第19話
世界宗教『聖レーン転生教団』総本山、聖都『ユニセクス』、教皇庁地下最深部に極秘に設置されている、『
──その中央にて、あたかも巨大な樹木であるかのようにそびえ立っている、教団が極秘に開発に成功した、
このような異常極まる状況だというのに、少しも臆することなく、彼女──否、『彼』へと向かって言葉をかける、私こと、転生教団異端審問第二部、『異端転生者』取り締まり専任司教、ルイス=ラトウィッジ。
「……まったく、ジャヴァ司祭、あなたらしくもありませんな? 確かに今回の
そのように、
『……申し訳ございません、ラトウィッジ司教。相手の力量を、完全に見誤っておりました』
──それは、いまだ年若い女性のものとは到底思えない、しわがれた男口調の声音であった。
「ほう、
『いえ、本人の戦闘
「転生教団における『召喚術士判定試験』においても、『A+』をたたき出したというのに、実際はそれ以上だったと言うのですか? ふむ、小賢しき鼠めが、わざと実力を隠していましたね」
『はい、あやつが召喚したのは、「キヨシモ」という名称の少女型の兵器で、己の右腕を
「大砲を武器にする、キヨシモ、ですか?」
『ええ、そのようなことを申していた、人工的な音声が聞こえたのとほぼ同時に、
「──いえ、今のところは、それで十分です、ご苦労様でした、もう
『はっ、
文字通りにその言葉を最後に、ガクリと力無く
……おやおや、
やはり最近の訓練不足の『巫女』では、一定時間以上の集合的無意識とのアクセスは、耐えきれないようですねえ。
──まあ、お陰で必要なデータを、『死者の記憶』から得ることができたので、良しということにいたしましょう。
「……それにしても、『あちらの世界』のかつての大日本帝国海軍の、一等駆逐艦
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「──もう、いい加減に、してくださいいいいいい!!!」
そのように、「──いいいいいい」という残響を置き去りにして、ゴロゴロとした大きな岩石ばかりが転がっている広大な石切場の、遙か遠くへと吹っ飛んでいく、漆黒のシスター服をまとった、
そんな哀れなる姿を目の当たりにしながらも、まったく躊躇なく、続け様に遠距離艦砲射撃をお見舞いする、清楚なワンピースをまとった幼い女の子。
──彼女の華奢な右腕を
「ひええええええええええええええっ⁉」
盛大に絶叫しながら、爆風とともに弾き飛ばされて、今度はこちらへと戻ってくる、シスターさん。
……普通だったら、死んでいるか、さもなくば重症を負っていてしかるべきだが、彼女の素肌や衣服には、かすり傷一つついていなかった。
そして、むしろ元気いっぱいで鼻息も荒く、直接の加害者のワンピースの少女である、自称『大日本帝国海軍の誇る一等駆逐艦
「──ギブギブギブギブギブ! 降参! 降参いたします! もう、許してくださああああああああい!!!」
……お前はシスターではなく、『搾○病棟』の女ドクターか?
「いや、『泣く子も吊す』で高名な、聖レーン転生教団異端審問第二部の刺客が、そんなにあっさりと降参しないでくれよ。この先『血で血を争う逃避行』を繰り広げていこうと思っていたのに、のっけから『企画倒れ』になってしまうじゃん? あんたって、
「──無理無理無理無理無理、絶対に無理! もうその子の攻撃を、真っ正面から食らうのは、御免被るわ!」
「どうしてよ、こいつの攻撃は完全に防ぎきっていたし、ダメージのほうも全然無いみたいじゃない?」
「物理的肉体的な耐久度はともかく、精神的にはすでに限界だわ! 一体何なの、その子の攻撃って? 絶対に『対人戦』レベルでは無く、大規模な軍勢を相手にした、ガチの『戦争』レベルでしょうが⁉ そんなのまともに食らい続けていたら、いくら防御障壁で防ぎ続けていても、生きた心地がまったくしないものだから、先に神経のほうが参ってしまうわよ!」
「……あー、さすがは、戦闘のプロ、やはり見抜かれたか。こいつは『あちらの世界』で駆逐艦と呼ばれる、自分より巨大かつ強大な戦艦や航空母艦の護衛役を担って、多数の軍艦入り乱れての大規模海戦において、敵の戦艦と我が身を省みずに渡り合うといった、攻撃力に全振りした、いわゆる『
「戦争は戦争でも、大規模制海戦闘かよ⁉ そんなもの、少々防御魔術が得意なだけの一個人が、太刀打ちできるわけがないだろうが⁉ ──しかも、何その子? そんな小さな身体でありながら、弾薬がまったく尽きずに砲撃し放題なのは、一体どういった仕組みなの⁉」
「──うっ」
やっぱり、そこを突いてきたか。
……そりゃあ、気になるよなあ。
「い、嫌だなあ、シスターさん。軍艦擬人化美少女は、ある意味『魔法的存在』なんだから、そこら辺のところを追及しちゃあ、無粋ってもんでしょうが?」
「──そんな、雑なごまかし方が、あるか⁉ 魔法的存在と言うのなら、魔術師である私も同様ですよ! しかしそれでも、個人が使える魔力には限界があって、防御障壁もいつまでも万全に張り続けられるわけではなく、だからこそ降参したのではないですか⁉」
くっ、すんなり、言いくるめられなかったか……ッ。
……仕方ない、面倒だが、一応説明してみるか。
しかし、この子が使用している砲門が、無限に砲弾が供給される、いわゆる『マンガ大砲』以外の何物でも無いことを聞いて、果たして納得してくれるであろうか?
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