パラレル・エイジ・オンライン
いぬがさき
第1話 話題のVRMMO
VRMMOが普及し、多くのソフトがリリースされ、全世界でプレイされている時代。
また新たなソフトが本日発売された。
タイトルは『パラレル・エイジ・オンライン』。
舞台は日本列島に似た島『ヒノモト』。
その広大なフィールドをプレイヤーは駆け巡って冒険する。
また、ヒノモトには数多くの国があり、プレイヤーはどこかの国に所属する事もできる。
逆に、どこにも所属しないフリーランスとして行動する事もでき、更には、誰もいない辺境の地でのんびりスローライフを楽しむ事もできるという自由度の高いゲームとなっており、発売前から話題となっていた。
だが、それよりも話題となったものが、『オンリーワンスキル』制であった。
パラレル・エイジ・オンライン、略して『PAO』は、他のゲームと同じくレベルとステータスが存在し、レベルが上がる毎にステータスポイントが獲得でき、『攻撃』『防御』といったステータスにポイントを振り分ける事で、その
ただ、PAOには、他のゲームと決定的に違う点がある。
それは『スキル』であった。
他のゲームでのスキルは一般的にゲーム内のある条件を満たす事で獲得でき、個人で異なるスキルをいくつでも、有用スキルであればプレイヤー全員が獲得しようとする。
特にトッププレイヤー達の『スキル』の組み合わせは強さも証明されているので、獲得しやすいスキルについては真似されやすく、テンプレスキルセット等とうたわれ、そのスキルセットばかり装備するプレイヤーで溢れかえるゲームもある。
PAOの開発陣はそんな状況が面白くないと思ったのか、普通のスキル制を不採用にした。
そして、代わりに導入したのが『オンリーワンスキル』制である。
PAOでは普通のスキルは存在せず、代わりに各プレイヤーは最初から1つのスキルを与えられる。
それが『オンリーワンスキル』である。
読んで字の如く、そのプレイヤー個人に与えられたスキルであり他のプレイヤーと同じスキルは1つも存在しない。
そして、開発陣の意地の悪さがみえるのが、このスキル、キャラクターをリセットしてもスキルは変わらないのである。
だから、強いスキルを引き当てるまでキャラクターをリセットする、いわゆる『リセマラ』も無意味なのだ。
正に完全な運ゲーである。
しかし、だからこそ発売前から話題となり、人気となった。
何故なら、公平だからだ。
完全に運ゲーという事は、誰もが強いスキルを手に入れる事ができる可能性があるからだ。
かつ、誰にも真似されない。
宝クジもそうだが、最初から当たりを諦めて買う者などどこにもいない。
全員、当たる事を信じて買っているのだ。
だから、このPAOを手に入れた全てのプレイヤーも、自分が強スキルもしくはレアスキルを引き当てて、周りから羨望の眼差しを浴びる事を想像しながら、ゲームを起動させキャラクター設定へと進んだ。
PAOが市場に出て数ヶ月。
今年、大学1年となった
ゲームタイトルは『パラレル・エイジ・オンライン』。
話題になっていたのは知っていたが、VRMMO自体初めてなので、他のプレイヤーのようにオンリーワンスキルにあまり固執していなかった。
購入した理由も、まだ新しいゲームだから古株プレイヤーとかいないし気楽にできるからである。
鼻歌を交えながら、大和はヘルメット型デバイスを被り、ベッドに横たわる。
「ゲームスタート」
彼は弾んだ声でゲームの始動コマンドを発し、PAOの世界へと潜っていった。
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