第2話
凶暴極まる白オークたちの姿を見て、すぐさま手持ちの武器を構える、俺を隊長と慕う現地人部隊であったが、我が
「……ヒューマン族のチビどもが、いっちょ前にやるつもりか?」
「いいだろう、全員挽肉にしてやるぜ!」
「みんな、誰が一番数多くの虫けらどもをひねり潰せるか、勝負しようぜ!」
「はは、そいつはいい!」
「どうせ、俺が一番だけどな!」
「──いやいや、ちょっと待ってくれよ」
「そんなんじゃ、あっさり勝負がついて、おもしろくないだろうが?」
「そうそう、せっかく今まで生き残っていた、最後の一匹の
「せいぜい楽しまないと、もったいないじゃないか?」
「──ねえ、そうですよね、小隊長」
「……ぐふふ、そうだな、少々趣向を凝らすことにするか」
こちらの装備が取るに足りないものであるのを見て取り、絶対的優位を確信して、余裕綽々に言葉を交わしていく、十名足らずの『白きオーク』兵たち。
……出会い頭に問答無用に発砲されて、一気に片を付けようとしなかったのには助かったが、こいつらろくなことを企んでいないようだけど、一体何をするつもりだ?
くそっ、こっちは『千年以上も眠り続けていた、氷漬けの美少女』なんていう、とんでもないオーパーツを見つけてしまって、戦闘配置をとる暇もなかったというのに。
そのように、自分のすぐ真後ろにそびえ立っている、氷の柱の中で目覚めたばかりの謎の少女のほうへと、うらめしげな視線を向けるものの、なぜか『彼女』のほうは、アメリゴ兵のほうを、目を丸くしてしげしげと見つめていた。
「……何ですか、アレは? 集合的無意識での検索結果は、『オーク』と示しておりますが、まさかここは、21世紀の日本で大流行した、異世界系のWeb小説なんかでお馴染みの、剣と魔法のファンタジー世界じゃないでしょうね?」
うん? 相変わらず、『ニッポン』とか『イセカイ』とか『ウェブ』とか、妙ちきりんなことを言っているが、『オーク』のことは知っているのか?
超常的存在による、予想外のつぶやき声を耳にして、詳しく話を聞こうとした、まさにその時。
「──決めた、そこのヒューマンども、おまえらが
「「「なっ⁉」」」
隊長格のオークによる、ある意味予想通りの外道の言葉に、一斉に凍り付く、俺以外の反乱部隊。
「──おお、それはいい!」
「さすがは、小隊長!」
「何という、慈悲深さw」
「良かったな、原住民ども?」
「おまえらが生き延びられる、最後のチャンスだぞ!」
「さあ、目の前の、
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「「「──エブリバディ、キル・ザ・ジップ!!!」」」
まさしく惨めな敗残兵である俺たちのことを嘲るようにして連呼し続ける、アメリゴ兵たち。
それに対して、ついに堪えきれなくなった一人の青年の現地兵が、勇敢にも怒鳴り返した。
「ふ、ふざけるな! この侵略者どもが! オニヅカ隊長は、我々島民にとっての大恩人なんだ! たとえ殺されようが、隊長に銃を向けたりするものか!」
そう言い終えるとともに、サンパチ歩兵銃を構えようとしたところ、
「──だったら、死ね」
こちらの旧態依然とした小銃とは違って、ボルトアクションなぞ必要としない、ケルビン自動小銃の引き金をさも無造作に引き絞るや、ヒューマン兵をあっさりと蜂の巣にしまう、オーク兵。
「ビルマ⁉」
「き、きさまっ!」
「よくも、ビルマを!」
それを見るや、一斉に気色張り、おのおののサンパチをオークたちのほうへとに向ける、ヒューマン兵たち。
しかし相変わらず圧倒的優位な状況のアメリゴ側は、微塵も動ずることなく、へらへらと下卑た笑みを浮かべるばかりであった。
「おっと、無駄無駄、おまえらがその時代遅れの歩兵銃で、ちんたらとボルトアクションをやっている間に、こっちのケルビンが火を噴くだけだぜえ? 今お手本を見せてやったばかりだというのに、おつむの足りないやつらだな?」
「安心しろ、まだ『ゲーム』は有効だ」
「今からでも、そっちの
そう言いながら、こちらへと銃口を向ける、白きオークの熟練兵たち。
もちろん彼らの最新型ケルビン自動小銃は、ボルトアクションなぞ必要とはせず、ただ軽く引き金を引くだけで、俺たち全員を蹂躙することができるのだ。
──くそう、万事休すか。
「……村長」
「──駄目です! 同じことを、何度も言わせないでください!」
「そうですよ、隊長!」
「ここには、隊長をオークどもに売ってまで、生き延びようとするやつなんて、一人もいませんぜ?」
「そうでさ、ここは仲良く、あの世に参りましょうや!」
「きっとこことは別の世界では、
そのように、もはや覚悟を決めて、むしろほがらかな笑みすら浮かべながら言ってくる、俺にとって何よりも大切な『仲間』たち。
「……そうか、そうだな。俺もできるなら、一度だけでもいいから、そんな平和な世界を、この目で見てみたかったよな」
そのように、つい帝国軍人らしくもない、『心からの本心』をこぼすや、島民たちと息を合わせて、間違いなく先に撃たれてしまうのを覚悟の上で、銃のボルトを起こそうとしたところ。
「──
は?
突然聞こえてきた意味不明の言葉に、思わず振り向いたところ。
「──なっ⁉」
真後ろの氷塊の中で、謎の少女の裸身が光り輝きだして、更には氷の表面ではこれまで以上に、漢字やひらがなやカタカナや英数字が乱舞し始めていたのだ。
「──集合的無意識との、緊急アクセスを要求。大日本帝国海軍所属
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