第12話 報酬

 僕たちは迷宮から戻って来ると、その足でギルドに行き標的のゴブリンを倒した報酬をもらった。


 報酬の額は決して多いとは言えないらしいが、料理屋で思う存分、飲み食いするくらいはあると言う。


 なので、アッシュはもらった報酬は料理屋で使おうと言った。


 僕は自分の自由になるお金が欲しかったので、分け前を貰いたかったのだが、その思いは口にはしなかった。


 この仕事を完遂できたのはアッシュとエルザのおかげだ。僕一人だったら命が幾つあっても足りなかっただろう。


 だから、僕はギルドを出るとアッシュとエルザと一緒に歓楽街にある料理屋へと向かった。


「よーし、今日は旨い酒を飲みまくるぞ。久々に楽しい気持ちで仕事をすることができたからな」


 アッシュは料理屋の席に着くとメニュー表を広げながら大きな声で言った。


「でも、仕事は明日もしなければならないんだし、程々にしておきなさいよ、アッシュ」


 すかさずエルザが窘める。


「分かってるさ」


「ユウヤも食べたい料理はどんどん頼みなさいよ。ここで使うのはあなたの報酬でもあるんだから、遠慮はいらないわ」


「そうさせてもらいますし、なら、山賊スペアリブを食べさせてもらいます」


 今日はたくさん体を動かしたから、エネルギーのある物が食べたくて仕方がなかったのだ。


「ここの山賊スペアリブは旨いぜ。なんせ、十種類以上のスパイスが効いているからな」


 アッシュは俺はビールを大ジョッキで頼むぞと付け加える。


「へー」


「ついでにワインも頼めよ。スペアリブとの相性は良いぜ」


「何、言ってるのよ、アッシュ。ユウヤはまだ子供なのよ。お酒なんて飲んで良いわけがないじゃないの」


 エルザは良識的な言葉を口にする。

 

 それを聞いた僕は少しがっかりしてしまった。ワインの味を知らないわけではないので飲みたいなと思っていたからだ。


「そう固いこと言うなって。それで、ユウヤはこれからどうするつもりなんだ。当分は俺たちの仲間でいたいって言うなら歓迎するが」


 アッシュは僕の表情を窺いながら言った。


「でも、それだと、明日も明後日も迷宮に潜ってモンスターと戦うことになるわよ」


 それはちょっと嫌だな。


「そういうことなら、僕はしばらくの間、自分の家でゆっくりします。アッシュさんとエルザさんのおかげで、冒険者の仕事がどんなものかは分かりましたから」


 でも、冒険者の仕事はもっと奥が深そうだし、たった一回、仕事をしただけで分かったつもりになるのは止めた方が良いだろうな。


「そっか。でも、また俺たちの仲間になって仕事をしたいって思ったらいつでも言ってくれよな」


「はい」


 僕はとりあえず食事を終えたら自分の世界に戻ろうと思う。


 いつまでも自分の世界での生活をほったらかしにしておくのは気が引けるからな。


 別に焦らなくたって異世界での生活は逃げやしない。

 

 その後、僕は思う存分、異世界の料理に舌鼓を打ち、アッシュとエルザも楽しそうに話をしながらお酒を飲んだ。



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