第3話「1月29日」

迷いのある絵を、絵師仲間の職場の社長にアドバイスしてもらおうと思って、やっぱりやめた。


もう1度自分だけで描いてみたい。

下手な絵は見せたくないし。

へんな雅号をサインとして入れてるので、恥ずかしい。本名でサインすればよかった。


それに、決めつけかもしれないが、アドバイスを求めて見せたって「ベタ褒め」するばかりで、アドバイスはくれないだろう。


「スゴい優しい絵を描くね」とあのかたは長々と褒めちぎるだろう。


褒められたいんじゃない。

「批評」されたいのだ。

見せる人は選ばなければ。


でも、決めつけは良くないので、自分の雅号を消して絵を画像に納めた。

やっぱり、念のため見てもらおう。

次に絵が描ける日まで時間がありすぎる。


褒めるだけじゃないかもしれない。

恥ずかしいが、念のため念のため、淡い期待を込めて見てもらおう。


■■用語解説■■

雅号がごう=ペンネームとかの替わりに入れる格好いい名前のこと。落款らっかんと呼ばれる判子とセットでキッチリ入れると完成。

この雅号と落款がないとサインとして認められない。サインがないものは当然作品として成り立たない。

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