第48話
──東方海上を臨む、魔導大陸港湾地区。
現在この広大なる一帯は、陸も海も空も、敵味方入り乱れての、大乱戦のまっただ中となっていた。
「──He343ジェット爆撃機、3機目を撃墜されました!」
「護衛の第44戦闘団のMe262は、一体何をやっている⁉」
「海軍の臨時連合艦隊の援護のため、敵パルスジェット特攻機『
「現在He343の守備は、夜間ジェット戦闘部隊『ベルダー』の、Me262B−1a/U1が、担っております!」
「……夜戦部隊だけでは、とても機数が足りないが、艦隊護衛を優先するのは、やむを得ないか」
「しかしまさか、
「『梅花』もですよ、あれも『あちらの世界』の史実では、計画機段階だったんでしょうが⁉」
「すべては、史実無視の架空戦記的、ソシャゲが悪い!」
「……敵さんって、『艦○れ』でもやっているのか?」
「何その、よりによって『セイレーンが艦○れをやる』とかいった、世界観が拗れに拗れまくった、『鏡○海域』は?」
「──馬鹿なことを、くっちゃべっている、暇なんて無いぞ!」
「ったく、これじゃ、キリが無いぜ!」
「いくら敵のジェット戦闘機や特攻機を撃墜しても、何とパイロットである
「軍艦が軍艦に乗り込んでくるなんて、アリなのか⁉」
「いやそもそも、軍艦擬人化美少女が、軍用機に乗って出撃してくること自体が、おかしいのでは?」
「……まあ、一応、わざわざ擬人化したんだから、そのような反則技的運用をするのも、ある意味正しいとは言えるが」
「これも、某ソシャゲの、アニメ版が悪い!」
「あれって平気で、空母が空を飛んだり、自分の艦載機に乗ったりするからな!」
「しかも、いくら原作ゲームファンがうるさいからって、至近距離で弓矢に射抜かれても死なないなんて、『謎の不死身設定』もあるしな!」
「くそっ、結局我々は、軍艦擬人化美少女の、『真の恐ろしさ』というものを、見誤っていたと言うことか⁉」
「──ああっ、そんなことを言っている間に、本命のすでに『清霜』への軍艦擬人化を果たしていた、量産化
「……な、何て数だ、これでは現在の我々の兵力じゃ、とても抑えきれないぞ!」
「──援軍は、援軍は、まだなのか⁉」
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
──同時刻、同港湾内海上、魔導大陸特設海軍臨時連合艦隊、旗艦『ビスマルク』、第一艦橋。
先程から、無線通信モニター用スピーカーから、ひっきりなしに流れてくるのは、我々海軍と共同作戦を遂行中の、特設空軍パイロットたちの絶望に満ちた、悲鳴のごとき怒鳴り声の数々であった。
それも、当然であろう。
魔導大陸特設国防軍の各施設に分離拘束していた謎の敵性存在である、『量産型
何と、新手のセイレーンの軍勢が──しかも、ジェットエンジン駆動の最新の航空部隊が、突然現れたのである。
一つは数十機の、『
かの高名なる旧日本軍の試作
それがまさしく不意を突くようにして、当方の航空隊に襲いかかってきたものだから、多数のジェット爆撃機のHe343や地上襲撃機のMe262A−2a/U2が撃墜されてしまったのであった。
当然慌てふためいて迎撃に向かった、Me262A−1aやHo229からなる護衛ジェット戦闘機隊であったが、その隙を狙っていたように、今度は守りが手薄となった我々連合艦隊向かって、無数のパルスジェットエンジン駆動の新兵器『
何せ、地上の標的を攻撃することを目的とした、海空連合部隊なのであって、護衛戦闘機の機数等の航空戦力に対する備えは万全ではなく、ジェット機とはいえ格闘能力がまったく無い大型4発爆撃機のHe343は、敵からしたら単なる『的』に過ぎず、あっという間に為す術も無く、多数機が撃墜されてしまった。
更に航空攻撃こそが最大の弱点の、海上の各艦船に至っては、敵のパルスジェット機による文字通りの命知らずの特攻に対しては為す術も無く、やられ放題の有り様となっていて、すでに小型の駆逐艦なんかは、戦闘継続が不可能な大破状態に陥っていた。
しかもやっかいなことに、撃墜されたり自爆をしたりして、本来なら戦死等で無力化されたはずの敵パイロットについても、まだまだ油断がならなかった。
何と、不定形暗黒生物『ショゴス』によって構成されている量産型
だからこそ一撃で完全に破壊し尽くそうと、多数の爆撃機や大口径の砲門を有する軍艦を出動させたというのに、それらをまともに使う
──くそっ、とにかく幼い少女の姿をしているものだから、『的』としては小さ過ぎて攻撃がしにくく、しかもこちら側の軍艦の甲板によじ登ってきて、遠慮無しに『艦砲射撃』を四方八方にぶちかますものだから、どんどんとこっちの被害が累積していくばかりではないか⁉
そのように、あまりに絶望的な状況に、このビスマルクの艦長であり、今回の臨時連合艦隊の総司令官でもある私こと、カーラ=デーニッツ新提督が、胸中で密かにぼやいた、まさにその刹那、
「──特設空軍ジェット偵察部隊、『ブラウェク』より報告! ついに軍の施設から脱走した量産型
「な、何ですってえ⁉」
──まさか、こんな時に来るなんて、最悪のタイミングじゃないの⁉
「……やはりすべては、
その時、私がこぼしたつぶやき声は、誰にも聞きとがめられることは無かったものの、
──実はこれこそが的を射ていたことは、仮にも一軍の指揮者としての、『勘』の賜物であったのだろうか。
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