パワーショベル
メイトギア達が人間の真似をして暮らす集落を離れ、私とリリアテレサはさらに東を目指して歩く。するとまた、爆撃された都市の跡が見えてきた。
さすがにもう三回目ともなると、私もリリアテレサも泣いたりうずくまったりするほどのこともなかった。
もう二十年ほど経つというのにいまだに何とも言えない臭いが漂うそこを大きく迂回して進む。
すると遠くで、崩れかけていたビルが倒壊する様子が見えた。僅かに「ゴゴゴゴゴン」って感じの音も響いてくる。破壊され強度が落ちたビルが、風化に耐え切れなくなって、ほんの些細なきっかけで崩れるんだ。
何気なくその様子を見てた私達の視界の中に、よろよろと動く人影が。
CLS患者だ。
相当、処置した筈なのにまだこうやってどこからともなく現れるんだな。
リリアテレサが近くにロボットがいないか検索したけど、反応はなかった。ロボットの拠点になってるメンテナンス用のトレーラーの信号はあっても、ロボットの反応はない。仕方なく、リリアテレサは拳銃を用意してそのCLS患者の方へと歩いて行った。<処置>する為だ。
大人のCLS患者だったから、見た目には完全にゾンビだった。そんな姿のままうろつかせるのはさすがに忍びない。
こうやって出会ったのも何かの<縁>か。私達が安らかに眠れるようにしてあげないとね。
と思ったら、そのCLS患者は、爆撃でできたクレーターのすぐ脇を通ってたからか、足を踏み外してクレーターの中に姿を消した。
意表を突く展開に、私もリリアテレサも「え…?」と固まってしまう。さすがに私も気になって、リリアテレサの後を追って、CLS患者が落ちたクレーターを覗き込んでみた。
するとクレーターの途中で倒れてもがいてる姿が。
川に流されたCLS豚の時もそうだったけど、間抜けだなあ。もっとも、彼らには知性がないからそれも当然なんだろうけどさ。
そのクレーターは直径が優に二十メートル以上あって、深さはたぶん十五メートルくらいはあったかな。その斜面で蠢いてるCLS患者を拳銃で狙っても、変に動いてるせいもあってうまく命中しなかった。
そこでリリアテレサはリアカーまで戻ってショットガンを持ってきて。それでCLS患者を撃った。粒の大きな散弾がばらまかれるやつだから、狙いなんて適当でも大丈夫だ。
散弾の二~三発が頭に命中し、動きを止めた。
無理にこのクレーターに下りるのは危険だから、申し訳ないけど、埋めたりはできない。
と思ったら、都市の拡張工事をしてたらしいところにパワーショベルが見えた。もしやと思って近付いてみると、電源が入った。アミダ・リアクター搭載型の、多脚式パワーショベルだ。
リリアテレサがそれを操作して、クレーターの斜面に倒れているCLS患者に土をかぶせて埋めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます