5
身体強化を使い、お母さんを再びボクが背負って向かっていると、すぐにハージに着いた。
ハージ村を見てボクは安堵の溜め息をつく。
だが、村に着くと反感を買ったかのように、一部の衛兵はボクたちのことを睨んできた。
ハージ村は、人間の街と違い自然のものを多く使っている。
主に木材の家は木一本の内、対の太い枝との間に一件ある。
その中でも、大樹にある家がシーフ様の家(城)だろうとボクは思った。
エルフの村に来たことはあるが、前と違って見ている景色が違う。
身長が違うのもあるだろうが、それよりも家の損傷が少ないことだ。
未来で見たときは魔族に襲われたシーフ様が亡くなり、村は壊滅状態にあったからだろう。
色々と観察をしていると、フォーカスの目が覚めたのか彼女の声が聞こえ始める。
「え!? ここは何処なの?」
「フォーカス様、ここは馬車の中です。どうか、落ち着いてください」
等の会話が聞こえてきたが、その時――。
お母さんの目が覚めたかのように声が聞こえてきた。
「う……ん? あれ、ここ……は?」
「お母さん、目が覚めたの? ここが何処だか分かる? もうボクの魔力がゼロに近いから自分で動ける?」
お母さんを下ろすと、ボクは後ろを向いて訊く。
混乱しているのか、お母さんはしばらく考えているかのように黙っていた。
だが、突然――。
「アレオ! 何であんなことをしたの? 私、あんなのもうイヤだからね!」
と叫んできた。
ボクは手を合わせて謝る。
「ゴメン、お母さん。だけど、魔族を捕まえるための機会だと思ったからさ」
「……まぁ、確かにね。それでどうなったの?」
ボクは首を振る。
お母さんはボクの肩を置いたと思ったら、怒ったように額に青筋を入る。
「つまり、アレオの努力は無駄に終わったのね。どうしてくれるの?」
「で、でも、シーフ様に会えたから大丈夫だよ。これから話をするしさ」
刹那――。
お母さんがボクに耳打ちをしようとしてきた。
「うん? どうしたの?」
ボクは半場無理矢理離れる。
お母さんが辺りを見渡した。
「シーフ様というのはどんな格好をしていたの?」
首を傾げるボク。
シーフ様の格好を思い出して、うろ覚えであったが告げた。
「王様のような王冠を頭にしていたよ。後は、緑の基調としている服装で黄金色のボタンなどの装飾があった気がするよ。それが、どうかしたの?」
お母さんも首を傾げる。
ボクは情報交換しようと思ったが、お母さんが何かブツブツ言っていた。
「お母さん! とりあえず衛兵たちの後を付いて行こう。シーフ様が城に招待してくれるって」
「……あ! うん」
ボクとお母さんは衛兵たちの後を付いていこうとすると、何処からか殺気を感じた。
咄嗟にボクは身構える。
この殺気は魔族の幹部のものであった。
名前は出てこないが、ボクがいた未来では倒したはずだ。
すぐにボクは魔力探知を使ってみると、何の反応もなかった。
辺りを見渡しても、何も感じない。
あれ、ボクの気の所為かな?
いやでも、今の殺気は魔族の幹部のものだよな?
「どうしたの、アレオ?」
「いや、ボクの気の所為かも」
ボクは警戒をしながら、お母さんの手を握る。
お母さんの手も震えていた。
どうしたのかな、前で何か起こったのかな?
等、疑問を抱いていると、ボクは金魚のフンのように衛兵たちの後ろについて行く。
出店がある商店街のところまで行くと、村にいるエルフたちも家の中から警戒してボクたちの事を見ていた。
何せ、魔族が出たという影響もあるから他の種族でも怖いのだろう。
突然、目の前にフォーカスが現れる。
考え事をしていたボクは驚いて少し仰け反ってしまう。
「お父様のところに行く前に、ワタシと話をしない? アレオとミクサさんでいいのかしら?」
ボクの名前を知っている?
それに、お母さんの名前も?
驚いて、ついボクは口が出せない状態になってしまった。
続けてフォーカスがボクを指差して言った。
「その前に、アンタさミクサさんのお子さんなの? 本当は魔族なんかじゃないの? だから、未来でお父様やワタシたちエルフを皆殺しにした。違う?」
「さっきから何を言っているんだよ? ボクには全く分からないよ」
フォーカスが重い溜め息をつくと、すぐにお母さんを触り始めた。
離したと思ったら、彼女はお母さんに訊ねる。
「ミクサさん、アレオは本当にあなたの子供ですか?」
「え!? そうだけど、どうしたの? その前に私の名前を言いましたっけ?」
驚いた顔になるフォーカス。
続けて訊いた。
「え!? 本当ですか? 嘘は言っていませんよね?」
「アレオ、この王族の子は何を言っているの? どうしてこんなことを疑うのか教えてくれる?」
フォーカスとミクサがほぼ同じタイミングでボクを見てくる。
ボクを見られても解らないよ。
第一、どうしてフォーカスはお母さんのことを知っているんだ?
話したことはあったけど、覚えているはずがないしな。
ボクも首を傾げた。
そんな感じで話していると、エルフの衛兵が叫びながらこちらに向かってきている。
「た、大変です、フォーカス様! 王様が!」
「父上がどうしたのです? 申してみなさい!」
衛兵が息を整えなおしてはっきりと告げた。
「意識を失われました! 急いで、来てください!」
ボクたちは急いでシーフ様の元に向かった。
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