異世界へようこそ

@MrROBO

ハローニューワールド!

第1話


見渡す限りの青。

気付いたら俺はそこにいた。


「…え!?」


動揺した。全く身に覚えがなかった。

何故自分がこんなところに…?

必死に思い出そうとするが思い出せない。

飛行機に乗って旅行中だったわけでも、部屋の壁が全面青にされたわけでもないだろう。

それに今見たら床がなんかモヤモヤしてる。

まるで雲だ。


「…えぇ?」


チョットマッテ、マッテクダサイ。

完全に雲ですよね、これ!?

まずは落ち着こう。状況把握をしたい。

俺、林田達平は高校3年生の18歳だ。母親と弟と妹を合わせた4人家族。今は学ラン姿。

センター試験も終わり進学先が決まっていた俺は消化試合となった残りの学校生活を自堕落に過ごしていたはずだ。

平日は家と学校を往復、休日は家で動画鑑賞が日課。

最後の記憶も変わらない。学校から無事帰宅してゲームをしていた。

いつもと違うところがあるとすれば母親に激怒されたことだ。そこで俺は居心地が悪くなって家から飛び出した。そしてマンションの屋上まで逃げて俺は…。


「死んだんだった、俺」


急にストンと心の中に事実が降りてきた。

眼前に迫るコンクリートの地面を思い出したが、未だ受け入れられない。

だとしたらここは天国なのだろうか?

俺がうんうん唸っていると…


「気が付いたか、青年よ」


目の前に2メートルは優に超える老人が現れたのだ。

真っ白な布の様なものを見に纏っている。古代ギリシャ神話で見たことがある気がする。

顔もほぼ真っ白、なぜなら立派な髭と長い眉毛に覆われていたからだ。なんか指輪物語に登場する白の魔法使いさんに似てる。

そのお爺さんが厳格な声で喋り出した。


「儂は神である。青年よ、おぬしに転生のチャンスを与えるために儂はここにいる」


ここにいる自称神様が言うには前世が不幸だった人にこのまま輪廻へと還るか、転生するかの選択を一度だけさせてくれるらしい。

転生ってあれかな?異世界で生まれ変わって無双するやつ?

まず、俺の前世って不幸だったっけ…?

父親がいないものの母親が優しくも厳しく育ててくれた。死ぬ直前にも怒られたが、それは最近のスマホ使用時間を心配してのことだと思う。

弟も普通。特徴があるしたらテニスが上手いことだろうか。

妹はグレて高校中退、その後は独り立ちするためにバイトをしていた。

他と違ったのは未成年にもかかわらず、酒を飲み喫煙者だった。だから俺は妹には不干渉だったし妹も俺には興味がなさそうに家ですごしていた。


少し引っかかるところもあるが、俺は転生する道を選んだ。

夢に見た転生だ、断る理由はない。

転生にはいくつか持っていける特典があるらしい。

俺は真っ先に恵まれた容姿と大金を要求した。

恵まれた容姿は単純にモテたいからだ。色んな女の子とイチャイチャしたい、グヘヘ。

おっと失礼。

大金はまぁ、いくらあっても困らないからだ。金は時なりだ。

まだ欲しい特典はたくさんある、俺がどういう風にしようか悩んでいると…


「それでは旅立つのだ、青年よ!

おぬしを儂は見守っているぞ!」

「え?ちょっ、まっ…!?」


両腕を胸の前に大きく広げ、地の底から響く声で急にそう言った。

すると突然、雲の床に黒い穴が開いた。

2つしか特典選べてないんだけど!?

そう文句を言おうとした瞬間、重力に従って急速落下していった。


「るぉおおおおお!?」


野太い悲鳴を上げながら俺は暗闇に落ちていった。

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