狂気と狂気が出会うとき

HIASOBI

第1話 市川紗季

 現在15時12分。あと数分で4限目の文学の講義が始まる。講義前に着席しているほうが珍しい私だが、毎週火曜日の4限だけは誰よりも早くB棟の309教室に入室する。80人収容の中くらいの教室、ちょうど中央の列の1列後ろが私たちの定位置だ。


 スマホの画面は15時13分を示している。さっき時刻を確認してからまだ1分しか経っていなかった。彼から欠席の連絡は受けていない。私は教室を今一度見渡すが、いまだに彼の姿はない。最前列の担当教員と院生のTAが何かを話している。


15時14分。教室の扉が開いた。見慣れないポニーテールの学生が慌ただしく最前列右端の席に着く。


15時15分。始業のベルが鳴っても彼は現れなかった。出席に厳格な担当教員は教室の鍵を閉めてしまう。次に会えるのは週末だ。

絶対ノート見せてやんない、そう固く誓った。

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