こえる。私は瞬時になにが起きているか悟り、眠気でふらつく足下も気にせずに廊下に飛び出した。そこでは目を疑うような出来事が起きていた。平山が小川さんを押し倒して、服を脱がせようと覆い被さっていたのだ。

「ねえ、止めて! ママをぶたないで!」小さな娘が母親をかばおうと平山のうでにしがみつくように両手で押さえようとしていたが、まったく刃が立たない。

「おい、お前一体なにをしている!」私は思わず大声をはり上げた。できるだけ相手がひるむように未だかつて無いくらい肺から息をはきだした。だが、それでも相手は全くひるもうともしなかった。なんとかしなければいけない。考えている余裕は無かった。私は彼に飛びかかろうと勢いをつけて飛び上がったのだが、普段の運動不足がたたりこういう肝心なときに巧く身体がうごかない。勢い余ってあらぬ方向に突進してしまい壁に激突してしまった。頭をいやという固いコンクリートに叩き付けてしまった私は、余りの激痛にその場に蹲るしか無かった。必死に母親をかばおうとする娘の抵抗が煩わしくなった、平山は腕にしがみつく彼女を殴って払いのけた。あまりの事でビックリした少女は声も立てずに泣きだした。そんな事は気にもせず彼は彼女のズボンを剥ぎ取り、彼女の足を広げようとしたが、小川も必死に抵抗するためなかなか平山の思うとおりにはならなかった。やがてこの騒ぎを聞き付けた者達が廊下に出てきた。だが、か弱い女性ばかりだ、なかなか彼女を助け出すまでに至らない。

「おおい! なにが起きている! 何の騒ぎだ!」恐らく長谷川部長だ。この騒ぎが二十四階まで届いたのだろう。だが防火扉はロックされて外から開けることが出来ない。

「くそったれめ!」私の中でなにかが始まったように感じた。激痛も未だ癒えぬのに、私は彼に向かって突進した。なぜか身体が軽やかにうごいた。そうして私は彼に体当たりを決行した。またしても勢いを付けすぎた! 失敗したと感じたが、彼の顎に巧く私の膝がヒットし暴漢と化した平山の顎を砕き、彼の襟首をむんずと掴んで天井に彼を叩き付けた。 いや正確に言えば彼と一緒に天井に叩き付けられた。

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