7
何事もなく城に着くと、シーフ様が衛兵たちを下げた。
下げている間に、フォーカスがボクとお母さんは城というか、人間の世界では家に近い場所に入った。
城(家)の中は木を基調としていて、整理整頓ができている場所。
主にエルフ語で書かれている本が棚にあり、机の上には何かの書類のような紙が山のように積んであった。
机の上には他にシーフ様とフォーカスと女性のエルフが写っている写真もある。
王様だから大変なんだよな、それにしても綺麗にしているな。
本当にお母さんにも見習ってほしいよ。
ここでボクはエーゴという魔族の飼っている生き物のことを思い出す。
「そういえば、お母さん。エーゴといって魚みたいな気持ち悪い生物はどうなったの?」
お母さんがそっぽ向く。
寒気がしているのか、震えていた。
アレが逃げられると面倒だなと思っていると、フォーカスが代わりに答えてくれた。
「大丈夫よ、あの生物なら私が殺したから安心して。それより、お互いに情報交換しない? こちらも知っていることを全て話すわ。だから、そっちも知っていることを話してくれる?」
ボクは前とは対照的な態度に困惑しながら問いかけた。
「その前に一つ訊きたいことがある。さっきと態度が違うけど……」
「相、変わらず用心深いのね。簡単な話よ。私も“ライジング”の力を持っているの。で、フーゴさんの声で“アレオは味方”だって聞こえたの。だから、信用したの。他にも情報を持っているでしょう。早く教えて」
ボクはフーゴさんらしき人のことを思い出す。
じゃあ、あの人はフーゴさんだったのかな?
いやでも、憧れていたけど邪神の信者で救ったという言い伝えもあるしな。
全能神の信者に殺されたというのもあるからな、信用していのかな?
言い伝えを思い出していると、そのことで聞こうとしたらお母さんが割って入ってきた。
「それより、私の夫であるゼロは今どこにいるのですか?」
フォーカスは首を傾げる。
お母さんは続けて訊いてきた。
「最近、人間の政府の人が来ませんでした?」
「あ~、来ましたよ。だけど、魔族の可能性があるから今は牢に入れてありますよ」
ボクは同じ牢に居た人のことを思い出す。
お父さんかどうか分からないので、開いた口が塞がらないお母さんの代わりに告げた。
「その人の中でボクたちと同じように“ライジング”を持っている可能性があるから案内してくれる?」
ボクは急いで魔力探知を使い、魔族がいないなのか確かめた。
すると、牢の場所に魔族が近付いていることに気付いた。
シーフ様とフォーカスが玉座に着こうとしていたが、ボクは城(家)の中から出た。
フォーカスが叫びながら追いかけてきた。
「アレオ! どこに行くの?」
「魔族が牢に向かっているみたいだからボクが確かめに行ってくる!」
魔力探知を使いながら走ると、ボクが捕まったらしい場所に着く。
すると突然、見ている景色が波みたいに揺れ変わり始め、フーゴさんらしき人に出会った場所に戻った。
「え!? どういうこと?」
と言いながら、ボクはしばらく唖然としていた。
動揺していると、後ろに気配を感じて振り向いた。
そこには、お母さんとフォーカスがいた。
「え? ここはどこなの?」
フォーカスが疑問に思っていることを口に出していた。
ボクは説明しようか迷ったが、ここでは魔力が減ってしまうので、あたふたしているフォーカスにはっきりと言った。
「フォーカス、突然で悪いけどやり直したいと思ってくれる? 時間がないから早く思ってくれる?」
ボクの強い信念が届いたのか、フォーカスは頷いた。
お母さんは思ったのか、もうここには居なかった。
ボクも即座に思って、エルフたちと会う前の時間前にまで戻った。
戻ってみると、何故かフォーカスも同じ場所にいた。
二人して指してお互いに状況把握をしようと思ったが、同時にお母さんが何処にもいないことに気付く。
急いで魔力探知を使ってみると、お母さんはエルフがいた場所に向かっている。
お母さんはトラブルメイカーだからな、面倒なことを起こしそうで怖いな。
だけど、まだ誰にも遭遇していないな。
不安要素しかないので、ボクはフォーカスに頼みごとをした。
「フォーカス、悪いんだけどさ、ボクを風魔法で飛ばしてくれる?」
「別にいいけど、どうして?」
ボクは嫌な予感がすることを伝えるべきか迷った。
話すと面倒くさいことになりそうなので、他の弁明をした。
「お母さん、方向音痴なの」
「本当に言っているの?」
あながち嘘でもないことを言ってボクは頷き、彼女より若干早く走る。
すると、彼女も風魔法でボクを投げて一直線でお母さんの元に飛んだ。
木にぶつかりそうな時もあったが、魔法で飛んできたフォーカスが無理矢理向きを変えて当たらなかった。
絶叫しながらボクは、お母さんの元に着いた。
さっきのお母さんの気持ちが解った気がする。
確かに、あんまりやりたくないけど、あの時よりは酷くないか?
半場、口から吐きそうにもなったが、抑えてお母さんに向けて叫んだ。
「大丈夫、お母さん?」
そこに着くと、そこには魔族たちを氷魔法で拘束している彼女の姿があった。
お母さんはブイサインをしながらボクを見る。
後から追い付いてきたフォーカスにもやって、ボクは空いた口が塞がらなくなった。
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