何事もなく城に着くと、シーフ様が衛兵たちを下げた。

 下げている間に、フォーカスがボクとお母さんは城というか、人間の世界では家に近い場所に入った。


 城(家)の中は木を基調としていて、整理整頓ができている場所。

 主にエルフ語で書かれている本が棚にあり、机の上には何かの書類のような紙が山のように積んであった。

 机の上には他にシーフ様とフォーカスと女性のエルフが写っている写真もある。


 王様だから大変なんだよな、それにしても綺麗にしているな。

 本当にお母さんにも見習ってほしいよ。


 ここでボクはエーゴという魔族の飼っている生き物のことを思い出す。


「そういえば、お母さん。エーゴといって魚みたいな気持ち悪い生物はどうなったの?」


 お母さんがそっぽ向く。

 寒気がしているのか、震えていた。

 アレが逃げられると面倒だなと思っていると、フォーカスが代わりに答えてくれた。


「大丈夫よ、あの生物なら私が殺したから安心して。それより、お互いに情報交換しない? こちらも知っていることを全て話すわ。だから、そっちも知っていることを話してくれる?」


 ボクは前とは対照的な態度に困惑しながら問いかけた。


「その前に一つ訊きたいことがある。さっきと態度が違うけど……」

「相、変わらず用心深いのね。簡単な話よ。私も“ライジング”の力を持っているの。で、フーゴさんの声で“アレオは味方”だって聞こえたの。だから、信用したの。他にも情報を持っているでしょう。早く教えて」


 ボクはフーゴさんらしき人のことを思い出す。


 じゃあ、あの人はフーゴさんだったのかな?

 いやでも、憧れていたけど邪神の信者で救ったという言い伝えもあるしな。

 全能神の信者に殺されたというのもあるからな、信用していのかな?


 言い伝えを思い出していると、そのことで聞こうとしたらお母さんが割って入ってきた。


「それより、私の夫であるゼロは今どこにいるのですか?」


 フォーカスは首を傾げる。

 お母さんは続けて訊いてきた。


「最近、人間の政府の人が来ませんでした?」

「あ~、来ましたよ。だけど、魔族の可能性があるから今は牢に入れてありますよ」


 ボクは同じ牢に居た人のことを思い出す。

 お父さんかどうか分からないので、開いた口が塞がらないお母さんの代わりに告げた。


「その人の中でボクたちと同じように“ライジング”を持っている可能性があるから案内してくれる?」


 ボクは急いで魔力探知を使い、魔族がいないなのか確かめた。

 すると、牢の場所に魔族が近付いていることに気付いた。


 シーフ様とフォーカスが玉座に着こうとしていたが、ボクは城(家)の中から出た。

 フォーカスが叫びながら追いかけてきた。


「アレオ! どこに行くの?」

「魔族が牢に向かっているみたいだからボクが確かめに行ってくる!」


 魔力探知を使いながら走ると、ボクが捕まったらしい場所に着く。

 すると突然、見ている景色が波みたいに揺れ変わり始め、フーゴさんらしき人に出会った場所に戻った。


「え!? どういうこと?」


 と言いながら、ボクはしばらく唖然としていた。

 動揺していると、後ろに気配を感じて振り向いた。

 そこには、お母さんとフォーカスがいた。


「え? ここはどこなの?」


 フォーカスが疑問に思っていることを口に出していた。

 ボクは説明しようか迷ったが、ここでは魔力が減ってしまうので、あたふたしているフォーカスにはっきりと言った。


「フォーカス、突然で悪いけどやり直したいと思ってくれる? 時間がないから早く思ってくれる?」


 ボクの強い信念が届いたのか、フォーカスは頷いた。

 お母さんは思ったのか、もうここには居なかった。

 ボクも即座に思って、エルフたちと会う前の時間前にまで戻った。


 戻ってみると、何故かフォーカスも同じ場所にいた。

 二人して指してお互いに状況把握をしようと思ったが、同時にお母さんが何処にもいないことに気付く。

 急いで魔力探知を使ってみると、お母さんはエルフがいた場所に向かっている。


 お母さんはトラブルメイカーだからな、面倒なことを起こしそうで怖いな。

 だけど、まだ誰にも遭遇していないな。


 不安要素しかないので、ボクはフォーカスに頼みごとをした。


「フォーカス、悪いんだけどさ、ボクを風魔法で飛ばしてくれる?」

「別にいいけど、どうして?」


 ボクは嫌な予感がすることを伝えるべきか迷った。

 話すと面倒くさいことになりそうなので、他の弁明をした。


「お母さん、方向音痴なの」

「本当に言っているの?」


 あながち嘘でもないことを言ってボクは頷き、彼女より若干早く走る。

 すると、彼女も風魔法でボクを投げて一直線でお母さんの元に飛んだ。


 木にぶつかりそうな時もあったが、魔法で飛んできたフォーカスが無理矢理向きを変えて当たらなかった。

 絶叫しながらボクは、お母さんの元に着いた。


 さっきのお母さんの気持ちが解った気がする。

 確かに、あんまりやりたくないけど、あの時よりは酷くないか?


 半場、口から吐きそうにもなったが、抑えてお母さんに向けて叫んだ。


「大丈夫、お母さん?」


 そこに着くと、そこには魔族たちを氷魔法で拘束している彼女の姿があった。

 お母さんはブイサインをしながらボクを見る。

 後から追い付いてきたフォーカスにもやって、ボクは空いた口が塞がらなくなった。

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