第87話 ガチギレ案件
ー 私の事をいかがわしい目で見てた人だよっ! ー
メロアがそう発言した瞬間、まるで時が止まったかのように場が凍り付いた。
「あ?あぁっ!?ち、ちげーし!そんな目で見てねーし!」
槍玉にあがったジンは凍った時間を無理やり溶かす。
メロアの妄言や戯言だとキレ散らかしているが、図星を突かれて焦っているようにもみえた。
「そうよ!思いあふがるんなよブス!」
同調してさな姫がメロアを罵倒する。
「む。でもジンさん前私に言いよるーー」
「うっせえ!黙れ!」
「きゃっ!」
ー ヒュゴォオッ! ー
さな姫の言い方に少し頭にきたメロアは言い返そうとし、自身の秘密(メロアに言い寄った挙句振られたこと)を公然の前で蒸し返されそうになったジンは物理的に黙らせようとフランベルジェを勢い良く振るう。
ジンの怒号に一瞬怯んだメロアは反応が遅れ、迫りくる刃に為す術がなかった。
ー ギィイイン! ー
しかし、その狂刃が彼女を襲う事は無かった。
「チィッ、もう1匹の黒騎士か!」
ジンは忌々しそうに舌打ちをして、自身の愛剣を籠手盾で受け止めている目の前の騎士を睨みつける。
ー ギィイン! ー
「ふっ!」
「っ!」
ー ヒュッ! ー
もう1匹の黒騎士ことユウはジンの悪態に応じず、無言のまま受け止めていた籠手盾の角度を変え、フランベルジェの刃を滑らせるようにいなし、隙ができた胴体へと片手剣を振るう。
しかし、ジンの方も場数を踏んできたのか、
(前はニカさんに瞬殺されてたけど・・・強いな)
ユウは内心焦る。
単騎先行している小次郎は確かに強いが、相手となる宮本武蔵もまた強く、彼の周りの護衛や敵プレイヤーも強力に違いない。
小次郎に追い付いて援護する為にも、ここで長時間の足止めを食らう訳にはいかない。
スキルを使えば、ジン達とは短期決着をつけられるが、追い付いた後の事を考えれば得策ではない。
でも、ここで時間を使ってしまうとそもそも追い付けない可能性が・・・
などと思考が堂々巡りになる。
(考えてる時間もない、とりあえずどうにかしないとーー)
焦燥感に駆られたユウが無策のままジンへと斬り込もうとした時、不意にメロアが彼の隣に立って手で制し、また、その焦りに終止符を打った。
「さっきは助けてくれてありがとう。もう大丈夫。だからユウ君とニカちゃんは先に行って」
「先輩・・・」
「これはね、私が乗り越えてぐちゃぐちゃに叩き潰さないといけない壁なの」
「先輩?」
「仮にも好きになった相手を大声で怖がらせて、暴力を振るうなんて最低だと思うの。だから・・・目には目を、歯には歯を」
「先輩!?」
「あ、ユウ君。私もスキルで追いつけるし残るね」
「ニカさん・・・」
「だってメロ先輩へのセクハラ、DV、それに私への
「ニカさ・・・いや、はい。くれぐれもやり過ぎないようオネガイシマス」
彼女らの殺気にも似た圧を感じ取ったユウは逆に冷静になり、大人しく言葉に従う。
なお、ニカ達がジン達に敗ける心配は一切していない。
ニカもメロアも頼れる仲間だから。
「通す訳ねえだろ!馬鹿め!」
もちろん、ユウの突破を妨害しようとジンの仲間であるミカエラが立ちはだかる。
両手剣を構えて臨戦態勢に入ったミカエラに対し、ユウは
「あ!?止まれよ!チィッ!」
ユウの
ー ガギィインッ! ー
ミカエラが構えた両手剣を振るうよりも先に、ユウはショルダータックルをかまして、上半身を仰け反らした。
それだけに留まらず、突進の勢いに負けたミカエラはよろけ、尻もちを突く。
致命的な隙ができたが、ユウは脇目も振らず包囲の穴から抜け出して駆けて行った。
「女2人置いて逃げるか、腰抜けめぇ!」
恥辱にまみれたミカエラが喚き散らすも、その声がユウに届く事はなかった。
「腰が抜けているのはアナタじゃないの?」
「あ?ーー」
ー ドスッ! ー
代わりにもう1人の黒騎士、ニカに届く。
その結果、ミカエラは
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