第75話 幕間 後分談
クエストの達成通知が届き、ユウ達は喜び湧いた。
「ユウ君っ!やったね!」
「ああ!ニカさん!」
ー パシッ! ー
ハイタッチを交わしてお互いを労う。
「私も!」
「メロア先輩!お疲れ様です!」
ー パシッー
「うちもうちも〜!」
「はい!ベルさんもお疲れ・・・ん?」
ー パスン・・・ ー
そんな中、ベルと手を交わす際、頭に引っ掛かりを覚え、結果、力のないハイタッチとなってしまった。
「んん!?」
「何やあ?敵やったうちとはハイタッチせえへんつもりなん?」
「あっ!それだ!ベルさんも敵なのに何故かクエスト達成してる!」
「あっ、そういえば・・・。」
引っ掛かりに気付いたユウは声を上げ、ニカもベルが敵であった事を思い出す。
「みんなひどいわあ。一緒にドリューと戦った仲やのに。・・・まあ、それはおいといて。ちなみに特クエのクリア条件は何やったん?」
「敵パーティ5組の壊滅。」
「ふむん、なるほどなるほど。じゃあ、問題ないんちゃう?うちが生き残ってるだけで、パーティとしては壊滅してるし条件は満たしてるやろ。」
「あー、確かに。」
「それにドリューが乱入してきたし、条件もちょっと変更されたかもしれんしなあ。」
ベルはユウ達の情報を基にそう推測した。
「まあ、敵の敵は友っていうし、細かい事気にしやんと今は喜ばな。はい、タァーッチ。」
言いくるめられた気がするが、ベルの言う通りだし、自分達が損した訳でもないしと納得したユウは改めてハイタッチをする。
ー パァン! ー
今度は良い音が鳴った。
ベルと笑顔で別れた後、ユウとニカは風騎士アルストームと向き合う。
「改めて名乗ろう。風騎士アルストームだ。以後よろしく頼む。」
「ユウです。こちらこそよろしくお願いします。そして、先程はありがとうございました。」
「私はニカです。これからメロ先輩をどうぞよろしくお願いします。」
「も、もう、ニカちゃんっ。私子どもじゃないもんっ。」
「ふふー。年齢ではお姉さんですけど、契約者としては妹分的な意味合いでお願いしちゃいました。」
「もちろんだ。
「もう!アルストームさんまで!」
一行は騎士の姿に戻ったアルストームと談笑する。
「そ、そういえば!私のスキルがいつの間にか変わったんだけど!」
メロアとしては恥ずかしい会話だったので、話題を変える為、大きい声を出して注目を集める。
「やっぱり。どのプレイヤーも契約者になるとスキルが変化するのか。」
ユウが興味津々で食らいつく。
「契約したモンスター由来のスキルになるよね。そだ、メロ先輩の新しいスキルはどんなのか教えてもらえます?」
「えっとねえーー」
【オンリーワンスキル】
『烈風の
①常時風魔法強化
②一定時間グリフォンを召喚できる。
※6時間後に再召喚可能
③グリフォン騎乗時にステータスが強化される。
「先輩、強いですね。」
メロアからスキルの説明を受けたユウは素直に賞賛した。
「それにスキルの名前もかっこいい!」
ニカもユウに同意見である。
「そ、そう?えへへ。ありがとー。アルストームさんもありがとうございます。」
2人からベタ褒めされたメロアは照れ笑い、全員に感謝する。
「俺は別に何もしていない。お前の強い願いと心がそのスキルを呼び寄せたんだ。」
アルストームは素っ気なく、だが優しく言葉を返す。
「時間だ。・・・メロアよ、お前の意志が揺るがない限り、俺達はいつでも馳せ参じる。だから、強くあれ。」
ー ピィイ! ー
そして、最後に激励の言葉を掛けて、黒茶色の鷲獅子騎士はグリフォンリーダーと共に、風となって消え去った。
「はい。」
メロアは応える。
その言葉は短いながらも強い意志が込められており、自然と凛とした声で発せられた。
「・・・さあ、帰りましょうかっ」
「そうですね。あ、先輩、まだ時間が大丈夫あるこのままギルド作りに行きませんか?」
「私も賛成です!早く、か、家族になりたいから・・・!」
「大丈夫だよっ。じゃあ、早速・・・の前に、ね。」
「「?」」
「ユウ君、ニカちゃん。」
アルストーム達が去った後、ギルドを作る為に街へと戻ろうと踵を返したユウ達をメロアが呼び止める。
ユウ達が振り返った先にある彼女の顔色は、期待と緊張、そして、少しの不安が入り交じっていた。
「あ、あのね。今更だと思うけど、それでも聞いておきたいの。」
「なんですか?」
改まったメロアの様子に、ユウ達も背筋を伸ばして向き合う。
「アルストームさんのおかげで私のスキルは強くなったけど、私自身は鈍臭いままだし、もちろんギルドを作るのなんて初めてだから、きっと2人にもっとたくさん迷惑をかけると思う。
頼りない先輩だって思われるかもしれない。
・・・それでも、私のギルドに入ってくれる?」
微かに身体を震わせながらメロアは答えを待つ。
ユウ達の人柄は知っているし、彼らの答えも分かっている。
分かってはいるが、様々なパーティを渡り歩かざるを得なかった『渡り鳥』としての苦い記憶を拭い去る事ができないのだ。
「ふう、確かに今更ですね。」
彼女の不安を知ってか知らずか、呆れたようにニカは溜め息をつく。
ただ、それも一瞬。
次の瞬間にはユウ共々、兜の中で破顔し、黒騎士2人は自然と声を揃えて答える。
「「もちろん!」」
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